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12 湖の謎の手掛かり


「んんぅぅ~……はぁ…眼精疲労がぁ~……疲れました…。」


 気づけば時刻は12時半になろうとしてた。早くログインせねば。そういえばチトセは昼ご飯食べたのかなぁ。ぼくはカロリーメイキングを食べましたよ?メイプル味がぼくのおすすめかな。

 ってそういうのはよくて……あっ!そろそろ買い出しに行かないとご飯作る材料が…けど一人で外に出るのは嫌ですし……うん、チトセに後で頼もう。


 ということで例のチェアに座りまして……おやすみぃ…じゃなくってログイン。




「んぅ?……どこ、ここ。」


 空間把握をすぐにオンにして、いまぼくがいる場所を把握する。うん、このスキルにはほんとうに頼りっぱなしですねー。相棒といっても過言じゃないかも?


 早速店の場所に来てカウンター前にあった椅子に座る。ここでいいんだよ…ね?

 商品売り場の方では人形が一体佇んでいる。たぶん防犯用とかなのかな?ぼくの監視役かもしれないけど。



 だいたい30分後、あの人形が店の外に出た。空間把握によると、店前のプレートを裏返しにしてた。開店ということですねー。気合い入れていきましょー!













 あれから一時間後、未だにお客さんは来ていません。このお店の経営は大丈夫なのかな…心配です。

 ちなみに自分の血で遊んでたら《ブラッドオペレート》がまた一つレベルが上がりましたー。今なら瞬時に血で雪の結晶の形を作り出せます。名付けて血晶……しょーもなかったらごめんなさい。





  


  


  









「いつまでそこに座ってんだい?」

「――いゃっ?!…………ビックリしました、ヴィンさん……」

「そんなに縮こまってまで驚くものかい?……まぁいいさね。今日の仕事はこれで終わりだよ。ほい、お給料だよ」


 そう言いつつはだかの小判を投げてきた。小判といっても500円玉よりほんの僅かに大きい銀色のものです。それを二枚も。


「小銀貨さね。銅貨50枚と同じ価値さ。それさえあれば一日の食住は困らないよ。といっても食も住もあたしの家があるからね。まったくいい職場だよ。ヒヒヒ、感謝しな」


 確かにまったくもってその通りです……なんであればあまりの頼りっぱなしに罪悪感がわくほどです…はい。


「ところでいつまで血で遊んでんだい?さっさと片付けな。」

「あ、はい。ごめんなさい」



 しばらくしてジャックさんやサラさんが帰ってきて、晩御飯をごちそうになりました。そしてログアウト。





「んん~……ふへぇ……このチェアでいつか惰眠をむさぼってみたい……。」


 

―――トントントン


 一定のリズムで包丁がまな板を叩く音が聞こえる。今日はチトセの料理ですねー。材料は買ったのかな?


「うんー!一週間分くらい買ってきておいたよー!」

「以心伝心……?」

「だねっ!」


 ほんとにチトセにはぼくの考えを読める力があるんじゃないかなぁ……うん。

 まぁ、すごく気が利くってことで…。






 そんなこんなでご飯を食べ終わり軽く情報共有をしたあと、再びTFOにログイン。

 そうそう、あのやらかし以降どうやら世界の実績を行動指標とするプレイヤーが増えたみたいです。と言ってもその世界の実績を見つけ出すことがまず難しそうなんですが……。

 まぁ……ぼくは最初から変わらず、したいことをどんどんするつもりです。そっちの方が楽しそうですし……んー、そろそろあれに匹敵するようないい雰囲気を見つけ出したいんですけどねー。


〈――…―〉



「ん?――またあの声…?」


 ログインして目覚めた場所はいわずもがなヴィンさんのおうちです。あの声が聞こえたのは“旧精霊の森”にあった湖のはずで、ここから徒歩一時間近くは離れていたはずです。なんでここで聞こえたのでしょうか…?

 


「あんまりやりたくなかったんですけど……はぁ」


 面倒なことは好きじゃないんですけど、せっかくヒントの方から転がってきたことですし…無視するのはちょっと勿体無いですよね?

