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大晦日 嵐の前兆? (4) 

 混沌神エシファーダ様の突然の親族発言に僕は心底・・・このひと()と親族なんて、ないわー・・・と思いながら、「……そういうことになるんでしょうか?」と、言葉を返す。


 ・・・・・・。


 「お前……何だか嫌そうだな……」

 「あ、分かります?」


 僕の気持ちが表情に出ていたのかエシファーダ様が僕の気持ちを言い当てた。それに対して僕が即座に肯定すると「お前、素直だな……」と呆れたように言い「……その素直さに免じて苦しまんように殺してやるよ」と凄む。


 ・・・その素直さに免じて許してくれるんじゃないのかよ・・・と、僕が心の中でツッコミを入れ・・・威圧感も何もないその姿で凄まれてもねー・・・と僕が思うか思わないかという時に、スコーン、という音と共に「あいたっ!」という悲鳴が聞こえてくる。


 「貴女が鈴星様にご挨拶したいというから出してあげたというのに……もう貴女は私の中に戻っていなさい!」


 摩耶さんがそういうと直径20センチほどの灰褐色のメダルの形をした混沌神エシファーダ様は摩耶さんの胸の中に消えていく。


 「ちょっと待て! 摩耶! 我にはまだ言わなければならんことがあるのだ!」

 「いいえ、待ちません! 貴女はただ単に外に出たかっただけでしょう。下らないことばかり言うなら私の中で大人しくしていなさい!」


 摩耶さんがそう一括すると混沌神エシファーダ様は「摩耶ー! もう少し我を敬えー!」と叫びながら摩耶さんの中に消えていった。


 ・・・あのひと()一体何しに出てきたんだろう?・・・


 僕が呆れていると「鈴星様と未来さんは今の(混沌神エシファーダ)を見ても驚かれていないようですね? もしかして、私があれ()を宿していることに気づかれていましたか?」と、笑みを浮かべながら摩耶さんが声を掛けてきた。


 ・・・摩耶さん、いくら信奉している神様ではないとはいえ、神様に対して<今の>とか<あれ>というのは如何なものかと思いますよ……一体、エシファーダ様と何があったんですか?・・・と思いながら僕は「薄々ですが、御雷神社に異星の方が二人と神を宿した方が一人みえることは未来が気づいていましたから」と笑顔で応えた。


 「なるほど、流石は生命の女神様の神船といったところですね」


 そう微笑む摩耶さんに対して未来は「恐れ入ります」と笑顔を返す。


 「混沌神であるエシファーダは昔この世界(宇宙)全体を混沌の渦に巻き込み生命達を絶滅へと向かわせようとしたのです。それに怒った母神である創造と破壊の女神様が彼女を封印し、混沌神が彼女(混沌神)を敬う者達との間に作った子の子孫である創造神教の始祖等に封印をした混沌神の監視を命じたのだそうです」

 「……ということは、ラルファーさんとミカリーさんは摩耶さんを守るためでも側仕えとしているわけでもなく、摩耶さん、いえ、混沌神エシファーダ様を監視するためにここ(地球)にいる、ということですか?」

 「そうなりますね……ですが、お二人とも私にはよくしてくださっていますよ」


 僕の問いかけに摩耶さんは(にこ)やかに答える。


 ・・・これまでに何があったのか分からないけど、摩耶さんも大変なものを背負いこんじゃってるんだなあ・・・


 等と僕が考えていると、「鈴星様、何やら私のことで心配してくださっているようですね。……確かに私も一時期鈴星様とよく似た状況にありました。ですが、私の問題は既に沈静化しています。そんな私よりも鈴星様、現在進行形で貴方の方が深刻な状況にあるように私は思いますよ」と、摩耶さんは呆れたように言う。


 「えっ? それは、どういうことですか?」


 僕は摩耶さんの言葉に不安を覚え摩耶さんに問い掛ける。


 摩耶さんはため息を吐くように口を開くと、「神船である未来さんが鈴星様の元に来られた理由は私には分かりません。ですが、神船が姿を消した時、その神船を管理していた国がどれ程慌てたおとか、私の経験上(・・・)、想像に難くありません。ただ、その国()表面上は平静を保っていたそうです。恐らく、その国にとって神にも等しい存在である神船を失ったことを他国に知られたくなかったのでしょう。どういった状況で神船を失ったのか分かりませんが……そんな事を他国に知られればその国の威信にも関わるでしょうから。ですが、情報収集能力の高い、例えば創造神教国のような国にはその国を治める機関の上層部の異様な程の慌てようが嫌でも漏れ伝わってきたそうです。ただ、その国を治める機関の上層部がどうしてそんなに慌てているのかはどうしても分からなかったそうですが。エシファーダが地球に来た神船を察知して初めてその理由を私達は知ったのです。……ここまで話せば鈴星が置かれている状況はわかりますよね?」と、摩耶さんは僕に問い返す。


