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元日 嵐の到来(鍛錬開始) (2)

 鍛練(拷問)が始まって、道場内にある時計で50時間、道場に入ってから(トレーニング等の10時間を足して)60時間(道場外(結界の外)ではその十分の一の6時間)、もちろんそれなりの休憩時間もあったし、数回の食事の時間(その食事が何処から出てきたのかわからないけど)もあった。

 だがしかし、50時間(休憩時間、食事時間を含む)の鍛練(拷問)(休憩時間、食事時間は除く)は地獄そのものだった。


 「うがっ……!?」

 「そらそら、気を抜くからそういうことになる」


 僕が少しでも気を抜くと伽凛師匠は容赦なく僕の腕を飛ばし足を飛ばし腹に大穴を開けた。ほんと容赦ない!

 その激痛、苦痛にもがく暇もなく伽凛師匠の攻撃が続く。即座に治るとはいっても、少しくらいは手を緩めてくれ!


 はじめの内はかわすのがやっとで、2、3回かわせたかと思った瞬間、腕や足を吹き飛ばされていた。

 その度に動けなくなっていたが伽凛師匠の攻撃は容赦なく、僕の精神がもたず気を失った時初めてその攻撃は止まった。のだが、それははじめの時だけで、その後、僕は中々気を失うことも出来ず、死にそうなほどの苦痛激痛に精神が悲鳴を上げつづけた。そんな気が狂いそうな程の苦痛激痛から脱するには無理矢理にでも身体を動かし伽凛師匠の攻撃をかわすしかなかった。


 身体に関しては手足をもがれても腹に大穴を開けられても即座に再生し行動に支障をきたすような障害もなく直ぐに全力を出すことが出来た。


 そのお陰なのか、ある程度経つと伽凛師匠の動きを見極め、ある程度余裕を持ってかわすことが出きるようになった。そろそろ、反撃かな……と思いカウンターを狙おうとした瞬間、伽凛師匠の技のスピード、鋭さなど攻撃の全てのレベルが上昇する。

 その結果、またボッコボコにやられる。

 この繰り返しだった。でも、伽凜師匠は全力のぜの字も出してないよね……分かっていた……分かってはいたことだけど……くやしい。


 因みに僕が着ているトレーナーは僕の身体が再生して少しするとこの道場に張られている結界の再生効果により元通りに直っていた。

 この結界には人が死んでもおかくしない怪我をしても死なないような力も付加されているようだけど、その力にも限界があるから鍛錬前に伽凜師匠と射陰さんが言い争っていたのだろう。


 鍛練(拷問)が始まってかなりの時間が経っていたためか心に多少の余裕が出来ていたのだろう、無意識のうちに僅かずつだが僕に雑念が生じ始めていた。

 それが後に鍛練(拷問)が苛烈になる原因になるとはこの時の僕が知るよしもなかった。


 ・・・ここまでやられれば、痛みにも耐性がつくと思うんだけど……全然痛みに馴れない。師匠がそういう破壊の仕方をしているのかも……畜生! これからは心の中では師匠と呼ばずに鬼と呼んでやる!!・・・


 ただ、僕が伽凛師匠の攻撃を受けたり流したりするのに型で身に付けた受け流しが出来、攻撃に転じることが出来るまで、それを実戦そのものといえる攻防の中で身に付けさせようとしているのは薄々感じられた。それに気がついたのは随分と経ってからだったけど……。


 ・・・・この人、僕をいたぶって楽しむだけでなく、一応は闘い方も教えてくれてるんだよなー……たぶん……そうであることを信じたい・・・


 それでも徐々にではあるが、伽凛師匠が攻撃のレベルを上げても直ぐにやられるということは少なくなり、攻防が続くようになってきた。攻防とはいっても僕はほとんど防戦一方だけど……それでも1発? くらいは攻撃を返せるようにはなってきた……(師匠)には掠りもしないけど……ぁあ! もう! やめたい! もういい! もう、逃げだすか? ………いや、その選択肢はない。(師匠)に背を向けるイコール、即、死だ……畜生!! 死にそうなほどの気が狂わんばかりの痛みと苦しみに耐えてるんだ! この(師匠)に必ず一発は当ててやる!!


