10 world achievement
「…死体?……」
「んなわけあるかいっ!……これはただの人形さね。一人でやるには手が足りないからね。そのお手伝いさんさ。」
なるほど……けど人形にしてはかなり精巧に造られてるんですよねー。よく見ても人間にしか見えないですし。生気は感じられないですが。
「これからあたしは商品作りにはいるよ。およそ1時間もあれば終わるさね。」
そう言うと早速作業に取りかかった見たいです。あのとき見たいになにもないところからさまざまな素材?を取り出して一瞬で別のものに変えたりしてます。んー?なんだろこれ。
しばらくその作業を眺めていると、人形さんから細い糸のようなものがヴィンさんに繋がっているのがうっすらと見えてきた。よく見ると指のほうに繋がっているようです。どうやら、これでヴィンさんは人形を操っているよう。
糸がはっきりと見えるようになってくると、やっとヴィンさんが何をしているのかがわかった。どうやら魔法を使ってたみたいです。何かしらの魔力が作用して素材を合成したり別のものに分解したりしたのが見えました。
魔力(他プレイヤーが言うMP)って視ることができたんですねー。はじめて知りました。何となくですがヴィンさんの魔力の総量もはかることができますし……ちなみにものすごく多いです。基準がわからないのでなんとも言えませんが……少なくともぼくの10倍以上は軽くある感じです。
ヴィンさんが素材を取り出すときに使う魔法だけは陣のようなものが見えたので、それを再現できないかなぁ……と。
プレイヤーにはインベントリがあるので要らないと言えば要らないんですけど、なんとなくこっちの魔法のほうが利便性が良さそうなんですよね。勘ですけど。
ただ魔法なんて使ったことがないので、どうすれば発動するかなんて知らないですし……んー、とりあえずさっきの魔方陣は記憶出来たので…これをもとに作ってみる。
お手本はヴィンさんの糸。実はこれも魔力だったようです。と言うことは魔力そのものはいろんな形に変えられるのかな。けど、魔力の出し方なんて知らないので、ここはぼくの血で対応。ぼくのこの体は魔力体と言うだけあって、体のほとんどすべてが魔力で構成されているようです。
なので、一見血のように見えてもこれは全部魔力の塊なのです。
軽く皮膚を爪で刺して血を出す。案外ぼくの爪って長いみたいです。気にしてなかった……今度切った方がいいのかな?
そして初めて使うスキル≪ブラッドオペレート≫。その名の通り血を操るスキルのよう。スキル取得時に種族スキルのみ基本的な使い方は判るようになってるみたいです。
で、これは血を操ることができるようになるスキルだそうです。どちらかと言うとパッシブスキルに近い感じなのかな。このスキルがあれば血を操れるようになるわけですし。今のところは自分のだけだけど、いつかは違う人や魔物とかの血を操れたりするのかなぁ。うん、期待してます!
早速出てきた血を操ってあの魔方陣の形を作ってみる。まだスキルレベルやぼくのレベルが低いからか、細かい作業をするのはけっこう難しい。まあ…できない訳じゃないですし、後は時間をかけるだけですねー。
「…できた…!」
やっと魔方陣の再現ができました!難しいことをしたからか《ブラッドオペレート》のレベルが1上がりました……と言ってもこれ、どうすればいいのかなぁ。魔力は通ってるはずですし……でも発動しない…。
「んん?!…はぁ……異邦人はいろいろとやらかすとは聞いてるけどね、あんたは一体何をやってるんだい。……そんなんじゃこの魔法は発動しないよ。魔力の質が違うのさね」
「魔力の質……?」
確かにヴィンさんの魔力は透明できれいなのにたいして、ぼくの魔力はちょっと透けた薄緑のような色をしている。この色が質ということでしょうか。
あ、わかんなかったら聞けばいいんでした。
「魔力の質っていうのは、この色とかのことですか?」
「なに?……あんたはもう色まで見えるのかい?