 「え、……ええ、まあ……」と、僕が曖昧な返事をすると、「いまいち理解していませんね」と、摩耶さんはため息を吐くように言い、少し考えるような仕草をしてから「……まあ、いいでしょう」と、諦めたように言う。そして、「話は変わりますが……」と、いきなり話題を変えてきた。って、話題変えるのはや! ここまで言っておいて、放置するんかい! 僕がどんな深刻な状況に置かれているのか教えてくれないのかい! ……僕の返事も悪かったと思うけど……流石は我我が道をいく伽凛さんの縁者だ・・・


 「……これは風の噂に聞いただけなのでそのつもりで聞いてください」と、前置きしてから摩耶さんは後ろにいるラルファーさん達を僅かに気にするような仕草をした後、再び口を開いた。


 「……未来さん、いえ、先代の神船と言うべきですね……その神船を生命の女神様の御遣いとして祀り管理していたのは、統合銀河帝国の三大国と呼ばれる大国の一つで、生命の女神様を種族の始祖としている神王下五龍大公統治星系団、通称、五龍大公国という国らしいのですが、その五龍大公国が何らかの理由で姿を消し地球へと舞い込んだ神船を取り返すために統合銀河帝国と地球の条約に五龍大公国の者達が地球で自由に活動出来るような条文を入れさせようと画策しているようなのです、あくまでも噂ですが。……もし、これが事実だったとしても、この太陽系を含む宙域を聖域として管理してきたという同じく三大国の一つである創造神教国がそんな事、恐らく認めないでしょう。……あと、もう一つ気になる話があります……これも噂なのですが、神船を標的にしているのか、若しくは別の何かを標的にしているのかは分からないとのことですが、統合銀河帝国の裏社会を牛耳る大きな組織の一つが怪しい動きをしているようなのですよ。……統合銀河帝国の裏社会の者達がこの地球に来たら、いえ、もしかしたらもう既に地球に潜んでいるかもしれません。そんな事を考えるけでも、怖いですねー、恐ろしいですねー、夜も眠れませんねー」


 摩耶さんは最後ちょっと巫山戯(ふざけ)たような感じで怯えて見せる。うん、この最後の巫山戯た感じ、やっぱり伽凜さんの縁者だ。


 ・・・最後は……まあ、置いといて……僕と会う前の未来、神船を襲った邪な者達は間違いなく五龍大公国の内にいる者達だろう。でなければ、五龍大公国が神船失ったという情報は直ぐにでも他国に漏れていたと思う。そして、裏社会の大きな組織の一つっていうのは、恐らくその五龍大公国と何らかの繋がりがある、ということなのかな? ……摩耶さんはあくまでも噂という形で今与えられるだけの情報を僕に与え、それだけ僕は深刻な状況に置かれているのだと教えてくれたのだろう。うん、よかった、摩耶さんが伽凛さんと違ってまともな人で……伽凛さんと同類扱いしたこと心よりお詫びします。……情報を噂ということにしたのはラルファーさん達の立場を考えてのことだろう。ということは、僕達が五龍大公国の者達と接触した時にこの情報を僕達が事前に入手していたということを知られないようにしないといけない、ということだよね・・・


 「裏社会の者達に関してはこの宙域を管理する我々創造神教国が監視して侵入を防いでいます。ですが、監視の目を掻い潜る者もいるかもしれません。くれぐれも、お気をつけ下さいますようお願いいたします」


