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金色の御子伝説  作者: 世捨人
旅立ち編
5/50

4話

エレナが厨房に消えると男達が話しかけてきた。


「小僧 ダグは『森の掟』のなにを破ったんだ?」


「『捕食目的以外で子供を害してはならない』ってやつですね」


「だけど俺達も売るために小鹿や猪の子を狩ったりするぞ?」


「その獲物は結局食べちゃうでしょ?」


「まあそうだな」


「それに比べてダグさんの攫った子狼は食べる為じゃないでしょ?」


「そうか 子狼なんて食べないもんな」


全員が納得した。



「『森の掟』なんて真剣に考えたことなかったが怖いもんだなぁ~」


「僕も裁きを受けた人は初めて見ました」


「じゃあ『水場で狩りをしてはいけない』ってやつもダメなんだな」


「でもオラは水場で仕留めたことあるぞ?」


「それは他で狩りを始めて偶々仕留めた場所が水場だったんじゃないですか?」


「そうだども……」


「それは大丈夫ですよ。水場で水を飲んで寛いでいる獲物を狩った場合だけですから」


「へえ~気を付けないといけないなぁ~」


「でも小僧はなんで子狼を連れてるのに裁かれないんだ?」


「僕は『魔狼の森』でシロと一緒に育ったからシロが自分から付いてきたんですよ。シロの親も僕のことを自分の子供だと思って一緒にいるのが当たり前って思ってるみたいです」


「そりゃすごいな。小僧は魔狼が怖くないのかい?」


「赤ん坊の時から一緒ですから怖くないですよ。一緒に狩りをしたりしてましたよ。何度か狂熊マッドベアを狩ったりしましたよ」


「すげぇ~」


狂熊マッドベアと戦う魔狼はかっこいいですよ!目にも留まらぬスピードで……」


目をキラキラさせてアーサーは狩りの様子を語った。


「狂獣を倒したら『魔力石』ってのが手に入るって本当かい?」


「う~ん 綺麗な石のことかな?」


「そうそう すごく貴重で高く売れるらしいぞ」


「それなら僕持ってますよ」


アーサーは懐から小さな皮袋をとりだした。


「これがその綺麗な石ですよ」


とテーブルの上に出してみせた。


「はじめて見た……綺麗だな……これ一つで1年は十分食える……」


全員呆けた顔で『魔力石』にみとれていた。


『魔力石』は狩人なら誰でも一度は自分で手に入れてみたい憧れの石なのだ。





「さあっ皆ボケッとしてないでテーブルを片付けてっ 料理が置けないじゃない」


アーサーは『魔力石』を皮袋に入れ懐にしまい、他の男達は自分の荷物を床におろした。


「私が腕によりをかけて作ったんだから不味いって言わせないよ!!」


とエレナは大量の料理を並べはじめた。


「しかし小僧はとんでもない金持ちだな。『魔力石』一つで金貨10枚以上だぞ」


「あんた達っ人の懐を羨ましがってるん暇があるんなら、自分で稼ぐことを考えなっ」


とエレナは一喝した。




みんなグラスを片手に乾杯をしようとした時、フラフラと憔悴しきったダグが入ってきた。


「お~いダグ大丈夫か?」


「俺は……もうダメだ……何度やっても森には入れねぇ」


「まあ自分でやったことだからなぁ~」


「どうやって暮らしていったらいいんだ? 教えてくれよ~~~」


「まあ腕っ節は強いんだから農業の手伝いとか大工の手伝いとか村の皆が助けてくれるさ」


「そうそう それがこのパイク村の良いとこじゃないか」


「でも もう欲に目をくらまされるんじゃないぞ?次やったら誰も助けちゃくれないぞ!それだけは覚えとけよ」


「わかったよ。はぁ~自分が情けないよ」


「ダグっ ゴチャゴチャ言う前にすることがあるんじゃないの?」


鬼のような形相でエレナは言い放った。


「な・なんだよエレナ……」


「一番最初にアーサー君にお詫びとお礼を言うのが筋だって言ってんだよっ わかんないのかい?」


「あっああ そうだな。小僧悪かったな。そして助けてくれてありがとう。感謝してる」


       パコーン


フライパンを握り締めたエレナがいきなりダグの頭を殴った。


「なにが偉そうに『小僧』だよっ だからお前は馬鹿だって言われるんだ」


「まあまあエレナさん 僕は気にしてないですから……ダグさんもこれから頑張ってくださいね」


「お おう」


ダグは頭を押さえ涙目でアーサーに答えた。


「おいっ そんなとこに突っ立ってないで一緒に飯くうぞっ かんぱぁ~い!!」


「「かんぱぁぁぁい」」


アーサーは初めて目にする料理に早速手をのばしてみた。


「おいしいっ すごくおいしいですっ エレナさん すごいっ」


リスのように頬を膨らませて料理を頬張るアーサーを見てエレナは笑顔を向けた。


「そんなに喜んでもらえると、作った甲斐があるわ」



この日深夜まで宴会は続くのであった。

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