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初めての合体? そしてヘンタイ?!

 「んっ!んんん……うむう……」


 ・・・何か冷たい物が火照った顔に当たって気持ちいい・・・僕、何時の間にか眠っちゃってたのか。って!いっつつつ!体全体が、いってー!くっそー、あいつら僕がケンカ弱いからってやりたい放題やりやがって!・・・


と、僕が思っていると、

「あっ、創星さん。よかったー、やっと目を覚ました」

と、未来は泣き腫らした顔で心配そうに僕を覗き込んでくる。


 「ひどい、かお、だな未来」

と、僕が裂傷を起こしている口の中の痛みに耐えながら未来に言うと、

「創星さんに、言われたくありません」

と、涙ぐみながら言い返されてしまった。だよねー、自分でも顔がパンパンに腫れ上がってるのが分かるもん……。


 「おっ、鈴星君、目を覚ましたな」

 「鈴星。目を覚ましたか」

 「鈴星君、大丈夫かい?」

 「鈴星君、大丈夫?みんな心配してたんだよ」


と、点滴の調整をしていた仲居姿のシンシア先生が言うと、龍宮と山寺君、冠城さんが心配しながら僕を覗き込んでくる。

 特に冠城さんは辛そうな表情をしている。


 ・・・ごめんね、冠城さん。辛い思いをさせて・・・普通に生活している中では、こんなに顔をボコボコに腫れ上がらせた人間を見るなんて事、無いもんね・・・


 「ああ、みんな、すま、ない。しんぱい、かけて」

と、僕が言うと、

「全くだ!・・・俺がその場に居たら、チンピラなど蹴散らしてやったのに!」

「全くだな!」

と、龍宮と山寺君は憤慨したように言う。本当に、この二人は仲間思いだな……。

 「そうだな。でも、流石に私が惚れた男の子だ、身を挺して女の子を守るなんて」

と、シンシア先生が言うと、その場に居る全員からキツイ視線が降り注ぐ。すると、

「なんだよ、私が年下の男の子に惚れちゃ駄目かよ……」

と、シンシア先生は涙目で剝れたように言う。


 ・・・みんな、駄目だとは言わないでしょうが・・・少しは立場を考えたほうがいいと思いますよ、先生・・・


 「鈴星様、この度は此方の不手際で大変な御迷惑をお掛けして誠に申し訳ありませんでした」


 僕が横になったまま、声の聞こえてきた方へ目を向けると、女将さんが正座した状態で額が畳に付きそうなくらいに頭を低く下げていた。


 ・・・女将さん、頭を下げてる姿も、何だか綺麗に見えるなあ・・・って、真剣に謝っている人に対して、失礼か・・・


 「私共も予約をキチンと入れて来られたお客様を、ガラが悪いからと言って無下に追い返すわけにもいかず。彼らの事は何か悪さをしないかと監視はしていたのですが、少し目を放した隙にこのような事になってしまい誠に申し訳ございませんでした。彼らには私が責任を持ってキッチリと治療費と慰謝料を払わせます。また、お医者様からは鈴星様は二三日は安静にするようにとの事でしたので、もし皆様のご都合が宜しければ、此方の不手際の責任として、年末までご宿泊いただき今までの宿泊費用も合わせて此方が全て持たせて頂きたいと思っております。何卒、お受け頂きますよう平にお願い申し上げます」


 そう女将さんは深々と頭を下げたまま言いきると、僕から返事が来るのをそのままの姿勢で待った。


 「いえ、おかみ、さん。そこ、までして、もらうのは、もう、しわけ、ないです。こちら、にも、おちど、が、あった、んです、から。ぼく、の、つれの、未来が、ぼくの、はいっている、おとこ、ぶろ、なんかに、はいっ、て、こなければ、こんな、ことには、ならな、かった、かも、しれない」