 「……こんな状況なのに、雑念が生じているようだな。そんなに余裕があるなら攻撃のレベルを今まで以上に上げても構わんな」


 伽凛師匠はいい笑顔でそう言うと攻撃のレベルを今までとは比べものにならないほどに上げる。


 僕は言葉を発することも他事を考える余裕もなくなり命の危険を感じるほどボロボロになりながら伽凛師匠の攻撃を防御することに必死になる。

 僕は腕や足を数回飛ばされてもその痛みを無視するほど防御に集中していった。それから暫くしてその集中が頂点に達した時、僕の中で何かが弾けた気がした。と同時に、伽凛師匠が繰り出した今までだったら腹に大穴を開けているだろう威力の蹴りを、腹に当たる瞬間何かがバチッと弾いた。その瞬間、僕は伽凛師匠の顔面に拳を繰り出していた。

 その拳は伽凛師匠の頬を掠めただけだったがその頬は僅かに裂け血が染みだしていた。


 ・・・よしっ! 一発入った・・・


 僕の拳は伽凜師匠の頬を掠めただけだったが伽凜師匠に一発入れたことに僕は歓喜した。のだが……。


 「やっときたか………しかも私の闘気を破り、僅かだが私の肌に傷をつけるとはな」


 伽凛師匠は呟くと背筋が凍るような笑顔を見せた。と思った瞬間、想像を絶するこの世のものとは思えないほどの威力をもつ無数の拳が現れるのを感じた。のだが、僕は何の抵抗も出来ずその瞬間、僕の意識は途切れた。




 『彼女には気をつけなさい』

 『……貴女は?』

 『私は(貴方)です。……あまり殺されてはいけませんよ。今の貴方()ではもう1人の貴方()を御することが出来ません』

 『それはどういう……』


 突然目の前に現れた、何処かで見たことのあるような絶世の美女の忠告に僕は意味が分からず問い掛ける。

 だが、その問い掛けが終わる前にその絶世の美女の姿は薄れ始め、意識が何かに引っ張られるような感じがした。

 その感覚に・・・ああ、目が覚めるんだな・・・と思いながら彼女の忠告も夢のように薄れていった。




 「創星、おめでとう。思ったより時間がかかったが人としてのお前の特異能力が今発現した。それは生命の女神としての能力が自在に使えない今のお前に必要な武器だ。発現したばかりでまだ全然力は弱いが、少なくとも今のこの地球上でお前を傷つけられるほどの威力を有するものは限られるだろう。よく頑張ったな」


 僕は意識が戻ったばかりで伽凜師匠が何を言っているのか理解できずにいた。


 「……あの、何のことでしょう? 特異能力? 人間離れしたこの肉体以外に、なんの特異能力?」

 「……今のお前の肉体の能力では鉄砲玉くらいなら余裕で耐えられるだろうが、例えばATM(対戦車ミサイル)より強力なものが相手となれば今のお前の肉体の能力だけでは耐えられずお前は敵に制圧されるだろう。それではお前自身もお前の大切なものも守ることが出来ん。そのためお前には肉体の能力以外に+αが必要だった。それが戦闘能力と特異能力だ」

 「それで、この拷問のような鍛錬だったんですか?」

 「そうだ、地球人だけが相手なら戦闘能力だけでよかったんだが、お前の場合異星人も相手にしなければならない。恐らくお前を確保するために送られてくる異星人は特殊で強い力を持つ特異能力者だろう。そんな者を相手にするにはお前自身も特異能力を持つしかない」

 「そんな奴を相手にしないといけないなんて……憂鬱ですね。ところで、失礼ですがこの拷問のような鍛錬は本当に僕のためだけを思って行われていたのでしょうか? 僕には師匠が楽しんでやっていたようにも感じられたのですが……特に最後のラッシュは何か意味があったのでしょうか?」


