Episode54「開戦」
遠くの鐘の音と、兵士たちの叫び声が響く。
「開戦したぞ!ついに戦争が始まった!」
「帝国軍が国境を突破!王国軍が迎撃に向かう!」
その言葉が、夜の空気を震わせる。
「……戦争が、本当に始まったのか……」
拳を強く握りしめる。震える声で呟くが、怒りも悲しみも混じっている。
「クソッ…!俺たちは何をしていたんだ…?結局、何も変えられなかったじゃねえか…!」
カイルは壁を殴りつけた。
「こんな…こんなのって……。たくさんの人が死ぬ……そんなの、絶対に嫌!」
ローラは目に涙を浮かべながら、震える声で叫ぶ。
「戦争なんて…何の意味があるの…?」
頭を抱え、膝を抱える。4人に追い打ちをかけるかのように絶望感が込み上げてくる。
4人はただ、王都の闇の中で座り込む。焦げた瓦礫、遠くの火の手、そして耳をつんざく開戦の報。しかし、何もできない。
「俺たちは…このまま見ていることしかできないのか…?」
内戦により、変わり果てた王都。空気は重く、心も沈んでいく。戦争を止める方法を見つけられないまま、時間だけが過ぎていく。しかし、突然、白い伝書鳩が飛んできてノアの元に小さな手紙を届けた。
「俺宛に手紙か?」
手紙を開くと、まずはクラウディオの名前が目に入った。
「ノア、そしてみんな。クラウディオだ。カルロスから緊急でノアに伝えたいことがあるらしい。俺が仲介役となってこの手紙を出している。心して読んでくれ。そして、みんなの無事を切に願う。」
「な、なんだって?!」
To be continued…
魔獣出没報告書No.3
発生場所:クラーバス山脈
現象:年配の公務員がクラーバスドラゴンの巣に迷い込む
概要:
王都から約50kmほど離れた「クラーバス山脈」で、出張中の年配の公務員が魔導箒で移動中に誤ってクラーバスドラゴンの巣に迷い込む事件が発生。クラーバスドラゴンはその種としてはかなり濃厚な存在で、特に巣に近づかれると非常に凶暴化する習性がある。
幸い、男性は数百メートルにわたって必死に逃げた末、逃走に成功。しかし、このドラゴンは目が退化しており、もし追われる立場になった場合、左右に旋回することで視界を狂わせ、逃げるチャンスが増すことが分かっている。
注意点:
クラーバスドラゴンの巣を探しに行くことはお勧めできない。近づきすぎると、その好奇心を引き起こす可能性があり、非常に危険。もし遭遇した場合、冷静に左右に旋回しつつ、可能な限り静かに撤退することが最善策となる。
ノア「まさか、年配の人がドラゴンの巣に迷い込むなんて…一体どんな道を選んだんだ?」
ローラ「魔導箒に乗ってるのに、どれだけ注意散漫だったんでしょうね…まあ、幸いにして無事だったようで何よりだけど。」
ノア「でも、クラーバスドラゴンが目が退化してるから旋回すればいいっての、妙に現実的だな。」
ローラ「でも、あんな大きなドラゴンが追いかけてきたら、旋回する気力もなくなりそうだわ。」
ノア「そりゃそうだな…。逃げる時は本気で命がけだよ。」