 「いえ、そう言っていただけるのは有り難いのですが、此方に落ち度があったのは明らか。ですのでどうか、私の申し入れをお聞き届け下さい」


 はあ、・・・この女将さんも頑固だな・・・


と、僕は思いながら、

「わかり、ました。おかみ、さんの、もうしいれ、ありがたく、おうけ、します」

と言うと、「有難う御座います、鈴星様」と言って、やっと女将さんは下げていた頭を上げホッとしたような笑顔を見せた。


 「それ、じゃあ、みんなは、スキー、を、たのし、んできて」

と、僕が言うと、

「バカヤロー! ダチがこんな状態なのに遊びになんて行けるかよ!」

と、龍宮は怒った様に言う。


 ・・・。

「ぼくの、ことを、おもって、くれる、なら。こんなところ、で、鬱屈、と、して、ないで、ぼくの、ぶんも、たのしん、できて、ほしい」

と、僕が言うと、龍宮は困ったような顔をして考え込んでしまう。本当に友達思いだなこいつ……。

 「私は未来ちゃんと残る」

と、冠城さんは強い意志の籠もった声で言う。


 「そうね、それでは、こうしたらどうかしら?」

と、女将さんが笑顔で言い、

「未来さんは、男風呂に入った罰として今日一日だけ鈴星さんの面倒を見る。他の人たちは、鈴星さんの分もスキーを楽しんでくる」

と提案する。

 「私は嫌です」と、冠城さんは反対する。が、

「冠城さん、貴女は鈴星さんに、自分の為に冠城さんが自分を犠牲にしている、と負い目を感じさせたいのですか?」

と言うと、「うっ」と、冠城さんは言葉に詰まる。


 「よし、それじゃあ、鈴星君の為に今日一日目一杯楽しむぞ!」

と言って、山寺君は龍宮の肩に腕を回し、冠城さんの手を引いて二人を引き摺るように部屋を出て行く。

 その後姿に、「やまでら、くん、ありが、とう」と、僕は声を掛けた。対して、山寺君は龍宮の肩に回した手を上げて応える。


 「それでは、未来さん。後の事は頼んだわね。何かあれば、電話の内線で呼んで頂戴、直ぐに駆けつけますから。それと、点滴が切れたら呼んで頂戴ね。ほら行きますよ、シンシアさん」

と言うと、女将さんはシンシア先生の襟首を掴む。

 「え?いや、私は引率者として、学校の保険医として鈴星君の面倒を見なければ」

と、シンシア先生は抵抗するも、

「今は、未来さんが居れば大丈夫です」

と言って、女将さんは「鈴星くーん」と泣き出しそうな声で僕を呼ぶシンシア先生をそのまま引き摺るようにして、山寺君たちの後について部屋を出て行った。


 ・・・シンシア先生、早くお淑やかさを身に付けていい人が出来ることを心より祈っております・・・


 「マスター、ごめんなさい。神船わたしの再生がもう少し進んでいたら、医療システムが使えるのに……」

と、未来は涙ながらに言い、水で冷やしたタオルで僕の腫れて火照った顔を優しく冷やす。


 『裂傷で口で話すのは辛いから、心話しんわで話すよ』

 『はい、マスター』

 『未来、お前も今回の事で、軽はずみな行動は大きな痛手を被るという事が分かった筈だよね』

 ・・・・。

 『はい』

 『だったら、自分達の事を隠しとうす事が不可能だという状況になるまでは、不用意に今現在のこの地球の技術力では不可能だと他人が一目見て分かるような力を使おうとするな』

 『でも、マスター……』

 『でなければ、また、要らぬトラブルを招くことになる。……確かに僕は未来と生命の女神の力を受け入れる時、平穏な暮らしを続けられなくなる覚悟はした。覚悟はしたが、平穏な暮らしを続けられる内は平穏な暮らしを続けたいんだ』