 僕がジトッとした目で尋ねると、少し間を置いた後伽凜師匠は開き直ったように、ハハハ、と笑い「もちろん、楽しんでやっていたよ。私は何事も楽しんでやるのが信条だからね。最後のラッシュは頬に一発入れられた腹いせだ」と言う。


 ・・・うっわ、言い切ったよこの人・・・と思っていると。


 「まあ、言い訳にしかならんが、戦闘能力を付けるだけならここまでしなくてもよかった。だが、短期間で特異能力を発現させるにはどうしても肉体的にも精神的にも死を感じさせるほど追い込む必要があった」

 「……まあ、そうなのかも知れませんけど。それならそうと前もって言っておいて欲しかったです」

 「お前にその事を知らせて、特異能力を発現させようとお前が身構えてしまい変に力が入れば発現が遅れる心配があった。知らない状態で追い込まれた方が特異能力は発現しやすいんだ」


 「そうなんですかー?」と、僕が疑いの目を向けると「そうなんだよ!」と、伽凜師匠から不機嫌そうな返事が返ってくる。


 「……まあ、何にしても特異能力は発現したわけですし今日みたいな鍛錬はこれからはないということでいいんですよね?」

 「はっ? 何を言っている。特異能力が発現したとはいっても、まだまだ弱いし、それを使いこなせなければ意味がないだろう? それに戦闘能力も素人に毛が生えたようなものだ。今日のような鍛錬を続けて私の攻撃を受けても身体を破壊されないか、私と互角に渡り合えるくらいまでにはしなければな」

 「え”!? まぢで?!」

 「ああ、まじで!」


 僕はウンザリした表情で天を仰ぐ。


 「ところで、創星、何時まで横になっているつもりだ?」

 「………すみません。もう指一本動かすことが出来ません」

 「情けない奴だな……まあ、時間にして約二日間、肉体的にも精神的にも何十回死んでいてもおかしくない状況に置かれていたんだ。お前は生まれてこの方この平和な日本で暮らしてきて、こんな経験はしたことなどないだろう………そう考えると、肉体的には大丈夫でも精神的には疲弊しているか……ま、会話には問題ないようだし精神に障害を受けている事はないだろう」

 「……もし、精神に障害なんか受けてたら訴えますからね」

 「心配するな、その時は私が一生お前の面倒をみてやるよ」


 僕がジトッとした目を向け冗談を言うと伽凜師匠は満面の笑みを浮かべて返してきた。


 ・・・うん? 伽凜師匠、今の、冗談ですよね?・・・


 僕は怖くて声に出して聞くことが出来なかった。だって、本気だぞ、なんて言われたら……………うん、ごめんなさい。


 「さて、お前をこのままここに転がしておくのも忍びないな。仕方が無い、客間まで運んでやるか」


 そう言うと伽凛師匠は僕の腕を掴み自分の首にその腕を回すと僕の身体を片腕で抱えるようにして立たせた。




 ・・・創星くんが横向きに寝てたら膝枕してあげられたのに……・・・


 私は寝息をたて始めた創星くんに膝枕をしてあげたい思い駆られた。が、仰向けになり未來ちゃんに抱きつかれて寝息をたてている創星くんを見て一つ息を吐き諦めた。


 ・・・創星くん、貴方は知らないだろうけど、私は貴方に助けられる前から貴方のこと、見てたのよ・・・


 私は創星くんに膝を寄せ、創星くんの頭を撫でながらはじめて創星くんを見つけた時のことを思い出していた。


 それは去年の高校の入学式の日………。


 去年は入学式に合わせたかのようなタイミングで羽生市に植えられた桜が満開に咲いた年だった。


 私はその桜に誘われるように我が家の送迎の車を降り、御雷学院第二高等部へと続く桜並木の道を他の新入生の人達と同じように美しく咲き誇った桜を見て楽しみながら歩いていた。


