鋭い刃物
俺はギラリと光る刃物を、コンビニの帰りに託された。
それが世界を切り裂けと、俺に叫んでくる。
切り裂いた世界の神が、俺へささやいてくるんだ。
欲望を満たす事が、どうしていけないんだと。
「使徒様、巫女を連れて参りました。 国中で一番の器量良しで御座います」
「使徒様、お目にかかれて光栄に存じます。 〈アココ〉という名の乙女であります。 ぜひ、使徒様の巫女として、お側に置いて頂きたく参上いたしました」
〈アココ〉という娘は、二十歳までの、すらりとした手足のすごい美人だ。
肌がやや浅黒いのは、長と同じだけど、目は大きくパッチリしているし、眉毛が濃くて太いのも健康的で良い。
「ほぉ、使徒様もお喜びのご様子。 この〈ワワク〉、胸を撫でおろしております。 ははっ、後は若い二人で、ご存分に過ごして頂ければ幸いです。 私はこれで失礼いたします」
〈ワワク〉という名の長が神殿を出て行き、俺は〈アココ〉ちゃんと二人切りになった。
どうしよう、黙ったままじゃ良くないよな、なんでもいいから会話の糸口が無いのかよ。
俺には美人とスムーズに会話出来る、スキルなんてものは、生えていないんだ。
「使徒様、祭壇の前でいたせと教えられています。 そうすれば、私が使徒様の真の巫女となるのだそうです。 このとおり、敷物を持参していますので、さあ、いたしましょう」
〈いたす〉を二回言ったぞ、この子、やる気満々なんだな、そりゃ俺もいたしたい。
でもな。
表情が堅い、思い詰めたような顔をしている、本当は俺としたくないんじゃないの。
「えぇっと、君の名前は〈アココ〉と言うんだな。 〈アッコ〉って愛称で呼んでも良いかい」
「〈アッコ〉ですか…… 。 はっ、使徒様のお好きなように、お呼びください」
〈アッコ〉と呼ぶのは微妙だったらしい、でも男に二言があってはいけない、〈アッコ〉で通すぞ。
細かい事を気にしていたら、人生に負けてしまうんだ、もう俺はかなり負けているからな。
「使徒様、どうぞ私の体を使い性を撃ちだしてください。 私はそれを望んでおります」
うわぁ、〈アッコ〉が貫頭衣をパサリと脱いで、敷物の上へ寝転んだ。
下着は初めから、つけていなかったんだ、一糸まとわぬ全裸だよ。
浅黒い肌がツヤツヤで滑らかそうだ、少しも崩れていないおっぱいが、うっ、堪らん。
俺も服を脱いで、〈アッコ〉に覆いかぶさった、そして唇を奪い、おっぱいを揉みしだく。
自分でも止められない、止める気もないが。
〈アッコ〉は目を瞑ったまま、微動だにしない、まるで人形のように表情が変わらない。
一筋の涙を流しただけだった。
くっ、俺はとんでもなく悪い事を、しているんじゃないか、でも止めたくない。
快感を貪る事が止められない、〈アッコ〉の辛ささえも、俺の情欲のエサとなっている。
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俺は何をしているんだ、俺がこんな事になったのは、ある出来事がきっかけだったな。
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冷蔵庫から、缶酎ハイが無くなってしまった、もう一本も無い。
ちょー、だりぃなぁ。
一昨日も昨日も飲んだんだ、残り少なくない事に、気づいていただろう。
ちっ、そうだよ、それがどうしたって言うんだ。
こんな真夜中に、缶酎ハイだけを買いに行くのか、真に邪魔くさい事だね。
けっ、コンビニへ買いに行けば、良いだけの話じゃねぇか。
俺は脳内の争いに終止符をうち、缶酎ハイを買いに行く事にした。
これ以上争いが続くのが怖かったんだ、けど、お利口さんの平和主義者では、俺は無い。
アルコール依存症になっている可能性に、ははっ、思い当たってしまったんだ。
ちょっと、ヤバイぞ。
ぞぉー。
手遅れかも知れないので、構わず飲む事にしよう、それが現時点での正解だ。
缶酎ハイは俺を救うんだぁー。
ポケットに手を突っ込んで、猫背ぎみに歩いてコンビニまで、缶酎ハイを買いに行く男。
それが俺だ。
六畳一間の安アパートが似合い過ぎて、ははっ、こまっちゃう男でもある。
コンビニで缶酎ハイを二本買って、トボトボと歩き出した、二本しか買わないのが洒落ているだろう。
