理不尽な世界での生活その❶
5年前、俺の住んでる街にそれは大きいナニカが降ってきた。
「どうして俺だけなんだ。どうしてどうしてどうして。」俺の虚しい叫びは誰が反応するまでもなくただただ空に響いていった。
ジリリン、ジリリリン。俺はハッとなってベッドから起き上がった。時間は午前6時30分いつも通りの時間だ。なんか懐かしい夢でも見たような気分だ。俺は着替えを済ませると一階のリビングに足を運ばせた。
リビングに入ると母さんが魔法の杖とやらを使ってご飯を一斉に運んでいる。父さんは机に水晶を置いてなんかやってる。妹は昨日新しく買った魔法の箒とかやらを大事に磨いている。「ちょっとあなた、今から朝食だから水晶どけて頂戴。」「もう少し待って、あと少しで今週の運勢が分かるから。」なんだただ自分の運勢を調べていただけかよ。俺にはどうすればあんな水晶で自分の運勢が分かるか全然わからないもんな。と、ここまで来たらわかるとおり、俺は恐らくこの世界で唯一の普通の人間である。なぜそんなこと言えるのかだって?理由は簡単だ。あのナニカが降ってきた5年前から今までで俺は普通の人間を見たことないからだ。そう俺以外の人間は全員魔法使いなのである。
俺は朝食を済ませ、学校に行くことにした。いつも通りの通学路を歩いてふと空を見上げたらいつも通り箒に乗って学校に向かって行ってるやつらがいた。そりゃそうだよな。俺ぐらいだよな毎日学校に歩きで行く奴なんて。まったく、慣れたことなのにこの世界の理不尽さにまた泣きそうだ。我慢しなくちゃ。だって俺魔法使いじゃねーから。
そうして歩いていくうちに学校が見えた。この学校変なことに魔法とか使う授業は一切ない。まあそっちのほうが俺にとってはいいんだがな。俺は教室に入り自分の席に座っていつも通り本を読んでいた。正直俺は、はっきり言うとクラスメートや家族全員に壁を感じている。それは俺が「普通の人間」であること、そのほかの人間が「魔法使いであること」が原因だ。