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聖なる乙女と運命の人  作者: 雨月 雪花
第二章 魔導師と恋心と、神隠し
31/103

08

 



 一旦騒動が収まったものの、また来ないとも限らないためにレイクは、店内にいた客達を帰して店の扉に「閉店」の札を掛ける。

 先程騒動を止めたリーナたちは店に残っており、思い思いの席に座っている。

 扉に札を掛け終わったレイクは店内へと戻ってきて、リーナ達にお茶を淹れて配った後に向かい合うように座る。


「えーっと……、さっき店に来てくれた人達だよね? 確か」

「あ、うん。美味しかったです」

「なら良かった」


 向き合うように座ったレイクは、何を話すべきかと思いつつも見覚えのある人達の顔にふと確認するように聞く。

 リーナはこくこくと何度の頷いて肯定をしながら感想を述べると、レイクは微笑みを浮かべて嬉しそうに告げる。

 その後に、少しだけ間が空いてしまうものの、黙っていても仕方ないと思ったのかレイクは小さく息を吐いてから口を開く。


「とりあえず、自己紹介をした方が良さそうだね。……僕はレイク。レイク=ケプラー。知っての通り、この店をやってる」

「あ、あたしはリーナ。で、えーっと旅を一緒にしているアル、ライアン、エメリヤ」

「よろしくね。……さっきはありがとう、エメリヤさん。騒ぎが大きくならずに済んだよ」

「いや……私が勝手にやったことだ」

「それでも助かったのは確かだから」


 ざっと面々を見回してからレイクは簡単に自己紹介をすると、リーナも返すようにまず自分が名乗った後に残りの三人を紹介するように名前を告げていく。

 順々に見ながら顔と名前を一致させると、まずは最初に言うべきことをエメリヤに告げると僅かに苦笑を浮かべながら緩く首を横に振る。

 エメリヤの言葉を聞きつつもレイクはもう一度礼を告げれば、受け取るようにエメリヤは小さく頷いた。


「……先程の男のような存在は、良く来るのか?」

「まぁ、良くとは言わないけど……最近はちょっと多くなってきたかな」


 それから話題を探すようにふと気になったことをライアンが問い掛ければ、レイクは困ったような表情を浮かべながら溜息交じりに肯定をする。


「心当たりとかはあるの?」

「うーん……、あると言えばあるんだけどね。……旅人の君達は知ってるかな? 今、この街に流れている噂のこと」

「あ! 「神隠し」の噂?」

「そう、それ。どうにも、「神隠し」の被害に遭った人に関わりがある人達が、僕を疑ってるみたいでね」


 そんなレイクの様子を見ていたアルは少し考える仕草を見せつつも、確認を取るように聞くとレイクは少しだけ答えることに躊躇う。

 だがここで隠しても仕方ないと思ったのかリーナ達に視線を向けると、まずは、と言わんばかりに確認を取ればリーナはすぐに気付いたように声を上げる。

 正解、とばかりに頷いて肯定をしたレイクは苦笑を浮かべながらも、どこか疲れたように言葉を続ける。

 何が原因か分からない状態で自分が疑われるのは理不尽極まりないと思うのだが、疑われても仕方ないと言う部分があるのも確かだった。


「……疑われる理由はあるんだろうな……」

「まぁ、共通点らしきものがあるんじゃない? 多分。さっきの人は、妹とか言ってたし……」

「ああ……、そう言えば被害に遭っているのはほとんど女性という話だったな。……それも関係あるのか? レイク?」


 レイクの話を聞いてから考えるようにライアンがぽつりと呟きを漏らせば、その呟きに答えるようにアルはうーん、と首を傾げながら思い浮かんだことを口にする。

 その言葉を聞いたエメリヤはと言うと、ふと聞いた話を思い出せば問い掛けるようにレイクに視線を向ければ、僅かに苦笑を返した。


 ――これだけ知ってるというのであれば、多分彼らはこの噂の真相を確かめに来た、という感じなのだろう。


 ただの好奇心なのか、普通に正義感が強いのか、はたまた別の理由か。

 レイクは理由を考えようとするものの、こればかりは実際に聞いてみなければ分からないがそこまで気になるという訳でもなかったので、考えるのを一旦止めると問われたことを答えようか少しだけ迷う。

 とは言ってもここで言わなくても彼らならば理由など簡単に聞きだしてしまいそうな気がしたので、溜息混じりに答えを返す。


「被害に遭った女の子たちが僕の知り合い……というよりは、僕に好意を持っていてくれた子たちばかりみたい」

「…………」

「おー……、レイクって人気者なんだね! でも、そっか。レイクを好きな子ばっかり居なくなっちゃったら、疑われるのも無理ないよねー」


 溜息混じりに言われたレイクの言葉に男性陣はぴたりと一瞬だけ止まるのだが、はぁ、と思い思いに溜息を零す。

 そんなことを気にしている様子もないリーナはどこか納得したようにじっとレイクを見ながら、理由を知れば何度か頷く。

 つまりはだ。どういう理由かは分からないがレイクに好意を寄せる女性ばかりが「神隠し」の被害に遭っている。

 レイク自身はそれに関わりを持っている様子はないし、逆に迷惑がっているような気もする。

 仕事の妨害をされるのだが当たり前と言えば当たり前なのかも知れないが、うーん、と考え始める。

 困っている人がいて、大切な人が消えて悲しんでいる人がいる。彼らのために自分が出来ることなど限られているのかも知れないがそれでも見て見ぬ振りは出来ないと思ったのか、リーナは力強く頷いた。


「よしっ! 「神隠し」の真相究明と被害に遭った女の子達を探そう!」


 決定事項、とばかりにリーナが言い切った言葉を聞いたアルとエメリヤは、はぁ、と深々と溜息を吐く。

 ライアンは分かったと言わんばかりに律儀に頷き、レイクは少々驚いたように目を瞬かせるのだった。


 


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