そうは思わない。
そりゃそうだ。
ケチった訳じゃないぞ、金を持っていないだけの話だ。
ザ貧乏って言う喜劇の主人公を、演じているんだよ、俺の希望じゃないのが、かなり悲しいよ。
少し先で、人が争っている物音が聞こえてきた、一瞬疑ったが俺の脳内じゃない、体の外から音がしている。
こんな真夜中に、こりゃ厄介だな。
そう思ったのと同時に、俺は男に体当たりをされて、道にコテンと転がっていた。
一瞬の出来事だ。
「あいたたぁ」と俺が言っている横を、今度は二人の男が走り抜けて行ったらしい。
暗くて良く見えなかったんだ、それに肘や膝が痛かったからな。
「ちぃ」
俺は道に唾を吐き捨て、自分の運の無さを呪う事しか出来ない。
どこの誰かも分からない、しかもヤバいヤツらみたいだ、慰謝料なんて、とてもじゃないが取れないだろう。
缶酎ハイが入っているビニール袋を、もそもそと拾い、俺は「くそっ」と毒づいた。
痛みを堪えて、トボトボと帰るしかないな。
やっとアパートに帰ったのに、これだ。
缶酎ハイを開けて飲もうとしたら、「プシュー」と顔に噴出しやがった。
俺の運は、もう最底辺だな、沈んでいるよ。
顔から垂れてくる酎ハイを、舌で舐めている俺は、かなり上位の道化師かも知れない。
観客がいれば、このギャグで大爆笑だ。
だが、自分では笑えない。
残った一本は冷蔵庫で、炭酸を大人しくしよう。
久しぶりに投稿してみるかと、ノートパソコンで書いていた小説モドキは、今日はもう止めだ。
どうせ誰も見ないのだから、急ぐ意味は何も無い、誰も待っていない。
ボーっとしてても、しょうがないので、今日はもう寝るか、体もズキズキと痛む。
引きっぱなしの布団に入る前に、上着を脱ごうとしたら、何か固い物が手に当たったぞ。
ポケットに何か入っている。
あれー、何を、いつ入れたんだ、俺のお頭はヤバい事になっているぞ。
ポケットから出て来たのは、木で出来た棒だ。
棒ってなんだろう、犬が歩けばってあったな、俺は犬か、野良だな。
木の棒は、長さが十センチ程度で、握りやすい太さだと思う。
物はかなり古そうだな、三分の一くらいの所に、線が走っているぞ。
ここで開きそうだから、開けてみよう、これが何か全く予想がつかない。
骨董品的な物で、少しでも金になったらな、なるわけが無い、ゴミに決まっている。
俺は淡い期待と好奇心を刺激されて、線から上を引き抜いてみた。
〈ギラリ〉と音がしそうなほど{鋭い刀が、スッーと出てきた、いやいや、こんなに短いのは刀じゃない。
それなら何と呼ぶのか、俺には分からない、ようは七センチもない短い刃物だ。
ただ、怪しい雰囲気を出している、いかにも切れそうな刃だ、濡れているようなヌメッとした輝きを放っている。
これが玩具じゃないのは俺でも分かる、けど、用途が不明だ。
人を刺す用途としては短すぎる、刃はもろにそうなんだけどな。
出所は間違いない、俺を転がしたさっきの男だ、それ以外は考えられない。
ぶつかった時に、俺のポケットに入れやがったんだ、すげぇ早業だ。
でもよ、目的は何なんだ、全く予想も出来ないな。
あの男に何のメリットがあるんだ、なぜ俺なんだろう。
俺は偶然歩いていただけだ。
それにしても、この刃物はなんだ、何を切る物なんだ。
俺は試しに、刃物を振ってみた。
そしたら驚愕の現象が、おきちぃまった。
噛むのはしょうがない、俺の目の前の空間が切れてやがったんだ。
切れ目からは、薄暗い建物の内部が見えている、まさかこれは異界なの。
女っぽくなったのは、驚きのあまり男の部分が、引っ込んでしまったからだ。
その証拠に俺の股間は、縮みが上がっているぞ、痛いくらいに引っ込んでいる。
俺は空間の隅間から、恐る恐るその建物に入ってみる事にした。
〈どうしてそんなに危険な事をするの〉と問われたら、金のためだと胸を張って答えたい。
俺にはその建物が神殿のように思えたんだ、仏像やお地蔵さんは、結構良い値段で売れるんだぞ。
その建物は俺の、ピンポン、予想どおり神殿だった。
男と女を表した巨大な彫刻が、色んな体位で絡み合っている、それが一杯ある。
うわぁ、いやらしい神様だよ、お子様は拝観禁止だな、俺はこの神殿がR18だと断定した。