 ・・・・・。

 『マスター。神船わたしや生命の女神様の力を受け入れた事を後悔されていますか?』

 『未来、僕とお前は魂が繋がっているんだ、その気になれば僕の気持ちは言わずとも分かるだろ』

 『はい。…………………そうですね、貴方はそういう方ですね』


 そう言うと、『ありがとう、マスター』と言い、未来は一筋の涙を流し嬉しそうに微笑んだ。



 この時の僕は、まさか直ぐに僕の平穏を奪い去る切っ掛けとなる出来事が起ころうとは露程も思っていなかった。




 『〈警告・警告・雪崩ノ予兆ヲ感知・・雪崩発生マデ後八分〉』


 ・・・なっ!何だ!?・・・


 何時の間にか眠っていた僕の頭の中で行き成り緊急警報が鳴り響いた。


 『マスター、スキー場の方で雪崩が起きそうです』

と、更に未来が伝えてくる。


 『冠城さんや龍宮達が何処にいるか分かるか?』

 『はい。今、三人ともリフトでスキー場の最上部に向かっているようです』

 チッ、『まともに雪崩に巻き込まれるじゃないか』

 『はい。どうしましょう、マスター』


 未来は不安そうに僕に聞いてくる。


 ・・・未来も冠城さん達の事を友達だと認識しているからな・・・不安なんだろう、僕がどんな判断を下すのかを・・・


 『未来、今のお前の力で誰にも気付かれずにスキー場の人達を救うことは出来るか?』

と、僕が未来に問いかけると、未来は不安そうな表情を嬉しそうな表情に変え、

『今の私では無理です。ですが、生命の女神マスターの力を借りれば間違いなく助けられます』

と言う。


 ・・・・。

 『生命の女神ぼくの力を借りるという事は、地上船内戦闘形態の力を使うのか……だが、ここで死ぬ定めにあれば僕達がただ助けても直ぐに死んでしまう事になる。世界の理を調整しなければ、………だが今の僕には世界の理を調整する生命の女神の力を使うことなど到底出来ない』

 『大丈夫です。三人はここで死ぬ定めにありません。ただ、何かの切っ掛けで、どちらに倒れるか分からない運命にあるのだと思います。なので、私達が手を差し伸べなければ死ぬ確立が高まることになります』

 『お前にそんな事が分かる機能なんて付いていたっけ?』

 『いえ、……でも、そう思うんです』

 『〈雪崩発生マデ後七分〉』

 『分かった……お前のその勘に掛けよう』


 ・・・地上船内戦闘形態は、まだ動作確認が出来ていないが仕方がないか・・・


 『未来、この辺りを監視しているものの目から僕達の姿を隠す事は出来るか?』

 ・・・。

 『地球の人工衛星に関しては問題ありません。が、今の私ではマスターの力を借りたとしても、月に来ている地球外の者達の宇宙船のセンサーを完全に騙すのは無理です。一瞬ではありますが、相手のシステムに接続した瞬間は気付かれます。それだけで、多分、大体の位置は割り出されてしまいます』

 『そうか、分かった』


 ・・・まさか、こんなにも早く腹を括らなければならない事態が起こるとは・・・


 『仕方がないな……よし未来、地上船内戦闘形態に移行しろ』

 『マスター、一つ進言します。地上船内戦闘形態に移行すると生命の女神様の力をホンの少しだけですが借りる為にマスターの魂に掛けてある封印を僅かに緩めることになります。その僅かな生命の女神様の力でも私を管理していた者達のセンサーには引っ掛かってしまうと思われます。なので先に、この部屋に【遮断障壁フィールド】を展開することをお勧めします』

 『〈【遮断障壁フィールド】ノ使用・許可?・不許可?〉』

 『分かった。許可する』

 『〈許可確認・【遮断障壁フィールド】展開開始〉』


 僕の脳内に未来の声音の機械的な音声が響くと、未来を中心に目に見えない障壁が部屋全体に広がるのが感じられる。


 『〈【遮断障壁フィールド】展開終了〉』

 『〈雪崩発生マデ後六分〉』

 『〈神船【未来】・地上船内戦闘形態ヘ移行・許可?不許可?〉』

 『許可する。』

 『〈地上船内戦闘形態ヘ移行・許可確認〉』

 『〈神船【未来】・地上船内戦闘形態ヘ移行シマス〉』


 そう未来の声音の音声が告げると、未来の体を形作っている地球には無い特殊な物質で作られたナノマシンが、その拘束を解かれ未来の身体が霞のように崩壊していく。すると、未来の体の中心核()が現れ、その光の玉のような中心核()は僕の体の中へと入っていく。と同時に、未来の身体を形作っていたナノマシンの霞が僕の体に纏わり付き、地上船内戦闘形態へと変化していく。……まるで、未来に抱き締められているようで気持ちいい。


