第一章…2~学校~
お久し振りです。
松薔薇高校
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「おはよー」
「まだ暑いね~」
夏休みも終わり、生徒達は体育祭に向けて準備を始めようとしていた。
まだ夏休み明けなだけあって、半袖のワイシャツから日焼けの跡がくっきり見える。
キーンコーンカーンコーン…
…ダダダダダダダダ…
学校の予鈴だ。
ほとんどの生徒が教室に入っていると言うのに、一人物凄い速さで校門を走り抜ける。
ガラッ!
彼はそのまま勢い良くドアを開ける。
「セーフ!?」
走ってきたのに彼は息切れなど全くしていない。
「ギリギリセーフ!」
と、4人ほどの男子が答える。「ラッキー!」とハイタッチしながら言い、彼は自分の席に座る。
前の席の、成瀬鳴海が少し笑いながら聞いてきた。
「遅かったな、蛍。また寝坊か?」
「うっせ。自転車のタイアがパンクしてたんだよ。お陰で家から走るはめになった。」
彼…劉登蛍は学校に自転車通いしている。
おそらく、松薔薇高校は長い坂を登った所にある為自転車通いしているのは彼ぐらいだろう。
成瀬と蛍は中学からの友達だ。
「そういえば、お前知ってるか?今日転校生が来るらしいぜ。」
「そうなんだ。良く知ってるなー、ナル。」
「イヤ、皆知ってるっての…」
成瀬はため息をつく。
蛍は普段あまりそういう事には無関心だが、それぐらいの事は知っといて欲しかった…と思う成瀬であった。
「ほらほら席着け~転校生だぞー。」
担任の海藤(女性)。何故か男のような口調と性格だが、サッパリしている性格は生徒達には好評らしい。
「んじゃ、入って来~い」
入って来たのは男子だった。半袖のワイシャツから見えている腕はほとんど日焼けしていない。身長は175以上は有りそうだ。
「んじゃ、自己紹介して~」
「………伊華燈 由李………」
緊張……しているようには全く見えない。ただ、彼はそれ以上の事…必要最低限の事しか言わなかった。
「えっと~席は…そうだなー。窓側の一番後ろな。」
「………………」
不思議な奴だな……蛍はそう思った。蛍だけじゃない。クラス全員が伊華燈の事を見ていた。