表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血鬼嫌いの吸血鬼、ヴィルヘルミナ  作者: Takahiro
序章 世話焼きの吸血鬼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/6

吸血鬼というモノ

 翌晩、ヴィルヘルミナは洞窟から姿を現した。村のあちらこちらには松明が立てられ、揺らめく炎が村人らを力なく照らしている。彼らはほとんど全員が剣や槍を携えていたが、吸血鬼相手にはまず役に立たないだろう。


「やあ、おはよう。カールだっけ?」

「ええ。村長のカールです」

「敵が来たら、すぐに伝えてくれ。私が全員ぶっ殺すよ」

「……左様ですか」


 と言った矢先のことであった。村の北部から角笛の音が響いた。


「奴らです。前と同じく、北から来ましたな」

「そうか。じゃあ行ってくるよ。朗報を期待していてね」

「え、ええ」

「それと、余計な手出しは無用だよ」


 ヴィルヘルミナは気楽な様子で手を振りながら、吸血鬼が現れた方面に向かった。


 カールはヴィルヘルミナの言葉を信じ、どうしようもなくなるまでは戦わないよう村人達に通達した。吸血鬼の群れは特に戦うこともなく村の土塁の内側に侵入し、そして彼女と鉢合わせた。


「やあ、君達。何をしているのかな?」


 全部で15人程度だろうか。堂々と行進する吸血鬼の集団の前に、彼女はたった一人で立ち塞がったのである。


「何だお前? 死にたいのか?」

「殺していいっすか、親分?」

「いや、待て」


 群れの真ん中から吸血鬼のリーダーと思わしき男が出てきた。いかにも山賊の頭領と言うべき汚らしい身なり、厳ついガタイに、巨大な斧を背負っている。だが、その肌は宮殿に引きこもっている貴族のように白く、髪は金髪に近い。


「お前、吸血鬼だな?」

「おや。気配だけで分かるとは。そこそこ高位の吸血鬼のようだね」

「ふん。伊達に吸血鬼はやってねぇ。で? 吸血鬼が吸血鬼の邪魔をするのか?」


 男が尋ねると、吸血鬼ヴィルヘルミナは不愉快そうに眉を顰めた。


「力のない人間を襲って喰い殺すなんて、君達には名誉というものがないのかな? 君達は吸血鬼の恥さらしだ」

「名誉だと? 吸血鬼は人間が食糧ってだけだ。人間が野で獣を狩るように、吸血鬼は人間を狩る。ただそれだけの話だろ」

「なるほど。そういう認識なのであれば、話し合いに意味はなさそうだ。私は、君達の敵だ」


 宣戦を布告すると、ヴィルヘルミナは右腕を前に突き出した。彼女の右手の中に剣の柄が現れたと思うと、瞬く間に煌めく刀身が生えてきた。彼女の手には美しい剣が握られている。


「ほう……」

「さあ。殺し合おうじゃないか」

「いいだろう。だが、殺し合う前に名前くらいは教えてくれてもいいんじゃねぇか? 俺はヘルムート。見ての通り、こいつらの頭目だ」

「私はヴィルヘルミナ。君達みたいな連中が嫌いな吸血鬼だ」

「そうか。んじゃ、殺せ」


 ヘルムートが冷たい声で言い放つと、すぐさま2人の吸血鬼が彼の背後から飛び出した。錆びついた斧を振り上げた吸血鬼が、掛け声も上げずヴィルヘルミナに飛びかかる。


 ――よく統制されている。とは言え、この程度は敵じゃないけど。


 敵の斧が頭をかち割る寸前、ヴィルヘルミナは右手に握られた剣を一振りした。次の瞬間、2人の吸血鬼は胸から上と下に分割された。真っ二つになった吸血鬼の肉塊が地面に叩きつけられ、それらは全く動かなくなった。


「おや、こんな程度で死んだのか。つまらないな」

「ほう……」


 ヘルムートは驚いて目を見開いたが、それ以上の反応は示さない。興味深げにヴィルヘルミナを観察していた。


「吸血鬼の膂力なら、身体を真っ二つにする程度は大したことじゃねえ。それより、心臓を精確に切断しているな。お前やっぱり、タダモノじゃねぇな」

「ああ。そうでもなければ、この数を相手に喧嘩を売ったりしないよ」

「ははっ。面白いじゃねぇか。んじゃ、次の手だ」


 ヘルムートが右手を挙げた。何かの合図だろう。そしてその手を振り下ろすと、次の瞬間、ヴィルヘルミナの右肩が吹き飛んだ。右腕がもげたのは言うまでもなく、およそ肩と呼べる部位が抉り取られていた。まるで彼女の肩の中に火薬が入っていて、それが炸裂したかのようだ。


 ヴィルヘルミナの肩が跡形もなくなると、一瞬遅れて破裂音のようなものが森の奥から聞こえた。


 ――弓兵を配置していたとでも? それに、この威力は。


「矢尻に銀でも塗っていたのかな?」

「当たりだ」

「わざわざ吸血鬼用の武器を用意しているなんて、驚きだね」

「魔物も人間も相手じゃねぇ。唯一邪魔になるのは同業者だ。お前みたいなのに備えておくのは当然だろ?」


 ヴィルヘルミナは溜息を吐く。


「まったく。無駄に頭が回る連中だね」

「余裕かましてる場合か? お前を狙っている伏兵はまだまだいるぜ?」

「私が逃げるとでも?」

「逃げた方が賢明だと思うがな」

「そんなつもりはないよ」

「そうか。なら、今度こそ死んでもらう」


 ヘルムートが再び腕を使って合図を飛ばす。その右腕が振り下ろされた瞬間、ヴィルヘルミナの身体は弾け飛んだ。両腕と両脚それに頭すらも胴を離れ、その胴体も幾つかの肉片となってばら撒かれた。


 血の海の中に、元が何だったのかすら分からない肉片が散らばる。


「大見得切ってた割には、大したことねえじゃねぇか」


 ヘルムートと彼の手下達は、ヴィルヘルミナだった血肉を踏み荒らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