 ラルファーさんは摩耶さんの話にそう付け加える。


 ・・・そして、何かあった時は自分でなんとかしてください、てことだよね・・・


 摩耶さんは少し頬を染め一つ咳払いをすると口を開いた。


 ・・・やっぱり、この人、基本的に真面目なひとなんだなー。巫山戯ようなことを言ったはいいけど、それが恥ずかしくて仕方がないって感じだ・・・


 「まあ、何にしても、お互い裏社会の者達に目を付けられないように気を付けましょうね」

 「……はい。……あと、一つお聞きしたいのですが……正規のルートでこの地球に入ってきているのはラルファーさん達創造神教国の方以外にもいるのでしょうか」

 「そうですね……私が聞いているのは、今現在統合銀河帝国が地球に入る許可を出しているのはこの宙域を長年聖域として管理してきた創造神教国本星エファーロ星系第三惑星の者達だけということだけですね。あと、地球側も人数など制限を設けて許可しているようです」

 「なるほど……創造神教国本星の方々はみんなラルファーさん達のように翼を生やしているんですか?」


 僕の問い掛けに摩耶さんは確認を取るようにラルファーさんに視線を向ける。

 ラルファーさんはそれに応えるように頷いた。


 それを確認すると摩耶さんは「はい……そのようですね」と僕の問い掛けに応える。


 「なるほど……ならば、大きな翼以外のコスプレをしたコスプレイヤーを見かけたら警戒するようにした方がいいですね」

 「その表現は如何なものかと思いますが……そうですね……それがいいでしょう」


 「そんなに心配するな。お前は私の直弟子になったんだ、私が責任を持ってこの世界の誰にも負けないように鍛え上げてやよ」


 僕と摩耶さんの会話を黙って聞いていた伽凛さんがそう言って胸を張り〈任せておけ〉と言わんばかりに親指を立てる。


 ・・・うん、ハードルが滅茶苦茶上がったような気がするけど……何にしても、伽凛さん達も直に僕を守ってくれるというわけではないんですね……まあ、確かに伽凛さん達も四六時中僕を守っている訳にもいかないだろうし。それに、これは僕自身が自分の力で解決しなければ収まりのつかない問題なんだろうなあ・・・


 等と僕が考えていると「……それに、私もついています。今度こそ命に替えてもマスターを守ります」と、未来が僕の袖を掴み小声で決意を口にする。


 「うん、未来、頼りにしてる。けど、命は大切にしないとダメだぞ」


 そう言うと、未来は小さく頷くことで応えた。うん、やっぱり僕の未来は可愛いな。こんな可愛い未来が命をかけるような事態になることだけは避けたいけれど……。


 「最後に一つ、似たような経験をした者からのアドバイスです。まあ色々とあると思いますが何事も最後がきます。その最後の最後まで諦めない! それが一番です!」


 摩耶さんは僕に〈頑張って!〉というように力を込めて言う。


 僕はそれに応えるように頷くと共に少し気になっていたことを聞くことにした。


 「あの、摩耶さん、最後に聞きたいのですが……エシファーダ様は結局何を言いたかったのでしょうか?」

 「ああ……そうですね……」


 摩耶さんは少し考えるような仕草をした後徐に口を開いた。


 「……鈴星様はこの世界の成り立ちはご存知ですよね」

 「……はい」

 「統合銀河帝国ではこの世界を、生き物や物質等が存在する物質界、神がいますところを天界、魂の帰るところを冥界と大きく三つに分けて呼んでいるそうです。その統合銀河帝国の考えを元にお話ししますね。……先代生命の女神様がこの物質界を去る時、物質界に残った神が創造と破壊の女神様だけだったということも……ご存知だと思います。その創造と破壊の女神様が物質界から去って、長い間、物質界に神は現臨していませんでした。当然、先代生命の女神様がこの物質界を去った後に生まれ封印され閉じ込められていた混沌神を除いてです。ですが、この世界を支える神々が、数は少ないのですが再びこの物質界に姿を現し始めているようなのです。然も今回はこの世界を支える三主神の内の二柱が、まだ完全にではありませんが現臨しているのです。それで、エシファーダは、この世界が外界からの危機に備えて免疫力を上げているのではないかと考え、次代の生命の女神様である鈴星様にそれをお伝えしたかったようなのです。ですが、それは、人の時間に換算すればまだまだ気が遠くなるような時間の先に起こるかもしれないという程度のもので、それが確実に起こるのものなのかどうなのかもまだ定かではありません。もしかしたら私達を混乱させようとしているだけの可能性もあります。何せあれ(エシファーダ)は混沌神ですから。ですから、今はあれ(混沌神エシファーダ)の言葉など気にせず、鈴星様は自分の問題の解決を一番に考えていればいいと思いますよ」


