表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/37

第33話 迷いと決意

チャッピー(ChatGPT)にて執筆し手直ししたものを掲載しています


いつもより少し早く退勤できた帰り道、駅前のコンビニでお茶を買って改札へ向かおうとしたところで、不意に名前を呼ばれた。


「……ようちゃん?」


振り返ると、懐かしい顔がそこにいた。落ち着いたベージュのトレンチコートを羽織り、化粧も髪も整ったその女性は、元カノだった。


「久しぶりやな。こんなとこで会うなんて、すごい偶然」


そう言って笑う彼女の声は、当時と変わらなかった。


「……久しぶりやな」


少し間を置いて答える。もう感情はない。でも、記憶の中の彼女が一瞬、今の彼女と重なって見えた。


「元気にしてた? 最近、ようちゃんのことたまたま思い出しててさ。……あの頃みたいに、また話せたらいいなって思ってたんよ」


冗談まじりのようで、その視線は真剣だった。


「……俺、今は大事にしたい人がいるから。そういうんは、もうできへん」


少しきつい言い方になったかもしれない。でも曖昧に笑って流す方が、よっぽど残酷やと思った。


彼女は一瞬きょとんとした後、「そっか」とだけ言って、少しだけ視線を落とした。


それきり、深追いはしてこなかった。


夜。


Moonが開店してから少し落ち着いた時間帯。けいちゃんが他のテーブルについている間、カウンターで飲んでいた俺は、心の中でぐるぐると考え続けていた。


——言うべきか、黙ってるべきか。


俺は今、会社員として毎日忙しく働いてる。けいちゃんは夜の店で、いろんな男のお客さんに笑顔を向ける。


正直、不安になることがゼロやとは言わん。でも、それでも——信じてる。


だからこそ、隠したくなかった。


閉店後の店内。後片付けをしているけいちゃんに、そっと声をかけた。


「けいちゃん、ちょっとだけええ?」


「ん? なにー、ようさん」


「今日さ、たまたまやけど、元カノに会ってん」


けいちゃんの手がピタリと止まる。


「……え、そうなん? なんでまた」


「偶然。駅のとこで。別に何もなかったけど、『また話せたら』とか言われて……でも俺、その場でちゃんと断ったから」


一瞬、間が空いて。


「……そっか」


けいちゃんは笑っていた。でもそれは、どこか寂しそうな、でもやっぱり少し安心したような、複雑な笑顔だった。


「ようさん、ちゃんと話してくれてありがとう」


「うん」


「なんか、うちはさ、こうやって言ってくれるようさんのこと、やっぱ好きやなって思った」


「俺も、もっとちゃんとしたいと思ってる」


「ちゃんと、って?」


「未来のこと、もっと考えたい。けいちゃんと一緒に、まっすぐに生きていきたいって。思ってる」


その言葉に、けいちゃんの目がすこし潤んだ気がした。


「……ようさんって、ほんま、ずるいよな。そんな言い方されたら、うち、どんどん好きになってまうやん」


照れながら、でもどこか誇らしげに、彼女は笑った。


——きっと、迷いは全部、もう手放していい。


俺の中にあった小さなぐらつきも、今日限りで終わりにしよう。


そう思えた夜だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