――少なくとも人形を出したときは魔力なんて見えてなかったはずなんだけどねぇ…」
〈これまでの行動により《魔力視》を習得しました〉
あれ?アナウンスが遅れた?なんでだろう。明らかにスキルとして入手するよりも先に会得してたはずですし……サーバーの遅延とかなのかな……それだったらこの時間にログインしてる他のプレイヤーの中には同じ現象を受けてる人もいるはずですし、後で掲示板でも確認してみますか。
「まぁ、いいさね。魔力が見えたってことはあたしが何やってるかわかったかい?」
「魔法で物を作っていると言うことですか?」
「そういうことだね。錬金術っていうものさ。伝説では不老不死の薬も作れると言われているさね。ま、あたしは作れなかったよ。ほれ、これを渡しておくから暇なときはこれの上で錬金術の練習でもしてみな。」
そう言うと、何か魔方陣の描かれた布をくれた。
「さて、話がそれたね。あんたの魔力の色は透けた薄緑色をしてるってのは判るね。」
それはさっき確認して知ったのでうなずく。
「魔法の質とはつまるところ属性と呼ばれているものさね。赤色は火、青色は水、黄色は土、緑色が風。ここまでが人族が勝手に定めた基本属性と呼ばれるものさね。」
ん、なにか言い方にとげがあったような……。
「同じようにして、白が光、黒が闇、透明が無とされているさね。まぁあくまでも指標のひとつさ、あまり重要ではないさね。例えば、闇属性や光属性と呼ばれる魔法は人間が創った魔法さね。正確には名付けた、だね。」
「名付けたんですか?」
「あまり詳しいことは知らなくてもいいさね。ただ本当の闇は危険だよ。いくら魂が保護されていても侵食されるものさ。だから、心の底からおぞましいと感じたものに遇ったらすぐに逃げることさね。」
「…?……わかりました」
「さて、この指標を利用するとあんたの魔力は風と光と無を持ってるさね。魔法に関してはあんたの自由にやりな。魔法は何かの尺度で定めることができるほど狭くはないよ。想像したことの大抵はできるものさね。それこそさっきあんたが血を操って魔法を発動させようとしたようにねぇ。」
魔法は自由にやった方がいい、と。店を見たとき魔法書とか売ってたけど、そういったものは必要ないってことなのかな。自分の思うがままにってことですね。極めるのに時間がかかりそうです。楽しみ。
「ああ、いきなり二つの属性を混ぜ合わせた魔法はまだできないよ。まずはひとつの属性に絞ってやっていきな。簡単に言えば魔力の質を自由に変えれるようにしなってことさね。」
んー、今のぼくの魔力は三つの属性がミックスしているから、これを分けてどれかひとつの属性を扱えるようにすればいいってことですね。
魔力を動かすのってどうすればいいんだろう?……ブラッドオペレートのときみたいな感覚でやればいいのかな?
んぎぎぎ…………
「あ、動いた」
「えっ?なんだい?」
まだ動く速度は遅いけどだいじょうぶ。このまま動かす魔力を透明なものだけにして……血の魔方陣に流し込む。ん、魔方陣がほんのり光った。
「あ、発動した」
「本当かいっ?!……はぁ、異邦人は本当に成長が早いねぇ。それじゃあ早速何か入れてみな」
ということなのでもらった錬金術の練習布を入れてる。大切なものだから失くしたくないですし。
すると、魔方陣から光が失われた。おまけにぼくの体もなんでかだるいですし。
「あれま、魔力切れさね。この魔法はひどく魔力を消費するものだからねぇ。と言っても、大きく消費するのは空間を作り出す最初だけさね。しばらく休んどきな。」
ということなので、一先ず魔方陣の血を体内に戻して(飲んだわけではないですよ?)その場にごろんと横になる。
「さっきの魔方陣は魔力認証の陣も含んでいるから、本人以外に中身をとられる心配はないさね。そもそも魔方陣を出しっぱなしにしなければいいだけの話だけどねぇ。」
なるほどです。そういえば、デスペナルティの中に確率でインベントリの中のアイテムや装備をドロップしちゃうことがあるみたいですし、後でインベントリ中のアイテムくらいはいれたほうがいいかも。ちょっとした裏技ですねー。
魔力が回復するまであの貰った本を開いて読む。
「そういえば普通に本を読んでるように見えるけど。なんだい、あんたはこの世界の文字が読めるのかい?」
「ん?はい。と言ってもまだ完璧ではないです。この本意外と難しい言い回しがありますし。でも今まで見てきた言葉やその組み合わせとかは全て覚えてるので、読めないことはないです、たぶん…。」
いやぁ…あのとき本を開いた時、何を書いてあるかわかんなくて意味もなく焦っちゃいました。ん、まさか鑑定結果の備考欄に訳されたのが出てくるとは思わなかったんですけどねー?
「なるほどねぇ……あいつからは異邦人はこっちの文字を読めていないって聞いてたんだけどねぇ。――少なくともこの子はもう読めるってことさね……よし、店を開けるまでは好きにしてな。時間になる前には戻ってくるんだよ。」
「わかりました。」
といってもまだ少しだるいので本を読み続けるんですけどね。
「あんたはまだ本を読むのかい。まぁ、その本を読めるってことはこの国の言語をほとんど理解できてるんだろうね。
サラ嬢は同じ言葉を二回も使いたがらないしねぇ。それに物語っぽさを好んでいるから……図鑑と言うよりも小説の短編集みたいになってるけど……いいのかねぇ。」
読みながら確かにその通りですと思っていると、唐突にそれはやって来た。
≪【世界アチーブメント】
『言語の壁に挑戦!』を誰かがクリアしました!≫
≪プレイヤー全員が、ガルディア王国言語の30%を理解できるようになりました!≫
〈
【世界アチーブメント】
『言語の壁に挑戦!』をクリアしました!
◎ 参加条件:この世界のどれか一つの言語を認識すること。
◎ 達成条件:この世界に存在するどれか一つの言語を一定以上理解する
◎ 達成報酬:
参加者報酬
・スキルポイント5P
貢献度報酬
貢献度79%
・790000XP
特別評価報酬
[スキルの意外な使い方]
[驚異の記憶力による解読]
・スキルポイント30P
・スキル《解読》
◎ 全体報酬:
・ガルディア王国言語の30%理解
〉
「………んー、何が起こったの……かなぁ…。」
注釈のようなものです
≪≫がワールドアナウンス
〈〉が個人へのアナウンス
《》がスキル
[]が称号または評価の事柄
後は
【】>『』or「」>()
と思っていただけると幸いです。
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