表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

国王陛下の恋のお悩み

国王陛下の恋のお手伝い

作者: 新田 葉月

お、遅れてすみません……壁)ω・`)

連載開始しました!


気が付いたら後半がきえていました。すみません。データがなかったので書き直ししました。


輝くような金色の髪。

思慮深い碧眼。

パーツパーツが完璧なバランスで構築されたお顔


この素敵な殿方は国王陛下のルシアン様です!


民を思う政治と、優れた統率力をお持ちの陛下は国中の皆の憧憬の対象であらせられます。

こんな素敵なお方が幼なじみでありながらわたしリディアナ・コトルは全てにおいて不器用で取り柄といったらお茶をいれるくらいというダメダメっぷりです。

しかし! 

陛下はそのわたしの唯一の取り柄であるお茶入れの腕を高く評価して下さいました。

なんとお優しいのでしょう……!

顔だけではなく心根まで最上級に素敵な方なのです陛下は!!

陛下付きの侍女としての名に恥じぬ様、努力を重ね、ついには国で行われたお茶入れ大会で優勝するまでにわたしの腕は昇華しました。これも陛下のお陰ですね!

それから、色々な事がありましたが、長きにわたりお側に付かせていただいておりました。

休憩の際は一緒にお茶を飲んだり、お菓子を食べたりもしましたね…… 

 

前に食べたあのふわっふわっのケーキ。すっごく美味しかったです。こう……ボリュームがあってですね、スポンジがとにかくふわっふわっで! クリームがたくさんのっていたのです!! 

そうそう。あとはあれです。 

緑色の不思議な味がしたあのもちっとしたやつです。あれは忘れられませんね! 陛下もお気に召していたようですし、あのあとケーキ屋さんにいったんですが、売ってなかったのですよね……。

確か異国のお菓子だったでしょうか……? はぅぅ。また食べたいです

毎日違ったお菓子が食べられるのは、陛下付きの侍女の役得ですね。 …………あ、こ、これは歴とした職務の一種ですからね? 

陛下がひとりで食べるのは嫌だからと言って下さったので、職務の一種です。ええ。陛下のお望みを叶えるのが陛下の傍付き侍女であるわたしの仕事ですから!!

しょ、職務放棄ではありませんよ!

決して美味しそうなお菓子につられて……なんて理由ではありませんからね。


こほん。とにかく、陛下との思い出をあげていったらキリがありません。

楽しく幸せな日々でした。

ですが、そんな満たされた日々もそろそろ終わりを告げます。わたしがのほほんと過ごしている間にいつの間にか結婚適齢期をすこぉし過ぎてしまったため、実家に呼び戻されたのです。


曰わく、婚約者候補を絞ったからに会いにこいと。


おそらくすぐに結婚もしなくてはなりませんし、結婚すれば、自動的に王宮侍女も一旦引退しなくてはならないのです。

全く面倒な……。

わたしは敬愛する国王陛下のお側に居られればそれだけでいいのですが。たとえ、血は繋がっていないにしても侯爵家の人間としては未婚は芳しくないようで……結婚はしなければならないのです。

そのお達しがあってからわたしは暫く溜め息ばかりついていました。いまさら結婚に夢なんていだいていないわたしとしては憂鬱で仕方がないです。

けれど、せめて、実家に戻るまでの短い間。

お別れを悲しむのではなく、この幸せな時を精一杯楽しみます!

そう考え直したわたしは毎日笑顔で過ごしました。

しばらく戻れないと思うと余計に一つ一つのことが楽しく感じるものですね。いつもより笑顔で過ごしていたせいか万事うまくいきました。笑顔って大切ですね! なんて。


正直、わたしは完全に舞い上がっておりました。


ですから、陛下のお悩みにもなかなか気が付くことが出来なかったのです……。

あぁ、なんと言うこと!

本当に情けない限りです。悔しくて悔しくて、気が付いた日は枕を濡らしました。


陛下の抱えるお悩みとはすばり恋!

しかも、単純な恋ではなく、婚約者がいらっしゃる方への恋です。陛下は国王という立場でいらっしゃいますから軽率な行動をとるわけには行かず、苦しんでおりました。


おいたわしや陛下……。


しかし、どうかお任せ下さい。

実家に戻るまで残り一ヶ月。それまでにこのリディアナ・コトルが必ず陛下の恋のお悩みを解決しますからね!

**


と固く決意したのですが……

「リディアナ・コトル」

わたしの手を握って目の前に跪く陛下に視線を移しました。


「私と結婚してくれませんか?」


何を血迷っていらっしゃるのですか陛下!?


**


………………ええっと。

何を血迷っていらっしゃるのでしょうか。ルシアン様は。


熱? ……は違うようです。頬は蒸気していますが、わたしの手を握る滑らかな手は寧ろ冷えているくらいです。

では、悩みすぎて頭でもおかしくされたのでしょうか? 真面目で、些細な問題にも真剣に取り組んで下さるルシアン様の事です。そうなってしまうことも有り得ないとは言い切れません。

わたしはじっとルシアン様の目を見つめました。

うーん?

いつも通りの思慮深く綺麗な碧眼です。怪しい要素はないでしょうか? わたしは剣士のごとき鋭い目でジトーッと見つめ続けます。あ、ルシアン様、目をそらさないで下さい!

