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キスならさせてあげるわ

 「うっ、それはそうだけど。 知り合ったばかりだし。 その、もっと親密になって、恋人になってからじゃだめかな」


 「んー、だめだと思うな。 親密になっても、恋人にはなれない気がする」


 「えっ、なんで」


 「俺は女に、全くモテないないからだ」


 「そ、そんな事は無いと思うよ」


 〈さっちん〉の目が泳いでいやがる、俺は真実を言ったらしい、とても悲しいぜ。


 「きゃっ、触らないでよ」


 俺は〈さっちん〉の肩をつかみ、強引に抱き寄せた。

 〈さっちん〉は手を突っ張って抵抗は止めないけど、殴ってくるような事は無い、異界に置き去りにされるのを恐れているんだろう。


 「〈さっちん〉は、可愛くて美人だから、抱きたいんだ。 一目惚れしたんだ。 だから良いだろう」


 〈さっちん〉を抱きしめながら、俺は歯の浮くような台詞(せるふ)(かさ)ねる。

 無言で抱きつかれたら怖いし、()め言葉を言わないよりは、言った方がマシだと思う。


 「嫌だぁ。 離してよ」


 「〈さっちん〉に、俺は惚れているんだ。 だから、キスしたいんだ。 約束だろう」


 「うっ、キッ、キスならさせてあげるわ。 でも、それ以上はダメなんだからね」


 俺は〈さっちん〉の頭を、ガッチリとホールドして、ぶちゅとキスをかました。

 ただ、過度に嫌われてもいけないから、あくまでも優しく、ソフトにだ。


 一度で良いからソフト(めん)の給食を食べたかったな。

 けど〈さっちん〉の唇は、ソフト麺よりも柔らかいと思う。


 桜の花びらの真ん中に、線を引いたような、小振(こぶ)りで愛らしい唇だ。


 俺は〈さっちん〉の花びらを、夢中で舐めて吸っている、〈さっちん〉は目をギュッと閉じて耐えているらしい。

 

 その耐えている顔が、何ともいじらしいな。


 俺はキスを続けながら、〈さっちん〉の着ているジャージを脱がし始めた。

 ジャージと言うのは、着るのも簡単だけど、脱がすのも容易(ようい)だ、便利な服だよ。


 〈さっちん〉は俺にキス&ホールドされながらも、頑張って頭を振っている、逃げたいんだろうな。


 「ぷはぁ。 あぁ、脱がさないで、お願い。 やだよぉ、初めては、好きな人にあげたいの」


 俺は〈さっちん〉の願いを聞かずに、裸にしてしまった、女性は全裸になると抵抗が弱まると俺の知識にはある。


 高校生の時に、部室で読んだエロ本にそう書いてあった、十年以上も読み()がれたエロ本だから、きっと真実なんだと確信している。

 幾人(いくにん)もの童貞を卒業させた、名著(めいちょ)に決まっているぞ、その証拠が俺だ、今素人童貞を卒業するんだ。


 「〈さっちん〉の裸は、(まぶ)しいほど美しい。 まるでミロのビーナスだ。 美の女神様と呼びたい。 ますます俺は〈さっちん〉の(とりこ)だよ」


 「うぅ、〈よっしー〉は優しい人だと思っていたのに、ひどいよ。 約束だから、しょうがないけど。 ほんとに私の事が好きなんでしょうね。 だったらもう良いわ」


 〈さっちん〉はもう色々な事を諦めてしまったらしい、理由を探して自分を(だま)そうとしているのだろう。

 言い訳を与えておいて良かったな。


 トドママが生娘と言っていたので、信用はまるで出来ないけど、ひょっとしたらと思い、懇切丁寧(こんせつていねい)な行為と気遣(きづか)いに努めてみた。

 指使いも懇切丁寧だったのは、言うまでもない。


 プロ相手に(みが)いた、超精密な技を見せる時がきた、眼を見開いて見るが良い。


 あっ、全部嘘です、目は閉じてて良いです、プレッシャーで緊張しますのから。


 行為の最中も、俺は「好きだ」「綺麗だ」「可愛い」の連射と、キスを欠かさない。

 これは、たぶん、AVの影響だと思う、見た作品が多過ぎて特定不能だ。


 俺は不能じゃないから、〈さっちん〉の中で、ビキビキしている。

 最後は(あわ)てて外界に放り出したのだが、主神像にかかってしまった、ずいぶんしてなかったので、元気が良すぎだ。

 三メートル以上は飛んだと思う、最長到達記録を更新しているな。


 「うぅ、痛いよ。 ひどいよ。 この悪魔め。 ぐすぅ」


 神様の前で何てことを言うんだ、でも強引にしたのは、やり過ぎだったと反省もするな。


 「ごめん、〈さっちん〉。 だけど、君の体は素晴らしかったよ」


 「うぅ、言うな。 私は悲しいんだぞ。 うぅぅ」


 やった後だから、心がこもって、いなかったのかも知れないな。

 次回からは、もっと心にも無い事を口走ろう。


 俺は、(おのれ)の欲望のために、可哀そうな事をしたと思ったから、裸の〈さっちん〉を優しく抱きしめてあげた。

 〈さっちん〉は自分からは何もしないが、そのまま大人しく抱かれている、たぶん、俺との関係を本格的に諦めたらしいな。


 男と女の関係になってしまったので、もう失くすものは、命しかないからか。

 俺が命まで取らないと、分かっているからだろう。

 必死になって抵抗しなかったのは、命の担保(たんぽ)だと思ったのかな。


 聞いても答えないし、聞いて良い話じゃ無いと思う。


 俺と〈さっちん〉は、そのまま眠ってしまったようだ、朝起きたらもうお昼前になっていた。

 思っていたより、二人とも疲れていたらしい。


 駅前のコンビニ寄って、パンとペットボトルのコーヒーを買い、ちょうど来た電車に飛び乗った。


 この町にはもう用はない、二度と来るか。


 「うわぁ、汚いし狭いね、この部屋。 二人じゃキツイよ」


 〈さっちん〉は遠慮が全く無い、肌を重ねたからか、元からの性格か、両方だな。


 「そう言うなよ」


 「ふん、明日からもっと(かせ)ぎなさいよ。 歯磨きとか日用品を買ってくるから、お金をちょうだい」


 「えぇ、もう、お金なの」


 「当たり前でしょう、早くしてよ」


 俺はしょうがないので、なけなしの一万円を、〈さっちん〉の差し出した、手の平へ乗せてあげた。

 〈つばさ君〉達が俺にくれた金だ、貴重なんだぞ。


 「これっぽっちか」


 〈さっちん〉は、汚い言葉を吐きながら、買い物に行ってしまった。


 あぁ、この先が思いやられるな。

 抱かなければ良かったか、あの地方都市で見捨てておけば良かった。


 後悔先に立たずだ、立っちゃった俺はなんてスケベなんだ、でも抱いちゃうよ。

 ピチピチの高校生だもん、トロトロの女の子だもん、お汁が出ちゃう。



 俺は真面目だから、半グレの〈はると〉へ報告をするために、公園へ行く事にした。

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