 そして、僕の魂に掛けられた封印が少し弱められ体に変化が現れる。と同時に、体に暖かな力が満ちていくのを感じる。


 想像するに、恐らく今の僕の体を取り巻く状況はテレビアニメの魔法少女の変身シーンのような状況にあるのではないかと僕には推測される。・・・う~ん、男が魔法少女のように変身するって……どうなんだ?・・・などと思っている内に変化が終わったようだ。


 『〈神船【未来】・地上船内戦闘形態ヘノ移行終了〉』


 『〈システムチェック・開始〉』

 『〈キャプテント神船【未来】トノリンク・チェック〉』

 『〈物質生成システム・チェック〉』

 『〈防御フィールド発生システム・チェック〉』

 『〈反重力発生システム・チェック〉』

 『〈ハッキングシステム・チェック〉』

 『〈〉』

 『〈〉』

 『〈各種センサーシステム・チェック〉』

 『〈システムチェック・完了〉』

 『〈システム・オールグリーン〉』


 『〈雪崩発生マデ後五分〉』


 システムチェックが終ると僕は目を開ける。


 僕は何時の間にか布団の上に立っていた。・・・あれ?体の痛みがウソのように無くなってる?封印が緩み生命の女神の力が僅かだが解放されたせいかな?・・・と、ふと部屋にある鏡台に目をやると、その鏡には、厚手の服とマントの上からでもわかるグラマラスな、見たことの無い銀髪の別嬪さんが映っていた。しかも、オタクが泣いて喜びそうな純白の宇宙海賊の格好をして。って、あれ?何かおかしいな……ってぇ?!これ、僕じゃないか!?


 ・・・・。

 『未来、一つ聞きたいのだが……』

 『はい、何でしょう?』

 『神船みらい地上船内戦闘形態(海賊服)になると、僕、女性体になるのか?』

 『恐らく、生命の女神様の力が僅かに解放された事による影響がキャプテンの体に出ているのだと思います』

 ・・・・。

 『なるほど、女神というだけあって女性体になるということか……』


 そう言いながら僕は無意識に手を自分の胸に持っていき、更に無意識に揉んでいた。・・・うん、手触りは柔らかいけど弾力があって気持ちいい・・・胸を揉まれるのってこんな風に感じるんだ・・・なんだか、ドキドキして気持ちいい・・・って! 何やってんだ?! 僕!・・・と、僕は慌てて胸から手を離す。が、ふと、この純白の海賊服のスカートの下はどうなっているんだろう?という好奇心に駆られ、ドキドキとしながら僕は自分のスカートに手を伸ばす。その時、『〈雪崩発生マデ後四分〉』と、脳内に警報が鳴り響き僕の心臓が跳び跳ねる。


 ・・・ビ、ビックリしたー。けど、驚いたお陰で暴走してオーバーヒート気味だった頭が冷えて落ち着いた。危うく一線を越えるところだった・・・危ない危ない・・・この体は思春期の僕には刺激的すぎる・・・


 『ところで、未来。何で純白の海賊服何だ?しかも、キャプテンって……』


 何故自分が着ている服が海賊服だとわかるかというと、帽子とマントに黒いドクロの刺繍が有るからだ。まるで、どこぞのアニメのキャラクターのような姿をしている。


 『地上船内戦闘形態(海賊服)神船わたし乗着じょうちゃくした時点でマスターはキャプテン(船長)になります。そして、キャプテンが纏うべきは海賊の船長服! 生命の女神キャプテンの誕生と生を司る力を使う時は白地に黒のドクロ、死を司る力を使う時は黒地に白のドクロです。似合ってるでしょ! ネットでこのデザインを見つけて、きっとキャプテンに似合うだろうなぁと思ってたんだ!』

