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聖なる乙女と運命の人  作者: 雨月 雪花
第三章 銃を使う少年とアサシンと、街の危機
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11

 



 作戦を決める、と言っても時間がほとんどないのは分かっているし、状況はほぼ分からない状態と言っても過言ではない。

 情報があまりにも少ない状態でどんな作戦が思い浮かぶのかと言われれば、ありきたりなモノばかりで。


「詳しい話をしてる時間もないし……、何よりどれだけの数がいるのか今の俺じゃ分からない。手分けしよう」

「……構わないが、リーナでなければ倒せないだろう? どうする?」

「倒せなくても退けることぐらいなら僕たちでも出来るだろうし、とりあえずは助けることを優先した方がいいと思う」

「全員、バラバラで散った方がいいの、か?」

「危険かも知れないけどそれが一番効率がいいだろうし、分けると言っても今の俺達のメンバーじゃ、丁度良くは分けられないし」


 アルが一番妥当であろう作戦を口にするとそれには異論はなく、頷いて同意をするものの、最初に浮かぶ問題点をエメリヤが挙げる。その問題点はどう頑張っても解決されるものではないことは分かっているため、レイクが言うと全員が頷いた。

 その後に少々不安げにライアンが確認するように問い掛けると、アルは僅かに顔を顰めさせながらざっと辺りを面々の顔を見てから告げる。

 今現状で戦えると分かっているのは自分達の他には確認出来ていなくて。つまりはリーナ、アル、ライアン、エメリヤ、レイクの五人しか居ないことになる。この街の広さから考えて、全員で固まって動くのはあまりにも非効率的で。

 上手く人を分けるとは言っても、このままでは良くて二手にしか分かれることが出来ない。

 それならばいっそ危険を冒してでも一人ずつに分かれ、出来るだけ広範囲で行動した方がいい。アルの言葉はもっともであったために、ライアンはまだ自分の剣の腕に不安を残すために僅かに顔を俯かせ、それに気付いたエメリヤがぽん、と肩を叩く。


「基礎はほぼ出来ている。後は自分の力量さえ間違わなければ、大丈夫だ」

「……エメリヤさん」

「無理しろなんて誰も言わないし……、出来る限り、あたしが頑張るから! だから、信じて?」

「ああ……」


 エメリヤから勇気づけられるような言葉を掛けられたライアンは顔を上げると、リーナが必死な表情で安心させるように告げるとライアンは小さく頷いた。


 ――出来ないなどと言える状況ではないし、こんな状況に陥った時のために強くなろうと決めたのだ。


 以前よりは強くなっていると信じたいし、この中では一番弱いのは間違えなく自分であるのも理解はしている。ライアンは自分の未熟さを悔しく思いながらも、表情が引き締まったことを確認すれば、リーナが全員の顔を見る。


「無理は禁止! 危険だと思ったらすぐに逃げることを忘れないでね。じゃあ、さっそ……」

「待った」

「……えっ」


 リーナは自分にも言い聞かせるようにそう言葉を紡いでから、早速行動に移ろうとしたその時に後ろから声が掛かる。その聞き覚えのある声にリーナはもちろんのこと、他の面々も驚いたように振り向くとそこにはヒナタの姿があった。


「あ……ヒナタっ!?」

「話は聞かせてもらった。戦う人数は多い方がいいだろ? オレもついてくよ」

「え? あ、え、で、でもっ……!」

「別に足手纏いになるつもりはない」


 リーナが驚いた表情のまま、ヒナタの名前を呼べば彼は真剣な表情のまま当たり前のように申し出る。

 正直言えばその申し出には有難いものがあるが、『タナトス』との戦いには危険が付きものだ。すぐに受け入れることが出来ないのは極々自然なことで、リーナは必死になって何か言おうとするがその言葉を遮るようにヒナタがキッパリと告げると自分の腰にある得物を手に取ると全員に見せるように取り出す。

 ヒナタが取り出した武器にほとんどの人が見覚えがなかったらしく、じっとそれを見つめていたが鍛冶師であるが故に武器には詳しいのだろう。ライアンが驚いたように目を見開かせながら言葉を零す。


