星の残存
「あ、流れ星」
「んあ?」
「だから、流れ星だって!」
「はぁ?どこ?」
「ありえない!みてなかったの!?」
「まあ、別に星なんて何時でも観れるし」
「そんなことないし。特別な星だってたーくさんあるよ!」
「どれも、一緒だろ」
「ちっちっちっ。馬鹿にしちゃいけない。そうだ。来週……んー。明日、明日星を観に行こう!素敵な所一杯教えてあげる」
「またおばさんに叱られるぞ」
「知らないよ。星はリアルタイムで見なきゃ」
「俺、夜遅くに家出たことがばれたら、嫌なんたけど」
「ばれない!」
「ほいほい」
本当は、星は嫌いじゃないんだ。星を話すことも観ることも好きだった。それくらい、彼女のことも好きだった。
「また……あした、だね」
「おう、生きてたらな」
「うん!バイバイ!」
そう言って、彼女は新しく出来た傷を抱えて帰っていった。また、あの家に帰ってしまうのだ。俺はそれがどうしても嫌だった。
「……またな」
学生の俺では何も出来ない。とてももどかしい。
その日も、流れ星が降ってきた。彼女の言うような素敵な所なんてない、ただの爆薬を積んだ鉄の塊が降ってきた。
星の輝きは、星が無くなってもすぐにはなくならない。
星の生きた足跡の分だけ、その場所に残り消えるのだ。
彼女は、結局来なかった。
彼女は、星になったの。と、直接言わずに手紙を寄越しやがった。
所詮、星になんてなれるわけがない。彼女は約束も守れない人間なんだ。俺と同じ人間だ。
ならば、星よりも、
よっぽどちっぽけな人間だって、
ちょっとでいい。ほんの少しの間でいいんだ。
もう少しだけ、死ぬまでとは言わない。来週……いや、明日も、
彼女の存在が俺の中にいたって良い筈だ。
彼女は、僕だけが年をとることに何処かへと消えていく。それは、星が死んでいくようなゆるやかさで。