 その桜並木の土手の下にはそれ程大きくはないがそれなりの深さのある川が流れている。


 私がふとその河原に目をやった時、私が入学する学校のブレザーを着た一人の男子生徒が腰近くまで水に浸かりながら川の中を歩いているのが目に飛び込んできた。

 私は一瞬・・・入水自殺?!・・・と慌てたが、よく見てみると、その男子生徒の向かう先には水面から伸びた木が一本生えていて、その木に一匹の子猫が川に流されまいと必死にしがみついているのが見えた。

 そのまま放っておけば間違いなくその子猫は川に流され死んでしまうだろう。


 そんな子猫にその男子生徒は慎重に両手を伸ばし捕まえると大事そうに抱き抱え踵を返した。と同時に、その男子生徒はバランスを崩した。その瞬間、私は仰天し、危ない! と叫びそうになったが、彼は胸元まで水に浸かりながらもなんとか態勢を立て直し岸に向かって歩きだした。


 その川は見た目それ程流れの早い川ではないように思われたが、それでもその男子生徒の行動は私には無謀に思え、最悪の場合を考え学校若しくは消防か警察に連絡を取ろうとスマホを手にとっていた。のだが、彼が無事に岸に上がるのを確認すると私は、ホッと一息吐き、そのスマホをカバンの中へとしまっていた。


 助けた子猫に頬を舐められる彼の笑顔を見て、なんだか胸が暖かくなる気がしたからだ。


 結局のところ彼は入学式に遅れ、しかも制服はずぶ濡れのままだった。

 そんな彼を先生達は見逃してくれなかったようで、彼は別室に連れていかれこっぴどく叱られたようだった。


 ・・・まあ、彼、創星くんのその時の理由を知っていたから私は創星くんが可愛そうに思えたけど……それでも、まあ、あれは叱られてもしかたがなかった、かな……・・・


 今でもあの時の創星くんの行動は常軌を逸していたと思う。

 下手をしたら死んでいてもおかしくない状況だった。


 それ以来、創星くんのことが気になっていたというのもあるが………私が創星くんを目にする時は大体誰かを助けていた。


 学校外では大きな荷物を持ち道に迷っていたお婆さんの荷物を持ってあげて一緒になってお婆さんの目的地を探してあげたり、迷子の子を交番まで連れていってあげたり、学校内ではあまり目立つようなことはしないが、授業のために大荷物を持って教室に移動している人を然り気無く助けてあげたり、授業の準備を手伝ったりしていた。


 ・・・創星くんは、なんというか、人でも動物でも何でも困ったりしていると助けずにはいられないみたい………というか、あの助け癖はある意味病気なんじゃない? と心配になる時もあるほどなんだけど……でも、そんな創星くんだから私も助けてくれたのだろう・・・


 高校に入学して二月程たった頃、私はいじめられ始めた。

 最初は、高校に入学した頃直ぐに委員長の提案でSNSによるクラスのグループメールが出来たのだが、そのグループメールに私の悪口が書き込まれるようになり、それが徐々にエスカレートしていったのだ。


 それは誰が始めたものか分からないが、始めは誰に対してなのか分からないようなものでほんの些細な陰口だったようだ。

 それが時が経つとともにグループメールのメール内容が更新されるとともに徐々にではあるがグループメール内に広がってゆくと共にその人物に対しての些細な陰口が悪口になり更に悪意の籠った表現へとなっていった。

 それと同時に、陰口の対象となる人物の特定に関しても誰を指しているのか分からないような表現だったものが、個人名までは出していないが個人を特定出来るような、明らかに私を指しているだろう表現へと変わっていった。

 まるで誰か、私に悪意のある第三者によって誘導されているかのように……。


 私は恐くなりグループメールから脱退しSNSをやめたのだけど、時既に遅く、SNS上だけでなく現実のクラスでも私の居場所が無くなっていた。


 入学以来仲のよかった友達も私が近づくと逃げるように離れて行き、クラスの皆は私を遠巻きにしてヒソヒソと私の陰口をたたき私に蔑んだ目を向けるようになっていた。


 ・・・今考えると、虐めが始まったのは何が原因だったのだろう? はっきりとした原因はわからないけど……一つだけ、あれが原因なのかもしれない、と思えることがあった。のだけど、彼がそんな事をする人物だとは思いたくはない・・・