「まさか、銃、か……?」

「知ってる奴、いたのか。……そう、銃だよ。オレにはこれがあるし、『タナトス』との戦いならある程度は慣れてるつもり」


 ライアンの零した言葉に、逆にヒナタが驚いた表情を見せたがあっさりとした感じに頷いて肯定をしつつ、元に戻す。

 この世界では一般的には、銃は珍しいとされ扱う者は極々限られた一部の者だ。交易都市であろうが銃が流通することはまずないとされている。

 その銃を持っていることに驚きしかなかったがヒナタは、当たり前のことのように言葉を続けた。

 彼の言った言葉の意味をどう受け取るべきか迷いはするが今は考えている時間さえも惜しいと思ったためにアルはざっと仲間の顔を見る。


「ヒナタも手伝ってくれるなら二人一組で行動できるし、かなり安全に行動できるけど……誰と誰が組もうか」

「あたしはアルだよね?」

「まぁ、そうなるかな……? 後の四人で、だけど……」


 危険が減るのであればその方法を取るべきだと思ったためにアルが提案をするのだが、問題はどういう風に組み合わせるか、だった。

 リーナは、うーん、と考えながらまずは分かっている自分のことを口にすればアルはこくりと頷いて肯定しつつ、残りの四人へと視線を向ける。剣を扱うライアンとエメリヤは分けるとして、魔導を扱うレイクと、銃を扱うヒナタ。

 とは言ってもライアンとヒナタは今が初対面であるのだから、それを考えればエメリヤとヒナタが組むのが妥当だ。

 それに最初に気付いたエメリヤが口を開こうとしたのだが、その前にヒナタが行動に移る。エメリヤ、レイク、ライアンの順に見ていった彼は一人を指差した。


「こいつでいいよ、オレ」

「……俺、か……?」

「そっちの二人よりは一緒に戦うことも考えたら、年近い方がオレとしては楽だし」

「いや、俺は戦いにはあまり慣れてな……」

「それに銃、知ってる奴の方が説明しなくて良いし。……決定でいいだろ?」


 ヒナタが指差したのは、予想もしなかったライアンで。指差された本人が一番驚いているらしく、思わず自分を指差して確認を取ればヒナタは肯定するように頷きながら理由を説明する。

 その理由には納得出来る部分がない訳ではないが、言っておくべきことを口にしようとするライアンの言葉は聞こえていないのか続けるようにヒナタがキッパリと告げれば残りの面々に確認するように聞く。


「私は構わないが……、大丈夫か……?」

「……まぁ、本人が大丈夫だって言ってるから大丈夫だと思うけど。無理だけはしないようにね」


 不安が拭い去れないのかエメリヤが心配げな視線を向けつつ、レイクは苦笑を浮かべて反対する意見も思い浮かばなかったために了承するように頷けば最後に注意するように言葉を掛けるとヒナタは僅かに顔を顰める。


「それぐらい分かってる。……オレらは先に行こう」

「え? あ、ああ。……そ、それじゃあ、また後で」


 子供扱いされたのが癪に障ったのか少々不機嫌になりながら言葉を返せば、ライアンをちらりと見て一言声を掛けると歩き出す。ライアンは自分の意志が関係なしに進んでいくために呆けることしか出来なかったのだが声を掛けられればはっとしたように頷くと、仲間達にそう声を掛ければ歩き出したヒナタの後を慌てたように追う。

 呆然と二人が去っていく様子を見ながら、最初に溜息を漏らしたのはエメリヤだった。


「私たちも行くか、レイク。無駄な時間を使う余裕は残っていないだろうからな」

「そうだね。……じゃあ、僕たちも行くけど。リーナとアルも、気を付けてね?」

「うん。二人もね!」


 エメリヤがレイクに対して声を掛けながら、街の様子を目を細めて見ながらぽつりと呟くと歩き出す。レイクも同意するように頷いてから歩き出そうとしたが、ふと思い出したようにリーナとアルに対して声を掛けるとエメリヤと並ぶように歩き出した。

 その二人の後ろ姿をリーナがじっと見ていたものの、すぐに無言でアルへと視線を向ける。

 何が言いたいのか伝わったのかアルは微笑みながら小さく頷けば、それだけで十分だったのか二人もまた歩き出した、というか走り出した。――闇迫る街の中を。


 


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