 ・・・やっぱり、摩耶さんはエシファーダ様のことを嫌ってる? いや、警戒してるのかな? にしても、エシファーダ様、神様なのにひどい言われようだな。一体、摩耶さんに何をしたんですか? エシファーダ様。……摩耶さんの体を乗っ取ろうとしたりしたとか? …………にしても、外界からの危機か……。少し摩耶さんが言っていたけど、先代生命の女神様の記憶を踏まえて、世界の成り立ちを統合銀河帝国の表現で言うと……この世界を支える神々がいる天界、僕達のいる生き物や物質が存在する物質界、そして死んだのも達の魂が浄化再生され次の生を受けるまで休眠をとるところであり新しい魂が生まれるところでもある冥界に別れているということだよね。別れているとはいっても別次元に隔絶しているわけでも階層をなしているわけでもなく、天界も物質界も冥界もこの世界に混ざり合うようにして存在している。ただ、物質界のものが他の界を見たり感じとったりするにはそれなりの能力と力が必要となってくる。それで、神というのは、簡単に言えば、世界の意思()が個の自我を持ちその意思()の力を行使するものが神である。例えば生命の女神ならこの世界の生と死の意思()を司り、創造と破壊の女神ならばこの世界の破壊と創造の意思()を司る。……この世界は無限とも思える広さの神界といわれる高エネルギー体の中に存在していている。その神界にはこの世界とは別の生命世界が数えきれないほど存在し、また生命世界の神とは別の高エネルギー体の神と呼ばれる存在がいる。……外界からの危機というのは恐らく神界の神のことだろう。その神界の神が害意をもってこの世界に干渉することにより生じるこの世界の理の破壊を防ぐために神々が現臨している、ということをエシファーダ様は言いたかったのかな? まあ、その外界からの危機も摩耶さんに言わせれば本当に来るかどうかも分からない。来るにしても、人の時間で遥か遠い未来に、ということらしい・・・


 等と僕が考えていると、「それにしても、エシファーダもバカだよなあ。摩耶は異邦人の血薄まれりとはいえ、御雷(ミカヅチ)の巫女としての力は折り紙付きだ。そんな摩耶にとりつくなんて、封印の上に封印をしてくださいといっているようなものだよな」と、伽凛さんは楽しげに言う。


 ・・・伽凛さん、エシファーダ様も必死だったんだと思うよ、力を殆んど封じられて、創造神教国の追っ手から逃げるのに……未来も同じように僕のところに逃げてきたのか…………よく考えてみたら、摩耶さんと僕の立場ってよくにてるんだ……僕はまだ問題解決の糸口も、というか相手方がどう解決を求めて来るかも分かっていない状況なんだけど……。平穏な生活を送るためにも此方から動くべきなのかなー…………何にしても、早めに腹を括るべきなのかもしれない・・・


 「取り敢えず、今、この場での問題は解決して、摩耶さん達と鈴星君の周りに聞かれたくない話も終わったのかな?」


 ここまで成り行きを見守っていた射陰さんが空気を読んで声を掛けてきた。


 「そうですね……私達の用は済みました。鈴星様はまだ何か聞きたいこととか御座いますか?」

 「……いえ、僕達の方も、聞きたいことは聞けましたし……他に聞きたいことは、今のところ思い浮かびませんね」


 僕達の返事を聞くと射陰さんは「了解」と言って「余り長く時の結界を張ると僕達と周りの時間のずれが大きくなるから、周りに聞かれたくない話がなければ時の結界を解くけど、いいかな?」と、僕や未来、伽凜さんと摩耶さん達に問い掛ける。

 その問い掛けに皆無言で応える。


 「よし。じゃあ皆出来るだけさっきと同じ位置に戻ってくれるかな?」


 その射陰さんの指示に無言で従う。って、ちょっと待って……。

 僕は伽凜さんの前に立って、固まった。

 伽凜さんはいい笑顔で、カマーン! と言わんばかりに両腕を広げている。

 僕が未来の方をチラッと見ると、未来は不機嫌そうな表情ではいるが、伽凜さんに敵意を向けてはいないように見えた。

 僕が少しの間躊躇していると、焦れたのか伽凜さんの逞しい両の腕が僕の頭と身体に襲いかかり、僕は逞しくも女性らしい伽凜さんの胸と身体に捕えられていた。

 今回僕は前のようなミスを犯さず、凶器といえる伽凜さんの胸に顔を埋められながらも何とか呼吸を確保することに成功していた。グッジョブ! 僕。

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