近頃のパーティは、ちょっとしたことで恨まれるので大変な件
魔物を討伐し、世界を冒険するのに必要不可欠なパーティ。パーティメンバーは、一年以上活動するチームメイトであり、寝食を共にする重要な仲間だ。
「くぅ~、いいパーティメンバーがいない!」
俺は所属するギルドで、新しいパーティメンバーを募っていた。ギルドでパーティ募集をかければ、色々な冒険者がパーティに申し込んでくれる。冒険者申し込みには、冒険経歴書が必須で、得意な技術やギルドでの評価等が記されているのだ。それらの紙の束をバラバラと俺は読み解いていく。
俺は冒険経歴書を吟味しながら、パーティメンバーを選考する。手に取っている経歴書は、魔法使いの女性だ。魔法使いは後衛から魔法攻撃を行う重要なポジションといえる。パーティというのは、前衛と後衛のバランス整える必要があり、魔法使いはパーティに必須の存在といえよう。
だからと言って、簡単に採用することはできない。
なぜならパーティ編成にはトラブルが多いのだ。
例えばこの魔法使いの女性。経歴書によると、幼馴染の男性剣士を故郷に置いてきている。これは非常によろしくない。
例えばこの魔法使い女性はパーティメンバーの誰かへ、小さな恋心を芽生えさせてしまう可能性がある。寝食を共にして、命を預け合う仲になるのだから、恋仲になってしまう事は不自然ではない。ここで、幼馴染の男性剣士が問題になる。
この魔法使いの女性と、幼馴染の剣士との仲が悪くなり、剣士の恨みがパーティに矛先がむく可能性は捨てきれないだろう。
考えすぎだろうと昔も俺は笑っていたが、冒険者家業を長く続けているうちに、この様な話は日常茶飯事である事に気が付いた。以前も似たような出来事があったからだ。
以前、俺はカップルの一組とパーティを編成した。そのカップルは冒険途中で、破局を迎えてしまい、色恋沙汰がもつれてパーティも解散する事になってしまった。そうするとそのカップルの片割れが、俺を恨みだしてしまい大変だった。俺自身は特に恋愛沙汰等の問題はなかったのだが、俺が寝取ったと勘違いされ、執念深く追いまわれたものだ。
他にもある。パーティを組んだのは良いのだが、パーティメンバーの実力が合わなかった時の出来事だ。
パーティ内に剣士がいたのだが、その剣士だけ練度が低く、あまり活躍できていなかった。この剣士のレベルに合わせると冒険が進まない上に、実力不足である剣士自身の命も危なかった。そんなわけで俺は、その剣士にパーティから抜けてもらおうとお願いした。勿論、丁寧にお願いして、剣士が脱退した後も困らないように路銀も用意した。剣士自身の人格は決して攻撃しないように、よく注意して話をすすめた。
俺が剣士に対してパーティ離脱の話をすすめると、剣士はパーティメンバー全員に怒り始めた。剣士はパーティ内での活躍を、誇張した表現で語り始めたのだ。要するに剣士の主張は、パーティが上手くいっているのは剣士のおかげという論旨なのだが、事実は異なっている。しかし、彼自身はそうは思っておらず、不当な評価をされただとか、いつか復讐してやるとか、もうそれは散々に捨て台詞を吐かれて出ていかれてしまったものだ。
繰り返すが、近頃はパーティを募集して編成するのは大変難しいのだ。
昔はそういう訳でもなかったが、近頃はちょっとしたことで、やれ復讐だとか、恨んでやるだとか、そんなことばかりである。本当に嫌気がさす。
そういう訳なので、俺はギルドで募集をかけながら、冒険者経歴書を確認している。
俺は最高のパーティを結成して、冒険に出かけなければならないのだ!
大変な仕事だが、これから明るい未来が待っているのだ。
あんなクソパーティに負けない良いパーティを作って、最高の冒険をするのだ!
「くっそ、あのパーティに追放されなきゃ、こんな面倒なことしなくてよかったのに! 見返してやる!」
(了)
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