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作者: 刀田 兎

沸き立つにおいには二つある。

一つは、鼻孔をくすぐる匂いだ。

例えば、艷やな薔薇の豊潤な香りや紫陽花の爽やかな香り、きつい汗ばんだ脇の香もここの枠組みに入るだろう。

そして、二つ目は、感覚的なものではなく、もう少し抽象的な匂いである。

言い換えるならば、英語読みだとオーラ。ドイツ語ではアウラ。日本語では雰囲気と呼ばれるものである。

私は今、この小高い丘を登り、あの一本の桜に向かっていた。

白々とした陽を浴びて、桃色の花弁は光り、地面に面白い影を作っている。パチンコ桜の名の通り、その桜は感心するほどに綺麗な二股を保っていた。

私は逸る気持ちを抑えながら、一歩一歩大切に進むことにした。

踏みしめる青々とした芝の下に、柔土が詰まっていることが 感じられ、私は無意識に嬉しくなって、口角が引き攣っていることに気が付いた。

見上げると、『匂い』を放つ満開の桜。

梢の隙間から太陽の光が強く差し込んでいる。

「今年も…………来たぞ」

おい重なった緑の枝葉の季節には、小学生時代の友人とともに木登りをし、高校時代には現在の妻に初めて想いを告げた。たまには意味もなく一人で来て、厚く丈夫な幹に背を預けたり、願いをこめるようにして柏手を叩いたこともあった。そこには私の大切な記憶が詰まっている気がするのである。

また今年も私の記憶を刻んでくれるだろうか。

そうして、私は今年も幹に触れるのであった。





すみません、適当です

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