まわりはみんなテンプレ主人公みたいなのに僕だけ平凡で辛い
テンプレって何なのだろうか。
ここ数年Web小説の書籍化が増え、ライトノベルというジャンルの拡張が進んでいる。
流行り廃りは世の常であり、主人公と言われる人達もどんどん多様化している。
それでもやっぱり主人公は何かしらの個性があるはずなのだ。
「お?ボン、いいとこに来たな。
今朝とってきたんだ。分けてやるよ。」
ボンと呼ばれているけど、僕の名前は太郎だ。
凡人の見本みたいな僕はこの村の人にボンと呼ばれている。
「隠居おじさんありがとうございます。
うわっ!これドラゴンの肉ですか!?」
「おう!今朝変態ござる引きずって狩りに行ってきたんだよ。
転移魔法使えるのあいつしか残って無かったからな。」
隠居おじさんは元勇者だ。
魔王を倒した後は騎士団長をしていたけど、貴族の相手に疲れて隠居。今はスローライフを楽しんでいるらしい。
変態ござるさんは引きオタニートがチート貰っちゃってハーレムを作ろうとしたけど、奴隷制は廃止されたしコミュ障で世渡り下手だからこの村に来た口だ。
ここは訳ありの人がスローライフを楽しむ村。
過剰戦力とオーバーテクノロジーで守られた異世界人の村なのだ。
「じゃあ俺は料理人とこにこの肉持ってくから。
内政悪役令嬢に今夜の宴会の段取り付けるように伝えてくれ。」
そう言って凄い速度で走り去る隠居おじさん。
貰った肉を冷蔵魔道庫に入れたら役所に行くことにしよう。
役所の前には転生猫が数匹お昼寝をしていた。
僕は挨拶をして通り過ぎる。
猫と言ってもみんな前世の記憶はあるし、実はケットシーだったりファランクスだったりベヒーモスだったりと僕を一撃でミンチに変える力があったりする。
ちなみに村にいる犬は全部ケルベロスかオルトロスか狼男だ。
「おや、ボンさん。お嬢様に御用ですか?」
「あ、魔王の右腕さん。内政悪役令嬢さんに伝言がありまして。」
魔王の右腕とは言っても、あくまで“元”だ。
ちなみに魔王は複数いるので、誰の右腕だったのかは聞いたことがないからわからない。
「お嬢様は今、生産チートさんと地球から取り寄せさんの三人で打ち合わせ中でございます。」
「じゃあ隠居おじさんが今夜宴会するから段取りをよろしくと言ってたって伝えてください。
あ、ついでに取り寄せさんにビールのおねだりもお願いします。」
「了解しました。
飯テロさんと料理人さんに連絡しなければなりませんね。」
そう言って魔王の右腕さんは屋根の上を飛んでいった。
さて、ノーフォークさん達にも伝えにいこう。
宴会が始まった。
魔力訓練神童とスキル取得神童は隅っこでソフトドリンクコーナーを作っている。
2週目おじさんはプログラマー魔道士さんと素人鍛造さんに装備をねだっている。
異常進化スライムさんは料理を取り分けられなくて困ってる。助けてこよう。
あ、何故か山ほどいる戦闘メイドさん達に先を越された。
宴会芸はもっぱらゲームやマンガの必殺技再現コンテストになる。
異常進化スライムさんのカー〇ィは恒例で、今回はストーンの変身を再現したみたいだ。
普通じゃない村人さんが、ここは〇〇の村ですって言ってるのは再現じゃなくてそのままではないだろうか。
あ、竜人さん。ヨ〇フレイムは飽きました。
「ほら、飲んでる?美人がお酌するよ?」
そう言ってコップにエールを注ぐ女戦士風の美女。
名前がTSさんと言う時点でお察しである。
僕はこの村が大好きだ。
だからこそ、何の取り柄もない凡人である僕がこの村にいていいのだろうか。
よその村では、服屋はみんなマッチョのオネエらしいし、宿屋はスキンヘッドのオッサン。
冒険者ギルドでは毎日新人が絡まれて反撃をし、既にある調味料の特許を取ろうと騒ぎ立てるらしい。
「我らが存在は異端にして過剰。
汝の凡庸なるその姿こそが一であり基準となり安らぎである。』
ダーク中二病さんと殺戮ゴスロリさんが言った台詞だ。
簡単に言うと、俺たち異常で常識吹っ飛ぶから普通の見本になってね(テヘペロ
と言う事だ。
僕が凡人である事がみんなの役に立つのなら。
僕は僕らしく生きていこうと思う。
「あいつなんだかんだ言って女にモテてるよな。
ボンじゃなくて鈍感に改名するべきだろ。
そう思わないか?難聴系」
「え?なんだって?隠居おじさん何か言った?」