 と、いうことでー……久しぶりの無差別な空間把握からの鑑定をやります。


「名付けて“全空間知覚”……なんて言ってみたり…」

「なに一人でぶつぶつ言ってんのさ?無駄に空間把握なん……?…なるほどねぇ、鑑定も混ぜたのかい…器用なもんさね」


 …………近くに穴があれば埋まって窒息死したいです……。


 っていまはそんなことじゃなくて、なにか怪しいものが引っ掛からないかを見つけないと。


 いてて、やっぱり頭が痛くなるんですよねー、これ。んー、ヴィンさんの情報が入ってこない?…とりあえずこれは後回しです。


 箪笥の中もどうでもいいですし、この情報も要らなくて……ん、家の中には特に問題はなしですね。次は外…家・裏庭の小屋、井戸もろもろの素材については要らないですし。というか、この家に裏庭があったんですねー。はじめて知りました。んで、草の名前は今はよくて―――土壌の様子も要ら……んっ、これは…?



[自然物(微汚染)] 土

レア:Rare 品質:B 耐久:?

呪いを含んだ水によって影響された土壌。元が良いためまだまだ栄養は豊富に含まれている。が、このままでは近いうちに乾いた土となるだろう。


「どういうこと…?……呪い…?」

「あんた…いま、呪いって言ったのかい?……」


 全空間知覚を展開しているぼくにヴィンさんは問いかけてきた。それも真面目な顔をして。いつもは面倒臭そうな表情をしていたのを……。

 

「はい。何かの声が聞こえたので調べたんですけど……土が汚染してたみたいです」


 ん?汚染されたのは土……じゃなくて、水。

 なら、もしかして―――井戸?


「ヴィンさん、裏庭の井戸のとこまで案内してください。」

「わかったよ。そうだね、混乱するから目をつぶりな。もちろんこれもだよ。」


 言われた通り全空間知覚をきって目もつぶる。ってあれ?もしかしてぼくはずっと目を開けてたの?


 そう気付いたとき、なんとも言えない浮遊感に似たなにかを感じた。


「ほら、ついたから目を開けな」

「…ここは?」

「あの家の裏庭さね。ただ、あたしの職業上保管した素材を取られたくないからね。結界を張って特定の人しか入れないようにしてるのさ。後であんたも登録しておくよ。」


 目の前には井戸と小屋。その回りを囲むように木が生えている。ただ、どれも違う種類の木ということはさっきので確認済みです。おそらくこれも素材の一つということかな…たぶん。


 おそるおそる井戸に近づく。

〈――!〉


 すると、いきなり井戸の中から水の塊が飛び出してきた。咄嗟に頭をそらして回避。ヒヤッとしました。大きさとしては平均的なシャボン玉程です。

 その水の塊は回避されても尚、ぼくのほうに飛んでくる。速度はさっきよりも早い。だって既にぼくの顔前まで来てますし。できることとしたら、空間把握をオンにすることくらいでしょうか。


 避けようのないそれがぼくの顔に当たった時、まるで染み込んだかのようにしてぼくのからだの中に融けた。


--------------------------------------


〈いやっ!やめてっ!〉

『なるほど。精霊が実在していたとは。いや、だからこそか』

〈なんでっ!〉

『ハハッ、あいにく精霊の言葉はわからないのでな。まぁなんと言われようと私は命令通りにするだけさ。』

〈だめっ!それをしてはっ!〉

『たしか精霊は祝福を与える存在だったな。まったく、陛下はいろんなことを思い付かれる方だ。

 さて、この魔道具を使えばいいのだったな。“反転(リバース)”』

〈このままじゃ…いきなさい私の子供たちっ!〉


--------------------------------------


 いまのは……なに?

 

 いや、うん。なんとなくは理解できてますけど……あの湖で起こったことの追憶ということですよね…。場所がまんま旧精霊の森の湖でしたし。

 おそらく現行犯はさっきの追憶に出てきた全身を黒いフードマントでおおった人。声的には男性かなぁ…。その黒マントさんが見るからに怪しかった魔道具を使って反転した……なにを?

 たぶん、精霊の本質とかでしょうか。だから呪いになった。けど祝福って何に対する祝福だったのかなぁ……


「あの精霊はあんたに何を伝えたんだい?」


 ヴィンさんが考え事がちょうど終わったタイミングで質問してきた。もちろん、ありのまま起こったことを話します。一字一句同じことをです。



「そういうことかい……とんだ厄介事を引き起こしたもんだねぇ…」


 

 どうやらヴィンさんは何かがわかったようです。

 いまさらなんですけど、ヴィンさんって相当すごい人ですよね…。



◇揺蕩う廃城


そこは過去の栄光。かつての繁栄の跡。とうに失き歴史。その証したる廃れた古城に人はいない。時間にただ流れ、揺蕩い、崩れていく。

ここは絶対に対抗した場所。

一人の従者を除き忘れられた場所。

可能性が芽吹くときまで待ち続ける場所。

今、影が動いた。

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