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金色の御子伝説  作者: 世捨人
旅立ち編
3/50

2話

『神狼の森』を出て南西に隣接する『魔狼の森』に沿って続く街道に出たのは3日後のことであった。


<アーサー どこに行くんだ?>


「う~~ん とりあえず父上が武術をならったって人に会いに行ってみようかと思ってるんだ」


<そうか その人はどこに行けば会えるんだ?>


「さあ?」


<……>


「誰か知ってるかい?」


独り言のようにアーサーがつぶやくと緑色の髪をした美女が現れた。


「アーサー、そりゃランバート・アーノルド・レジアス公爵って人だよ」


「ふ~ん どこに行けば会えるのかな?」


「前は王都にいたんだけど、10年前に家督を息子に譲って、今は領地に居るんじゃないかな」


「へえ~ よく知ってるね」


「風の噂ってやつよ。アーサーに関わることなら何でも知ってるよ。 例えば =^-^=うふっ♪」


「えっ!?何? 何しってるの?」


「ひ・み・つ」


「……」



「領地って何処なのさ」


「このまま街道を西へ10日くらい行ったところに「武術の里」と呼ばれるロレンツォっていうとこだよ。そこに公爵家の城があるよ」


「じゃあ そのロレンツォって町に行けばいいんだね」


「うん。でも領地への出入りは身分を証明する物がいるよ」


「えっ!?そうなの?僕何も持ってないよ」


「じゃあ、近くの町の組合(ギルド)に立ち寄って登録すればいいんじゃない?

登録証っての貰えるから、それを身分証明に使えばいいのよ」


「誰でも登録できるの?」


「問題ないはずよ。お尋ね者以外はね」


「ありがとう、シルフ。まずは組合(ギルド)ってとこに行ってみるよ」




のんびりと街道を歩いていると森から何かが飛び出してきた。


   ガサガサ バキッ!

   GURURURURU……


背中に籠を背負い剣を構えた男に向かって、黒い狼が威嚇している。


「シロ あれは魔狼だよね」


<うむ なにやらかなり怒ってるようだな>


「森の外まで追いかけてくるって相当な怒ってるね」


この世界での生き物はすべて魔力を持っている。


なかでも特に魔力の強いものを「魔獣」という。


狼の場合は「魔狼」熊の場合は「魔熊」などと獣の名称の前に「魔」を付けて呼ぶことが一般的である。


その強さは通常の獣の数倍と言われている。


籠を背負った男は剣を振り回し魔狼を牽制してはいるものの、顔面は蒼白で完全に魔狼の殺気に呑まれていた。


「おじさ~ん どうしたの?」


「うるさいっ ガキは離れてろっ」


<アーサー あの籠から子狼の臭いがするぞ>


アーサーは、はぁ~と溜め息を吐いた。


「おじさ~ん 早く子狼返さないと殺されちゃうよ~」


「やかましいっ 魔狼の子は高く売れるんだっ」


はぁ~ともう一度溜め息を吐き


「シロ!」


<仕方ないな>


アーサーの横からシロの姿が消え、ズドッという音とともに男の鳩尾に白い塊がぶつかり男は意識を手放した。


シロはフンッと鼻をならし、男の背負った籠に頭を突っ込み子狼を引っ張りだすと魔狼のほうを見て頷いた。


魔狼はゆっくり近づき子狼の無事を確かめると、シロに感謝するように顔を嘗め回し子狼を咥えて森に帰って行った。


騒ぎを聞きつけて駆けつけた男達にアーサーが事情を説明していると、男が目をさましたようだった。(もちろんシロが気絶させたことは内緒である)


「うう~ん 俺は生きてるのか?いきなり意識がなくなったんだが・・・・・・あっ!!」


男は自分の背負っていた籠を見て子狼がいないことに気づいた。


「おい小僧っ 子狼はどうした?」


「魔狼が連れて帰ったよ」


「なんで黙ってみてたんだっ 高く売れるんだぞっ どうしてくれるんだ」


「僕には関係ないよ」


「小僧っ その白い子狼を渡せっ 俺が高く売ってきてやる 分け前はやるぞ」


「やだよ」


「当分遊んで暮らせるくらいの金だぞ」


近くで様子を見ていた男が呆れたように


「お前なぁ~命を助けてもらった感謝をするどころか野盗みたいに脅してどうすんだっ」


「なにをっ うるせぇっ」


「そんなに金がほしいなら自分ひとりで誰にも迷惑をかけないようにするんだな」


「おおっ 次はうまく親狼に気づかれないようにやってやるさ」


「おじさん 次は無いと思うよ」


周囲の男達も一斉にアーサーにふりむいた。


「おじさん達 狩人なら森の掟知ってるでしょ」


「あんな誰が決めたかもわかんねえような掟なんか守ってられるかよっ」


「迷信じゃないのか?」


「森の掟を決めたのは『生命の女神』だよ。信じれないならそれでも良いけどね。それに森に入ろうとすれば直ぐにわかるしさ」


「そうなのか?」


「そんなのデマに決まってるっ」


そう叫ぶと籠を背負ってた男は森に向かって歩いて行った。


だが男はいつまでたっても森に入れない。


「どういうことだ?」


「それが森の裁きだね」


「もう森に入れないのか?」


「心の底から改心して女神が受け入れれば入れるようになると言われてるよ。子狼を自分から返していれば裁きを受けることもなかったんだろうけどね」


「そうか。迷信じゃなかったんだ」


籠を背負った男を哀れんだ目でみながら男達は口々に神への畏怖の言葉を呟いていた。


「ところで小僧は何処に行くんだい?」


「とりあえず組合ギルドってところに行って登録したいんだけど、何処にあるか知ってますか?」


「それなら小さいけど俺たちの村にもあるぞ。案内してやろうか?」


「助かります」


「いや いいってことよ。あんな奴でも助けてもらったお礼をしなきゃな」


「お礼を言われるようなことはしてないですよ。アハハ」


「じゃあ あいつはほっといて行こうか」


アーサーは男達に連れられて村にむかった。

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