……くっ。わたしの鋭すぎる眼力はルシアン様を怯えさせてしまったようです。でも、逸らしてはいけません。キョロキョロしだしたルシアン様の顔をガシッと掴みました。


「り、リディー?」

「動かないで下さい」


普段なら、恐れ多くて出来ない事ですが、わたしも必死なのです。

一度ルシアン様のお悩みになかなか気がつけなかった屈辱を二度と繰り返すわけにはいきません。


じーっ


わたしには読心術などありませんが、こうして見つめ続ければきっと少しは分かるはずです。


じーーーーっ。



「リディー、その、これはちょっと」

「静かに」 

ふむ……。

どこかがおかしいのは確かなのですが……、どこか分かりません。そうしている内に触っている頬がどんどん温かくなっていきます。


…………なんといいますか。

美男子が頬を染めていると非常に色っぽいですね! わたしが頬を染めてもこんな色気はでないでしょう。同性でも落とせてしまいそうです。

しかし、この火照りはなんでしょう?


……は! やっぱり熱? 急に出てきたんですね?

 

ルシアン様の額に手を当てて確認します。そんなに熱はないような気がしますけれど……。

もう少し顔を近づけて確認しようとすると、ルシアン様に手を掴まれて下ろされました。


「……頼む。勘弁してくれ」


まだ、確認は終わっていませんのに。それにルシアン様耳まで真っ赤です。

これは完璧に熱ですね!! もともとの体温が低い方は対して熱くないと感じても苦しく感じるとききましたし。

「……熱はないから」

「え!」

心を読まれたのでしょうか。

ルシアン様が呆れ顔でいいます。確かに優秀なルシアン様なら自分の体調くらい分かりますよね。信じることにします。


と、なると。やはり悩みすぎておかしくなったのですね。



「陛下」

「リディー」


わたしたちは同時にお互いの名前を呼びました。おっと、うっかり前のように陛下と呼んでしまいましたね。


「なんでしょうか?」

「あ、いや。リディーが先でいいよ」

では、失礼して。

わたしは先程きいた、ルシアン様の想い人である婚約者様の結婚式が一カ月後だということを伝えようと顔を引き締めました。


「さっきのは一体どういうことですか?」

「……」

きゃぁぁぁあっ!

違うんです! これが聞きたかったわけじゃないんですよ?! 口が勝手に……!

この聞き方だとまるで意味を深読みしているようではないですか!


「やっぱ「誤解しないでくれ違うんだこれはその一カ月後に控える大国での結婚式で婚約者役をお願いしたいという意味なんだすまないすこしからかおうとしたそれだけだ!!」

やっぱり、なんでもありません。という前にルシアン様が重ねるように言いました。

長台詞を一息で……。

ルシアン様の誤解されたくないという必死さが伝わってきます。ルシアン様は「なにをやっているんだ俺は……」と呟いて頭を抱えました。珍しく冗談を言ってみたら本気にされて恥ずかしがっている様です。

 

ルシアン様の気持ちは分かってますよー。大丈夫ですよー。

そう伝えるためににっこりと微笑みました。

ルシアン様の言葉を要約するとさっきの求婚は軽い冗談で、実はあの方の結婚式に婚約者役として付いてきて欲しいというわけですね!

理解しました。


「婚約者 ()なら、喜んで!」


わたしは誤解していないことを伝えるため役というのを強調していいました。何かルシアン様がますます落ち込んだ様な気がします。

なぜでしょう。


「では、実家に手紙を書いてきます。出立はいつになさいますか?」

一カ月で行って帰ってくるのは厳しいですから実家に連絡をいれねばなりません。こういう事情なら、実家も里帰りを延期してくれるでしょう。

ふふふ。

思わず笑みが零れそうになりました。

これまでの恩返しも出来ますし、ルシアン様とのお別れも延びるなんて……不謹慎にもとても嬉しいです。わたし、ルシアン様のお手伝いが出来るように精一杯頑張りますからね!

わたしの仕事はほぼ陛下付きとしてのものなどで大した準備はなく、いつでも行くことが出来るのですが。


「ルシアン様……?」

どうなさったのでしょうか? うなだれているルシアン様の名を呼びかけると弾かれたように顔をあげました。

「! 今ルシアンと?」

「あ、お嫌でしたか? 先程、陛下がルシアン様と呼んで良いと許可を下さった気がしたのですが、嫌だったら止めます」

うう……。やっぱり馴れ馴れしすぎましたか。落ちこむわたしの頭をぽんっと軽い衝撃が来ました。

え……? 驚いて顔をあげます。

ふわりと微笑みを浮かべるルシアン様がいらっしゃいました。思慮深げな瞳は優しく細められ喜びを表すように唇は柔らかく曲線を描いています。


「ルシアンと、これからもそう呼んでくれ」

「~~っ!」


な、何でしょう。顔が火照るし、心臓が信じられないくらいの速さで動きます。

「リディー?」

あ、あああまい! 甘いですよルシアン様!

「しゅ、しゅ出立はいつですか!」

うう。舌も回らないし。そういう色気は好きな方にだけ向けて下さい! も、もう! ルシアン様は自覚がなさ過ぎなんですから!!


「出立は……出来れば十日後にしたいんだが、だい――」

「大丈夫です!! わたしもう下がりますね」

ルシアン様の言葉を遮ってそう叫ぶとだだだっと部屋まで走りました。


本日二回目の出来事です。


※※


部屋に戻る頃には既に頬の火照りは消えていました。今すぐにでもベッドに倒れて枕に色々訴えたいところですが、我慢してまずは忘れない内に実家に手紙を書きます。


『ルシアン様の婚約者としてアスルート帝国の結婚式に参加することになりました。実家にはしばらく帰れません』


よし。

さっと書き上げた手紙を伝書鳩のルーちゃんに託し、わたしはさっさと出立の準備を始めました。


――――まさかこの手紙で勘違いした家族によりあんな事が起きるだなんて考えもしなかったのです。




お読み下さりありがとうございました


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらず読みやすく、無駄のない文章でした。 そして相変わらずヘタレな陛下……も、もう一押し!! [一言] こんばんは。 続編待ってましたー!!というテンションですぐに読んでしまいました…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