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金色の御子伝説  作者: 世捨人
旅立ち編
6/50

5話

翌朝日の出少し前にアーサーは目覚めた。


「うう~ん……ここは?……」


周囲をキョロキョロとうかがうと酒瓶を抱えた男達がアチコチに倒れていた。


「あっそうか昨日の夜は……」


「アーサー君起きたようね。遅くまで起きてたようだけど大丈夫?」


「はい。大丈夫です。お世話かけました」


ペコリと頭をさげた。


「アーサー君 手持ちが白金貨と『魔力石』じゃ旅するのに不便でしょ。これ持っていきなさい」


と少しの銀貨と銅貨を差し出した。


「えっ!こんなことしてもらう訳には……」


「いいのよ。それと隣町にある組合ギルドでは両替もできるから寄ってみるといいわ」


「じゃあ色々と教えてもらったり親切にしてもらったお礼にこれを受け取ってください」


と小さな『魔力石』を手渡した。


「これじゃあ こっちが貰い過ぎになっちゃうわ!!」


「これなら沢山持ってますから大丈夫ですよ。皆さんが困った時にでも使ってください」


と言い残しシロと一緒に駆け出した。


「もうっ!!不思議な子だったわね~」


と笑顔で走り去ったアーサーを見送った。




街道をはずれ森の中を真っ直ぐ進んだアーサーは昼過ぎには町が見えるところまで来ていた。


「あれがエレナさんが言ってた町みたいだな。おっきいなぁ~」


ワクワクする気持ちを抑えながらシロを伴って町の入り口までたどり着いた。




「おいっ 旅のものか?身分証がないと町には入れんぞ」


横柄な態度で番兵が声をかけてきた。


アーサーは昨日作ったばっかりの組合ギルドの登録証を差し出した。


番兵は登録証の内容を確かめジロリとシロを見た。


「本当に魔狼の子なのか?」


「そうですよ」


「人に危害は加えないのか?」


「大丈夫です。子犬とかわりませんよ。ちょっとだけ動きが早いのと力が強いだけです。まだ子供ですから」


と笑いながら答えた。


「それなら通って良し!」


「すいませんが、この町の組合ギルドって何処にあるか教えてもらえませんか?」


「このまま真っ直ぐ大きな道をいけば右側にあるぞ。組合ギルドの紋章が看板にあるからすぐわかるはずだ」


「ありがとうございます」


ペコリと頭を下げ教えられた道を歩きだした。



「ほっ 魔狼って聞いたときにはチビルかと思ったぜ。意外にかわいいもんだな」


と番兵は呟いた。





今まで見たことがないほどの人間が行きかう通りをアーサーとシロは歩いていた。


<アーサー さっきからジロジロ見られてるな>


「うん 僕たちってそんなに変なのかな?」


通りを歩く人々はアーサーを見かけると女性達はポッと頬を染め見とれていたり、男達は悔しそうに唇をかみ締めたり項垂れたりしているのだ。


しばらく歩いて組合ギルドを見つけ中に入って行った。


入って左側には食堂兼酒場、右側には種類別に依頼書の張られた掲示板があった。


何故か全員の注目を浴びる中、正面のカウンターに向かって歩いて行った。


「いらっしゃいませ。今日はどんなご用ですか?」


受付のお姉さんは事務的に話しかけたが、その頬は赤みがさしていた。


「えっと……これを買い取ってほしいんですが……」


と懐から『魔力石』をひとつ取り出した。


「では2つ向こうの受付が買取専門の窓口になっていますので、そちらで交渉してください」


と片方の手で別の受付を指した。


教えられた受付に行き


「えっと……これを買い取ってほしいんですが……」


「いらっしゃいませ。 それでは組合ギルドの登録証を拝見させてください」


懐から登録証をとりだし受付の女性に手渡した。


「アーサー様ですね。 あれっ? これって昨日エレナ姉さんが申請してた……」


「エレナさん知ってるんですか?」


「彼女は2年前までここで働いてたのよ。っと無駄話の前に『魔力石』を鑑定に回させてね」


「あっ はい」


と手渡した。


受付嬢は奥に座ってる鑑定士らしき人に『魔力石』を渡し、すぐにもどってきた。


「鑑定結果まで、お話していいかしら?」


「いいですよ」


「エレナ姉さんは2年前に事件で旦那さんと息子さんを一緒に亡くしちゃってパイク村に帰っちゃったのよ」


「そんな風には見えなかったですよ。明るく村の人達の面倒をみてたようでしたよ」


「エレナ姉さんらしいわね。自分がどんなに辛くっても顔にださないで明るくして強い人なのよね。旦那さんも精霊術を使った治癒師でね面倒見の良い人だったんだよ」


「流行病かなんかで?」


「いえ それがね、患者さんがいきなり切りつけて、そばにいた息子さんと一緒に……」


「なんかトラブルでもあったんですかね?」


「温厚な人だったから、それは無いと思うわ。ただ犯人がね『精霊なんて無力だ!!』って叫んで自害したらしいのよ」


「なんか不思議な話ですね」


アーサーは自身の身の上から他人事とは思えなかった。




アーサーの足元で『伏せ』をしているシロを狩人の連れた猟犬達がジロジロみていた。


<鬱陶しいな>


シロがキッっと猟犬達を睨んだら、猟犬達は尻尾を下げ震えながら目をそらした。



「鑑定の結果がきたわよ。随分上質だったみたいね。金貨12枚で買取できるそうよ?」


「それでお願いします」


「じゃあ買取書にサインしてね。お金用意してくるから」


「はい。できれば金貨2枚分は小さいお金でお願いできますか?」


「わかったわ。金貨じゃ不便だものね」


買取書と引き換えにお金を受け取った。


「そんな大金持ち歩くの危ないわよ?」


「僕 空間魔術使えるんで問題ないですよ」


と笑いながら答えた。


その笑顔に受付嬢はカチンと固まってしまった。


「お~~い おね~~さ~~ん」


「あっ!!」


と現実に戻ってきた受付嬢の顔は真っ赤になっていた。


「僕 変ですか? さっきも通りを歩いてたらみんながジロジロと……」


「い・いや あんまりにも綺麗だから……みとれちゃって……」


とハニカミながら答えた。



用事を終えたアーサーはすぐに町を出て街道へ足を向けた。

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