 それは、グループメールに陰口が書かれ始めたころ、委員長、新庄君に告白とまではいかないが好意を持っているようなことを言われた事があった。だけど、私はそれに対して他に気になる人がいることを新庄君に伝えた事があった。

 それから少しして、グループメールの陰口が過激になっていった気がする。

 だからと言って新庄君を疑いたくはない。


 なんにしても、私は誰かに相談すれば虐めが酷くなるのではと恐れ、また親には心配させたくなくて誰にも相談できないまま追い詰められ学校に行くことに恐怖を覚えるようになり始めていた。


 ・・・あのまま誰も助けてくれなければ、間違いなく私は不登校になっていただろう・・・


 その頃、創星くんは入学式の時のこともあり、変人と皆に見られていて、一人浮いた存在になっていなように思う。

 そのせいもあったのか、創星くんはクラスのグループメールにも入っていなかった。


 ・・・そのせいで私も創星くんになかなか声を掛けられなかったのよね……・・・


 私がグループメールから脱退して二週間程たった頃、朝のクラスミーティングでのことだった。

 委員長が「他に意見のある人はいませんか?」とクラスミーティングを終わらせようとした時。


 「すみません」と一人の男子生徒が手を上げた。


 「最近、クラスの雰囲気が悪い気がするんだけど……委員長は何か気がついていませんか?」


 その男子生徒は創星くんだった。


 「……鈴星くん、それはどういうことですか?」

 「クラス全体で、一人の人を外れものにしているように感じるんだけど……」

 「……その外れものにされているのは、君のことですか?」


 創星くんの発言に委員長が茶化すように応えるとクラス全体から笑いが起こる。


 私は泣き出したくなる気持ちを抑え俯くしか出来なかった。

 まさかこのクラスで私を助けてくれようとしてくれる人がいるとは思わなかったから。

 ただ、この頃私の心に余裕が無くて、これ以上皆を刺激しないで、と思う気持ちの方が強かった。


 「委員長! 茶化すな! 人一人の人生を狂わすかもしれない事態になっているんだぞ! それに、出来るだけ大事にしないために担任の先生がいない今回のクラスミーティングのうちに問題を解決しようと言っているんだ!」


 創星くんが語気を荒げると笑い声が止まりクラスは静まり返る。


 「……分かりました。鈴星君はその人にこのクラスで虐められているか確認は取ったのですね?」

 「……いや、直には聞いていないけど。傍目から見ても、その人が周りからはばにされ憔悴していっているのが分かるから言っているんだ!」


 創星くんの返答に「…………分かりました」と委員長は少し考えるような仕草をした後応え「皆、もし今、虐めをしている人がいたら今すぐやめて下さい。虐めは犯罪です。場合によっては警察沙汰にもなりかねません。もし虐めを見かけた人は僕でも担任の先生でも構いません。教えてください。お願いします。もし今、虐められている人がいたら相談してください。必ず力になります」と言うとクラス全体に重たい空気が流れ始める。


 「今直ぐには言い出せない人もいるでしょう。もし何かあれば何時でも相談に来て下さい」


 委員長はそう言うと創星くんに目を向けて「今のところはこれくらいしか出来ませんが、これで宜しいですか?」と問いかける。

 それに対して創星くんは頷くことで応えていた。


 それ以降、少しずつだが私に対するクラスの反応が改善していって、追い詰められていた私の気持ちも徐々にではあるが改善していった。

 だが、それと同時に、私を助け私の気を引くために、私をクラスの除け者にしようとクラスの人達を誘導したのは鈴星創星だ、という噂が立ち始めた。


 その当時、創星くんはクラスの中でそんなことが出来る立ち位置になかったのに、それがまるで動かざる真実かのように広がっていった。


 ・・・私は創星くんに助けられたのに、私には創星くんを助けてあげる勇気がなかった。その時のことを思い出すと今でも胸を締め付けられ涙が出てくる・・・

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