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ずっと一緒

作者: 明智光秀



いつの日かの切ない物語。


それは、人々が今や大事にしろと言って止まない、かけがえのない命を無情にも奪い合う、戦争の場での話である。


二人の同い年の少年少女が、弾丸の雨と爆風に包まれる街を、必死に命がけで走っていた。


あちらこちらから怨嗟の声が聴こえてくる。


鉄くさい血の匂いと死肉による腐臭が辺りに漂う中で。


少女は少年に言った。


「一生離さないで。ずっと一緒にいて」と。


少年は胸に十字を切ってみせると、微笑んで頷いた。

  

少年が先行して後に続く少女の手を引く。


まるで変貌した光景の街を駆けていき、曲がる度に目に飛び込んでくるのは、無惨な死体の数々だった。




ただただ走った。走り続けた。


どこか安全な場所へ。どこにあるのかも分からない目的地へ。



しかし、そうしているうちに空を飛び交う無数の航空機によって投下された空爆が、ちょうど彼ら近くの建物が倒壊した。


その半壊した建造物の一部が、二人を巻き込むように地へと落下する。


幸いにして、落下点からギリギリそれていた少年は無傷だった。 

 

そして少女も上半身は無事だった。


だが反対に言えば、下半身は無事ではなかった。



彼女の半身は瓦礫の下敷きになって、無惨にも潰れていたのだ。

 

少年は幼いながらも、これではもう逃げることはできないことを察した。


まだ空の攻撃の止まないこの場所は危険であり、ましてや足を失って留まるとなっては、ただでは済まないだろう。


その瞬間は少年にとって最も残酷な事実でもある。



彼女はまだ生きているのに、もう死んだも同然なのだから。



涙を堪えつつ、少年は自分の身の危険を案じて、逃げようと彼女に背を向けた。



身体が思うように動かない。

少年は驚いて振り返った。



見ると、少女が少年の脚を掴んでいた。

そして彼女は先の言葉を繰り返した。


 一生離さないで。ずっと一緒にいて



そうして、二人は念願にも永遠に結ばれたのだった。

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