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金色の御子伝説  作者: 世捨人
レジアス領編
12/50

3話

露店の並ぶ町並みを、もの珍しそうに見ながら歩いていた。

1軒の小物屋に立ち寄ると皮紐を1本買い、腰まで伸びた髪を首の後ろでひと括りにして歩きはじめた。


<アーサー 急に髪なんて括ってどうしたんだ?>


「髪を括ってる人を見て楽そうだなぁ~って思っただけだよ」


<アーサー 人前で俺に話しかけるのは念話のほうが良いぞ。人から見たら可哀想な子にしかみえないぞ>


<あっそうかそれで変な目で見られるのか!?>


珍しいお菓子を買ってみたり、武器屋を覗いて自分の身長ほどもある剣を見て驚いたりと散策を楽しんだ。


そんなアーサー達を見てボーっとしていた女の子が路地から談笑しながら出てきた3人組の男達にぶつかり転んでしまった。


「あいたた……」


三人組の中で一番豪華そうな服を着た少年が大声を上げた。


「こらっ 人にぶつかっておいて謝罪もないのかっ!!」


「何言ってんのよ あんた達がぶつかって来たんじゃないっ」


「平民のくせに貴族に対する口の聞き方もしらんようだな!!」


「ぶつかんのに平民も貴族も関係ないわっ ぶつかってきた方が悪い」


「おいっ この生意気な小娘をかたずけろっ!!」


少年は、後ろに控えていた二人に命令すると大柄な男が剣を抜きいきなり切りかかった。


   きゃあああぁぁぁぁ


   ガキーーーーーン


大男の剣は空をきり地面にぶつかっていた。



「君 大丈夫かい?」


と女の子を抱きかかえアーサーが問いかけた。


「は・はい」


アーサーは女の子を降ろし去るように促して、男達を睨み付けた。


「こんな町中で剣を抜き、丸腰の子供に切りつけるとはどういうつもりだ」


「この町の者は、どいつも口の聞き方を知らぬようだな かまわんっ やってしまえ!!」


大男はアーサーに向かって剣をふりおろしたが、アーサーは相手の懐にもぐりこんで大男の勢いを利用して投げ飛ばした。


  ズシーーーーン


大男は自分の勢いと体重で『ぐえっ』と蛙を押しつぶしたような音を漏らして気を失った。


フードを被ったもう一人の男が右手をアーサーに向けブツブツと呟いたとたん火球が飛んできた。


「シロっ はじきかえせ!!」


アーサーの前で身構えていたシロの前に透明な幕のようなものができ、火球をフードの男にはじき返した。


フードの男は自分で放った火球に吹き飛ばされ壁に激突し動かなくなった。


「な・なっ……」


「こんな人が多いところで剣を抜くことも信じられないが、魔術まで使うなんて……正気じゃないな」


アーサーは冷たい視線を残った男に向けた。


「俺に歯向かう者を倒す為なら平民などいくら死んでもかまわんさ」


「余程頭の悪い馬鹿貴族のようだね」


「貴様 我がバーニング男爵家を愚弄するかっ!!」


「バーニング?隣の領主だったっけ?」


「そうだ おそれいったか!!」


「国の決めた税を無視して重税を課してる馬鹿領主だろ?」


「なにをっ 俺が直々に殺してやるっ!!」


剣を抜き、かなりスピードで心臓めがけ突きをはなった。


   バキッ!!!


アーサーの拳が男の顔面に突き刺さっていた。



「君も貴族の子息なら、よく覚えておきなさい。

貴族とは領民を守ることと引き換えに地位を与えられてるんだ。

領民を苦しめるような領主は最早貴族の資格すらない!」


鼻血を流し口からも血を流した男爵の息子は


「ふんっ 平民に貴族のあり方を説教される覚えはない。

俺は公爵令嬢と結婚してこの地の領主になる身だ。

お前の一族を探し出して、皆殺しにしてやるっ!!」


「僕はこの領地の人間じゃないよ。

『魔狼の森』にくれば僕やシロの一族が相手にしてあげるよ。

魔狼の群れを相手に戦う気があるならいつでも相手になるよ」




「それは恐ろしい話ね。

どこの馬鹿かとおもったらバーニング男爵家の者なのね。」


人垣からでてきた少女が話に割り込んできた。


「今度は小娘まで俺を侮辱するかっ!!」


再び剣を握り締め、今度は少女に剣を向けた。


「私はこんな馬鹿を婿にするほど世間知らずじゃないわ。

私の領民に害をなし、私に剣を向けるとは我がレジアス公爵家に宣戦布告したと思って良いのですね?

早速お爺様から男爵家に使いをだしてもらいましょう」


淡々としかし底冷えのする声で言い放った。


「ちょ・ちょっと待っていただけませんか。姫様とは露知らずご無礼しました」


とあわてて臣下の礼をとった。


「人の領地で無体を働いて『ご無礼しました』ですむとお思い?」


「すぐに父上からもお詫びのご挨拶に伺うようにしますで、ご容赦ください」


土下座してひれ伏した。


少女は一緒に来ていた衛士達にむかい


「この者達を領地の外に放り出してきなさい!!」


と声をかけると衛士達はすぐに男達を連行していった。



少女はアーサーに向き直り


「すまなかったな 旅の者に不愉快な思いをさせてしまった」


と頭を下げた。


「いえいえ 僕もついカッとなってしまいました」


「女の子が泣きながら衛士達のところに駆け込んできた時は驚いたわ」


「アハハ おはずかしい」


「それに先ほどの君の言葉、貴族として耳が痛かった。胸に刻ませてもらう」


と胸に手をやったが、それはそれはささやかなものであった。


「それにしても恐ろしいほどの強さだね。

あの男爵の馬鹿息子は剣の天才と評判だったたのに、一撃とは……」


「いえ大したことないですよ。相手が僕を嘗めてかかっただけです」


「あなたも、明日の入隊試験は受けるの?」


「いいえ、見学だけさせてもらおうと思ってます」


「そう 残念ね。君なら衛士隊を飛び越えて騎士団に入れるかもしれないのにね。

明日見学するなら受付で名前をいえば席を良いしておくわ。

名前はなんと言うの?」


「アーサーと申します。そんな事していただいてよろしいのですか?」


「領民を救ってもらったお礼よ。遠慮はいらないわ。

そして私の名はフローリア。フローリア・シュベルト・レジアスよ。

明日は存分に楽しんでね」


「ありがとうございます」


アーサーは頭を下げ、立ち去った。

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