表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/37

第28話 心の準備

チャッピー(ChatGPT)にて執筆し手直ししたものを掲載しています



 休日の朝は、なんとも言えない空気が漂っている。

 平日の慌ただしさとは違う、時間の流れがゆっくりで、どこか柔らかい。


 けいちゃんを誘ったのは、数日前だった。

「今度の休み、もし予定なかったら、一緒に出かけませんか」

 Moonの営業後、グラスを拭きながら言ったら、けいちゃんはぱっと目を輝かせて、「うん、行く!」と即答してくれた。


 そうして今日。

 待ち合わせの駅の改札口で、けいちゃんは白いブラウスにジーンズ、髪をふわりと巻いていた。ちょっとした街歩きのつもりだったけれど、その姿はどこか晴れやかで、見とれてしまうくらいだった。


「お待たせ〜! 今日めっちゃ楽しみにしてたんやから!」

「うん、俺も……楽しみにしてた」


 けいちゃんは、ふわっと腕を絡めてきた。その無邪気さに少しだけ戸惑いながらも、心の奥がぽっと温かくなる。


 最初に向かったのは、雑貨屋が立ち並ぶトアロード。

 小さな木製の看板がぶら下がる店先を覗き込みながら、けいちゃんはあれこれと楽しそうに語ってくれる。


「見てこれ! 猫の形の箸置き! かわいすぎる!」

「ほんとだ。けいちゃん、猫好き?」

「うん。飼ったことないけど、猫カフェ行くとテンション上がる」


 ガラスの器を覗いたり、ハンドメイドのアクセサリーを手に取ったり。

 そんなけいちゃんの姿を、俺は少し後ろから見守るように歩く。

 ああ、なんか、こういうの、いいな。


 昼は、けいちゃんが「気になってたんやけど、ひとりじゃ入りづらくて」と言っていたカフェへ。

 店内はアンティーク調のインテリアで、カップもひとつずつ違っていて、ちょっと大人っぽい雰囲気だった。


 けいちゃんはランチプレートを、俺はパスタを頼んで、窓際の席で向かい合う。


「こういうの、久しぶりかも」

「こういうの?」

「うん……ちゃんと誰かと出かけて、ごはん食べて。なんか、デートっぽいやん」


 照れたように笑うけいちゃんの頬に、午後の陽が柔らかく差し込んでいた。


 食後のコーヒーを飲みながら、話題は昔話になった。


「高校のとき、休みの日もバイト入れててさ。今思えば、誰かとゆっくり遊ぶ時間、ほとんどなかったなって」

「けいちゃん、忙しかったんだね」

「うん。でも今、こうしてのんびりしてるの、なんか変な感じする」


 けいちゃんの言葉には、どこか迷いのようなものが滲んでいた。

 そのまま商店街を歩いているとき、ふいにけいちゃんが立ち止まる。


「ねぇ、ようさん」

「うん?」

「ようさんはさ、私みたいなの、どう思ってる?」


 目が合った。

 その瞳には、いつもの明るさの奥に、何かを確かめるような真剣さがあった。


 どう思ってるか。

 言葉にするのは簡単じゃない。

 でも──嘘はつきたくない。


「……いいと思うよ。すごく素敵な人だと思う」


 けいちゃんは、ぽかんとした顔になった後、ゆっくりと笑った。

 その笑顔が、なんというか……すごく柔らかくて、俺の胸の奥に、そっと触れてくるようだった。


「……そっか。ありがと」


 そのあとは何も言わず、並んで歩いた。

 肩と肩が触れるか触れないかくらいの距離。

 時折風が吹いて、髪が揺れる。


 帰りの電車の中。

 けいちゃんは、車窓の外を見ながら、ふわっと笑った。

「今日、すっごい楽しかった」

「うん。俺も」


 沈黙が、心地いいと思った。

 言葉じゃないところで、少しずつ近づいている気がして。


 けいちゃんの隣にいると、時間がやさしく流れる。

 あの人のこと、もっと知りたい。

 もっと一緒にいたい。


 そんな想いが、胸の奥で、静かに膨らんでいく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