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聖なる乙女と運命の人  作者: 雨月 雪花
第五章 過去と親友と、全ての始まりの地
74/103

01

 



 ヒナタの村から出発した一行は、行きと同じく森の中で野宿を一回した後に朝早くには森を抜けることが出来た。

 ここからの道順は確認しなければいけなかったために、いつも通りライアンが持っている地図を全員で囲むのだがただ一人、アルだけはその輪から外れてぼんやりと空を見上げている。

 声を掛けるべきかどうか悩みはするが行くこと自体に反対していない彼であったので、今回はエメリヤが地図を手に持っているためにそれを覗き込む。


「どうする? 様々な行き方があると思うが……」

「そうですねぇ……。ここからの道が一番では? 途中に村があるようですし」

「一般的な道はそこかもね。最短距離だと……」

「いや、この道は止めた方がいいだろ。最短距離っつったって人が歩ける道かどうかも分からない」

「……リーナはどうしたい? ……リーナ?」

「え? あ、え、えっと……」


 まずは地図を持っているエメリヤが全員に意見を求めるように聞く。

 見る限り、『聖地』までの道は意外とあるようで悩みはするものの、サーシャはすっと地図上を指でなぞりながら提案する。それに同意するようにレイクは頷きながらも、他の道を指すがヒナタがすぐに拒否する。

 全員の意見を聞きながらライアンは、リーナが決めるべきだろうと思って声を掛けるもリーナの視線はあらぬ方向に向いており。不思議に思ったためにもう一度名前を呼ぶと、はっとしたように慌てて振り返る。

 それだけで話を何も聞いていなかったというのは目に見えて分かるために、仲間達は苦笑を浮かべあった。

 気持ちは分からないでもない。表面上、アルの様子は変わった様子は見せないがふとした時に何か悩んでいる様子が見て取れることがある。

 それを聞いてもはぐらかされるだけなので、今は見ていることしか出来ないのが現状であるが心配なのだろう。

 何せ、ずっと傍に居たアルの様子がおかしいのだから心配にならない方がおかしいというもの。だからか、仲間達の視線がアルの方に向くとさすがに気付いたのか、アルは首を傾げる。


「……どうしたの? 道、決まった?」

「え? あ、その、どの道が一番かなーって話してて」

「うーん……。まぁ、安全第一に行くのが一番なんじゃない? リーナの身に何かあったら意味がないんだし」


 首を傾げたまま、こちらを見ている理由を聞けばリーナは焦って誤魔化すように今の今まで話していたことを言う。

 話を聞くと少し考える仕草を見せたのだがすぐに微笑みながら、自分の意見を述べる。

 いつもと変わらない様子であったためにほっと安堵の表情を見せながらリーナは頷くと、もう一度地図を覗き込む。


「じゃあ、サーシャが言っていた道でいい?」

「ああ、それが一番だろうな」

「ちょっと時間掛かるかも知れないけど……、ま、妥当だよな」


 決めたように頷くと全員に確認を取ると、エメリヤはこくりと頷いて同意し、ヒナタも仕方ないとばかりに頷く。

 他の面々も異論が無い様子だったので『聖地』への道を決めると、早速と言わんばかりに歩き出す。

 歩き出した彼らは思い思いの人と雑談を交わしている様子を目に入れながら、リーナは誰かと話すことはなく、うーん、と首を傾げる。

 皆は聞いたことのあるような場所らしいが、生憎自分は『聖地』という場所を初めて知った。誰かに聞くべきだろうかと思うも、詳しく知っているのは多分アルぐらいしか居ないような気がするがさすがに聞くのは躊躇われる。どうしようと唸り始めると、ぽん、と肩を叩かれたためにそちらに向くとくすくすと笑っているサーシャの姿があった。


「どうしました? 百面相してましたが」

「え……嘘っ!? そんな顔してた?」

「ええ。……それで、何を考えていたんですか?」

「うーん……、『聖地』について? 初めて聞いた場所だったから」

「ああ……、初代『聖なる乙女』の生まれ育った地ですから、観光地として有名ですよ。俺は行ったことはありませんけどね」


 くすくすと笑みを零したまま、首を傾げながら問い掛ければリーナは慌てて両手で顔に触れながら焦ったように聞く。

 こくりと頷いてあっさりと肯定しながら、その理由を聞くとどう答えるべきかと悩みながらも最初に考えていたことを話すと、サーシャは納得したように頷く。

 サーシャの話を聞いて、ふむ、と頷きながらリーナは僅かに首を傾げた。

 初代が生まれた地だから、「歴史の始まりの地」ということなのだろうか。納得出来るような気もするが、腑に落ちない部分もある。

 とは言っても考えても分からないことであったためにリーナはとりあえず考えるのを止めて、サーシャに視線を向ける。


「興味無いの? 観光地なのに」

「それほどありませんねぇ……、観光地と言っても拝むだけのようなものでしょう? あまりそう言うのに縁がなかったもので」

「ふーん?」


 リーナの疑問をあっさりとした感じに自分の考えを述べて答えながらも、最後には苦笑を浮かべた。

 あまり良く分かっていなさそうなリーナの様子に、サーシャは微笑みを浮かべてそれ以上は言わなかったがふと彼女から視線を逸らしてアルへと視線を向ける。

 今、彼はいつも通りに仲間達と笑顔で話している。


 ――『聖剣』と呼ばれる彼にとっては、『聖地』という場所は一体どういう所なのだろう。


 聞いてみたい気もするが、どちらにしろ今自分達が目指している地まで行けば嫌でも知ることになるのだろう。そう思いながらも、サーシャはリーナと話を続けることにしたのだった。


 


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