 『纏うべきはって、……まあ、確かに。一部趣味の方々にはウケる姿をしているとは思う。僕も嫌いではない。嫌いではないが、流石にこの姿で人前に出るのは恥ずかしいかも』

 『えー、すっごく似合ってるのに……』

 『まあいいや。今から人前に出る訳じゃないし。ところで、このまま、外に出ても月面上にいる者達には気付かれないのかな?』

 『〈雪崩発生マデ後三分〉』

 『生命の女神キャプテンの封印を緩めているので、生命の女神の神威が僅かですがキャプテンから放たれています。その為、月面上にいる元管理者のセンサーには確実に捉えられてしまいます。なので、この遮断障壁フィールドの中から月にいる者達のシステムにハッキングをかけて少しの間そのシステムをダウンさせます。それでも、後でシステムを調べられれば大体の位置を知られる事になりますが、事を済ませて直ぐに元に戻れば大丈夫だと思います』

 『そうか、……一つ聞きたいんだけど、遮断障壁フィールドを張ったまま飛ぶことは出来ないのか? そうすれば、元管理者のシステムをダウンさせなくても、こちらの存在に気付かれないのでは?』

 『遮断障壁フィールドを張ったまま飛ぶことは出来ます。ですが、遮断障壁フィールドの外に反重力の力場を発生させる事になるので、元管理者のセンサーに完全に此方を捉えられる事になります』

 『ああ、それじゃあ意味が無いな』


 ・・・仕方がないか、覚悟はしていた事だし、未来の話だと直ぐに見つかる訳でも無さそうだしな・・・


 『よし、未来、やってくれ』

 『はい』

 『〈ハッキング開始・衛星ノシステム掌握・・・月軌道上ノ異星ノ船のシステム掌握・数分間生命維持意外ノシステムヲダウンサセマス〉』


 ・・・って、早!・・・そんなに簡単に、地球の衛星のシステムを乗っ取るか? しかも、地球より遥かに高度な技術を持つ異星の宇宙船のシステムまで・・・流石は神船、というところか・・・


 『よし、行こう』

 『はい』


 僕は神船みらいの力に感心しつつ部屋の窓から外に飛び出す。と、地上船内戦闘形態の〈純白の海賊服みらい〉は【対生物不可視モード】と【反重力発生システム】を起動させる。すると、〈純白の海賊服みらい〉は虹色に淡く輝きだし僕はスキー場全体を見渡せる所まで一気に上昇した。


 『〈雪崩発生マデ後二分〉』


 『未来、お前の装備で雪崩から人を救えそうな物は何がある?』

 『う~ん、今の私に準備出来るのは、バリヤー銃と熱線銃、あとブラスターぐらいかなぁ? 今の状況から判断してバリヤー銃を推奨します』

 ・・・・。

 『熱線銃やブラスターでは確実性に欠けるし、目立ちすぎるか』

 『はい。バリヤー銃ならば対象の周囲に障壁フィールドを作り確実に守ることが出来ます。それに、周りへの影響も小範囲なので、それほど目立ちません』

 『よし、分かった。バリヤー銃を準備してくれ』

 『はい』

 『〈オーダー確認・バリヤー銃セット〉』


 未来が僕に応えると〈純白の海賊服〉のマントからライフル銃に似た形で、シンプルだが未来的な外観のバリヤー銃が生み出されるように出てくる。

 僕はそのバリヤー銃を受け取る。


『照準は私が定めます。キャプテンはタイミングを計って引き金を引いてください。バリヤーは外からの衝撃が無くなれば消滅するようにセットしてあります』

 『分かった』


 ・・・射つかどうかの判断は僕に任せる、という事か・・・・・相手を確実に守り、かつ、相手に何が起こったのか理解されないようなタイミングで射たないとダメなんだよな・・・よく考えてみたら、何の練習も無く、ぶっつけ本番でそれをやれというのは、あまりにもハードル高過ぎなんじゃないか・・・そもそも、僕、銃なんて生まれてこのかた一度も手に持ったこともないというのに・・・あるのは生命の女神せんだいの知識と記憶だけ・・・今は、それを頼りにやるしかないか・・・


