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第8話 どこか上の空

チャッピー(ChatGPT)にて執筆し手直ししたものを掲載しています


 岡崎さんからの誘いを、一度は断った。


 今日は疲れてたし、あんまり気が乗らなかったってのもある。でも本当は……きっと、行きたくなかった理由は別にあったんだと思う。


 「じゃあ、大田も連れてくわ。あいつ最近忙しそうやし、たまには羽伸ばしてもらわな」


 そう言われた瞬間、胸の奥が、少しざわついた。


 大田とけいちゃんが、同じ空間にいるのを想像してしまったのかもしれない。理由は、自分でもうまく説明できない。


 夕暮れの街をひとり歩きながら、胸の内に溜まったもやもやをゆっくりとほどいていく。にぎやかな駅前通りを抜けて、住宅街の静けさに包まれるころには、ようやく気持ちが少し落ち着いていた。


 でも、家に帰っても気が紛れるわけじゃなかった。


 コンビニで買ったカップ味噌汁と、昨日の残り物で簡単に夕飯を済ませて、テレビもつけずにソファに座る。スマホを何度も手に取っては置いて、深く息をついた。


 ……Moon、今夜も開いてるんだよな。


 けいちゃん、今日も元気に働いてるんだろうか。


 あの店に行く理由なんて、本当はもうわかってる。岡崎さんとの付き合いとか、同僚との飲み会のあととか、いろんな言い訳をくっつけてるけど……僕は、けいちゃんに会いたいだけだ。


 あの笑顔に救われてる。あの、屈託のない明るさに。


 ……なのに、どうしてこんな気持ちになるんだろう。


 僕なんかじゃ、あの子を好きになっちゃいけない気がして。


 店でのけいちゃんは、いつも明るくて、誰にでも平等で、気さくで。でも、あれは……あの子なりの仕事なんだろうなと思う。プロとして、ちゃんと距離を取って接してるのがわかる。


 僕のことも、特別扱いなんてしてない。


 ……だからこそ、少しでも笑ってもらえると、胸が熱くなる。


 そんな感情を、誰にも知られたくない。自分でもあんまり見たくない。


 だけど今夜は、大田があの店に行ってる。


 大田は、見た目も中身も男として魅力がある人だ。明るくて、場を盛り上げるのも上手い。女の人にモテるのもよくわかる。


 その大田が、けいちゃんと……。


 考えたくないのに、脳裏に浮かんでしまう。あの笑顔が、大田の隣にある想像。


 やめろ。


 けいちゃんは、仕事中なんだ。俺がどうこう思っていいことじゃない。


 そう言い聞かせても、心がざわつく。


 その夜は、なかなか眠れなかった。


 寝返りを打っても、目をつぶっても、けいちゃんの声が耳に残ってる。


「おかえりなさーい! あれ? 今日、ちょっとだけ疲れてません?」


 あのとき、僕の顔を見てすぐに言ってくれた。


 ほんの少しの変化にも気づいてくれたことが、なんだか嬉しかった。


 でもそれも、仕事の一環なのかな。


 今、Moonの店内では、誰の隣に座ってるんだろう。


 そんなことをぐるぐる考えてしまって、結局、朝方まで眠れなかった。


 目覚ましの音がやけに耳に痛い。寝不足の頭で、なんとか出勤の準備をする。


 職場に着いても、どこか上の空だった。


 大田はというと、相変わらずの調子で、にこやかに「昨日は楽しかったわー」と話していたけれど……僕は、何も聞けなかった。


 Moonの話も、けいちゃんの話も。


 どんな顔で、誰の隣に座っていたのかなんて、知るのが怖くて聞けなかった。


 僕は今、どんな顔をしてるんだろう。


 鏡の中の自分に問いかけたけど、返ってくるのは曖昧な表情だけだった。



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