プロローグ
短編以外を投稿するのは初めてなので、おかしな部分があるかもしれませんが、良ければお付き合いください。
メールが届いた。
『聞いてください、悠生さん。さっき喫茶店で友達と話してたら、隣の席におばあちゃんが来ました。そのおばあちゃんが、なんとハンバーグを二皿も頼んでました』
今どき、メアドを使っての連絡なんて珍しいだろう。
『そうか、それは驚きだな。俺もさっき友達とゲーセンでボウリングしてたら、隣のレーンの爺さんがターキー取っててビビったよ』
メッセージアプリが流行る中、俺たちはいつまでもメールでやりとりする。
『ターキーって何ですか? おじいちゃんボウリング場で七面鳥を食べてたんですか?』
このメアドがなければ、互いに癒える事のない傷を隠しながら生きていかなければならなかった。
『美矢子の真似なんてしなくてもいいんだぞ。お前もっと頭良いだろ、京』
だけど、亡者が置いていった忘れ物がこんな奇跡を起こすなんて誰も思わないだろう。
『いや、流石に七面鳥はないと思いましたけど、ボウリングは本当に知らなくて……もし本当に七面鳥だったら面白いなって』
「ははっ、まさかの素ボケか」
さて、今日は他にどんな会話が出来るかな。
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メールが届いた。
『いつものスイーツ店が今日から最新スイーツを発売したぞ。ラズベリーのチーズケーキだってさ。美味そうな見た目してるよな』
これは私と兄のようなあの人との秘密の会話。
『あの……その写真見せられても、私は食べられないですよね?』
メールアドレスは思い出が詰め込める宝箱だ。
『おう、そうだな。これは俺が食う用だ』
こんな意地悪なメールもキラキラした宝物に見えてしまう。
『悠生さん……それ、下手したら嫌われますよ』
亡者からの贈り物が、こんなにも幸せをくれるなんて思いもしなかった。
『おっと、京に嫌われたら夢の中でお兄ちゃんに怒られちまうな』
「ふふっ、変な人。お兄ちゃんの顔見た事ないのに、どうやって夢に出てくるの」
さあ、今日は他にどんな会話をしようかな。