 『〈雪崩発生マデ後一分〉』


 僕はバリヤー銃を構え、照準器を覗き込む。


 『〈全テノ標的ニ照準固定マーカーヲセット〉』

 『〈高順位標的三ツハ・レッドマーカー・・他ハ・ブルーマーカートシマシタ〉』


 ・・・表層雪崩の速度は、新幹線並みの時速100キロ~200キロメートル、だったよな・・・雪崩の発生位置は山頂付近で、スキー場の最上部までの距離、約一キロか・・・雪崩が発生して約18秒~36秒でスキー場最上部に到達・・・って、早!・・・一キロ、遅くとも30秒台って・・・でも、まあ、雪崩が発生して、それだけの余裕が有ればなんとかなるか・・・マーカーに、それぞれ番号が振ってあるけど、雪崩に巻き込まれる順番に振ってあるのか。レッドマーカーは1~3になってる。冠城さんが1で龍宮が2、山寺君が3・・・って、何で3人とも最初に雪崩に巻き込まれる山側に留まっているんだ?・・・・・・何だか、緊張してきたな・・・


と考えていると、

『〈雪崩ガ発生シマス〉』

と警告が発せられると同時に、山頂付近から雪崖の崩落が始まり、瞬く間に周りの大量の積雪を巻き込みながら、雪煙を上げスキー場に向かって雪崩れ込んでいく。


 ・・・スキー場最上部にいる人たちも気が付いた・・・慌てて滑り出している人達もいるけど、みんなパニック状態だ・・・滑り出しても何人かは直ぐに転んでる・・・冠城さん達は一番奥の山側にいるせいで身動きが取れないようだ・・・


と考えながら、僕は一つ深呼吸をしてバリヤー銃のグリップを握り直す。

 そして、タイミングを計りながら、

『〈標的ターゲット1~16、連射モード〉』

と命じると、

『〈了解・ターゲット1~16・連射モードヲセットシマシタ〉』

という応答を聞きながら、僕はバリヤー銃の引き金を引いた。すると、ピッピッという僅かな発射音と共に無色透明な光が一発ずつ標的に向かって放たれ、その一発を放つ毎に照準が次の照準固定マーカーに向くように腕が自然と動いていく。


 『〈16ノターゲット・全テ命中・連射モード解除シマス〉』


 バリヤー銃の無色透明な光が(標的)に当たると、その(標的)を中心に障壁フィールド(バリヤー)が展開される。

 一番最初に雪崩が到達する冠城さん(レッドマーカー1)龍宮(レッドマーカー2)山寺君(レッドマーカー3)障壁フィールド(バリヤー)が展開されると同時に、雪崩が3人を呑み込んだ。瞬間、大きく硬い障害物にでも当たったかのように雪崩の雪が雪煙を纏いながら盛大に跳ね上げられる。

 冠城さん達の周りにいた人達にも順次、障壁フィールド(バリヤー)が展開されて雪崩の雪が盛大に跳ね上げられていった。


 ・・・上手くバリヤーも展開されているようだ・・・みんな、パニック状態になっているから多分、何が起こっているのか理解できていないだろうなぁ・・・


 僕はそう思いながら、すでに次の照準固定マーカーに照準が合わされている照準器を覗き込み、タイミングを合わせて引き金を引いていった。




 「やっぱりマスターは凄いです」


 ・・・いや、凄いのはお前だから・・・僕はただ引き金を引いてただけだから・・・


 僕達は雪崩が終息し皆が無事である事を確認すると、宿の部屋へと戻ってきて、神船みらいを地上船内戦闘形態から人型へと戻す。途端に僕は未来に抱き付かれていた。

 未来が僕から分離すると、僕は男の姿へと戻っていた。よかった。女性の姿から戻れなかったらどうしようかと一瞬思ったよ。


 未来は僕から離れると思い返す様にしながら口を開く。


 「初めての私とマスターの合体(乗着)、とても気持ち良かったです」

と、未来はポーっと頬を赤らめながら言う。

 「合体言うな!」


 「そして、マスターの変態、いえ変体(女体化)した姿、とても綺麗でした」

と、未来は羨望の眼差しを僕に向けながら言う。

 「ヘンタイ言うな!しかも言い直してるし。わざとだろ! って、凄いって、そういう事かよ!」

未来の中心核()が創星の魂を包む→創星の魂が未来の中心核に乗る→乗

        +

神船みらい地上船内戦闘形態(かいぞくふく)を創星が纏う→着

        ∥

        乗着

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