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金色の御子伝説  作者: 世捨人
レジアス領編
14/50

5話

夜明け前組合ギルド裏にある訓練場で、アーサーは日課の鍛錬をしていた。


柔軟でしっかり身体をほぐし、体術の基本型を繰り返した後シロを相手に自由組手


縦横無尽に駆け回るシロの攻撃を流れるような動作で受け流していき、今まで閉じていた目を開くとスッと手を伸ばしてシロの首を掴んで動きを止めた。


ふぅ~と息を吐いて緊張を解いた。




「小僧 すさまじいな」


昨日食堂で会った男が声をかけてきた。


「そうですか?基礎練習だけだったんですけどね」


「目を閉じてあれだけの攻撃をかわせるなんて、並の技量じゃできねえぞ?」


「僕の住んでた森じゃ、気配だけでかわせるようにならないと魔獣に殺られちゃいますから必死で覚えました」


「まさに命がけだな ワハハ……そんな小僧に喧嘩売った馬鹿貴族は不幸だったな ギャハハ」


「……今日はいよいよ入隊試験ですね。がんばってくださいね 応援してますから」


「ありがとよ しかし小僧の体術見てると自信なくすぞ」


「あはははは そんなこと言ってると落ちちゃいますよ」


「それもそうだな。精一杯がんばるさ」


と男も鍛錬を始めた。





アーサーは朝食の後、試験会場に来て受付を見ていた。


(申し込みの人でいっぱいだなぁ~ どうしようかなぁ~)


しばらくすると「おや!?君は昨日の?」と通りかかった衛士が声をかけてきた。


「おはようございます」


「おはよう こんな所で何をしてるんだい?」


「昨日お姫様に受付に来いって言われたんですけど、人が多くて……」


「そうか んじゃついておいで」


と受付に近づき受付の衛士と何か話した後


「観戦の席が用意してあるから案内するよ」


と観客席入り口とは違う方向に向かって歩きだした。





「あれ?観客席はあっちじゃないんですか?」


「あっちの席からじゃ遠くてよく見えんからな」


と微笑しながら歩き進んで行った。


建物の中に入りひとつの扉の前にたどり着き、扉の両脇に立っている衛士に向かって


「アーサー殿をご案内してきた」


と声をかけた。


「お待ちしておりました」


と扉脇の衛士はアーサーに向かって頭を下げ扉を開け中に入るよう促した。


部屋の中にはフカフカの絨毯が敷かれ、豪華な椅子が並んでいた。


正面の窓からは試合会場が間近に見え、その向こうには入隊試験の様子が一望できるようになっていた。


「おはよう アーサー君」


「おはようございます。本日は席をご用意いただき、ありがとうございます。

私のような者がこのような場所に入ってよろしいのですか?」


「いいのよ 気にしないで気軽にしてなさい」


とフローリアは自分の隣の席に座るよう促した。


「失礼します」


「堅苦しいわねぇ~ 気軽にしなさいって言ったでしょ」


と少し頬をふくらませて言った。


後ろに控えていた侍女風の少女が笑いながら


「姫様は誰にもこんな感じなの。遠慮なさらないで寛いでください」


「はい わかりました。しかし、こいつまで部屋に入れていいんですか?」


とチラリとシロを見た。


「昨日領民を守ってくれたのは、その子も一緒でしょ?それならその子も恩人いや恩狼ってことになるから大丈夫よ」


「ありがとうございます」


「その子に触っても良い?」


「はい 大丈夫ですよ。名前はシロバンテイン、僕はシロって呼んでます」


とシロを抱き上げフローリアに近づけた。


侍女風の少女も寄ってきて、フローリアと一緒にキャアキャア言いながらシロを撫でてみたり抱いてみたりと大騒ぎした。


「姫様 それにしてもこの子の魔力は凄いですわ」


「そうなの?」


「普通の魔狼の数倍はありそうです」


侍女はアーサーに視線を送った。


「シロは『魔狼の森』のボスの子供なんです」


「「ええっ!?」」


「シロの親は僕の乳母みたいなもんですから、シロとは兄弟みたいなもんですね」


「じゃあ昨日馬鹿息子に言った『魔狼の森』の一族がって話は冗談じゃなかったのね」


「そんなことで冗談言いませんよ。

『魔狼の森』の魔狼のほとんどは『神狼エルザ』の眷属ですから、一貴族くらいじゃ戦いになりませんよ」


「じゃあシロ君は『魔狼の森』の王子さま?」


「そうなりますね」


へぇ~と言いながら、またシロを抱きしめて撫で回していた。





話をしているうちに別の侍女がお茶を用意してくれた。(シロにはミルク)


「後でお爺様がアーサー君に会いたいって言ってたけど、良いかしら?」


「はい 僕もお会いしたいと思っていました」


「お爺様のこと知ってるの?」


「父は子供の頃からランバート様に武術を習ってたらしいです」


「へえ、そうなの」


「ロバート様とも仲が良かったそうですよ」


「お父様とも?」


「ええ、そう聞いてます」


「お父上は一緒にいらっしゃらなかったの?」


「僕が生まれてすぐに両親共他界しちゃったので……」


「ごめんなさい、嫌なこと言わせちゃったわね」


「いえ、別にいいですよ。気にしないでください」


「お父上の話をしたらお爺様も驚きそうね。

お爺様はしばらく入隊試験を見たり試合の審判をしてからこちらに来るから、驚く顔を楽しみにしてようね」


と悪戯っぽく微笑んだ。


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