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Chronosphere 〜貴方を殺めた世界に、花束を〜  作者: サム
第四章「バルザ海の航海」
34/74

Episode34「エリスの変易」

真夜中。波の音だけが響く夜の甲板で、4人は静かに夜空を見上げていた。


エリスは目を閉じながら、過去を回想していた。



「きゃああああ!!!」「誰か、誰か助けてくれぇ!!」


焼け落ちる村。響き渡る断末魔の叫び。

幼いエリスは、すべてを失った。

国境沿いの寒村は戦火に巻き込まれ、家も家族も、友達も、何もかも、燃え尽きて消えた。

5歳の小さな体は、爆風によって投げ飛ばされ、全身に火傷を負って倒れた。


ああ、こんなに痛いのに、寒い……。もう、死ぬのかな。


そのときだった。


「お前は、まだ生きたいか……?」

どこか低く、しかし優しげな声が聞こえた。


幻聴かもしれない。だが、幼いエリスは、微かに頷いた。


「そうか。なら、お前に“復活の魔法”をかけてやる。“生きたい”と思う強い意志があれば、過去の傷はすべて無きものとなる。いいな?」


それが彼女と盗賊団の団長「デモス」との出会いだった。


エリスは蘇った。

魔法によって傷跡一つ残らず、元の姿を取り戻した。

だが、その代償は“盗賊”としての人生だった。



7歳から盗賊の仕事に携わったエリス。

小柄な体格と異常なまでの俊足――それを活かしての潜入、強奪、逃走。


団員たちには可愛がられた。けれど、彼らの語る「強さ」や「生きる術」には血が混じっていた。

次第にエリスも、周囲に倣い、冷たく、無慈悲に、感情を隠して生きるようになった。


けれど。


「今日の分け前、また団長が自分で持ってっちゃったのかよ」

「まあ、あの人はそういう人だからな」


そのやり取りを聞いたとき、エリスは舌打ちした。


なんで。なんで私たちは、こんな風に生きなきゃいけないんだろう。


奪って、騙して、裏切って

そうして得たものが、本当に「生きる」ってことなんだろうか。

違う。こんなのは、もう嫌だ。



ある日、エリスは盗賊団を抜けた。

団長・デモスに何も告げず、ただ一人、夜の山を駆け下りて姿を消した。


放浪の日々が始まった。

だが所詮は元盗賊。住む場所も、働く場所も見つからない。

そして「交易都市マルカス」へとたどり着いた。


人の多さに紛れれば、何とかなる。

そう思っていた矢先だった。

「へへっ、いいじゃねえか、嬢ちゃん。ちょっと俺らと遊んでいかねえ?」


露骨な言葉と視線。周囲の目は冷たい。

誰も助けてはくれない――そう思っていた。


「オイオイ、あんまりしつこくしすぎると、相手を間違えたって後悔するぜ?」

声が割り込んだ。


振り返ると、そこには三人の若者が立っていた。

赤髪の青年、優しげな少女、そして銀髪の男がにやりと笑っていた。


「……なんだお前ら」


「通りすがりの人さ。ほら、お嬢ちゃんは行こうぜ」


乱暴者たちを追い払った三人は、エリスに手を差し伸べた。


「大丈夫? 怪我してない?」

「腹、減ってんだろ? 俺が焼いたパン、いるか?」

「まあ、焼き加減はイマイチだけどな。」

「うるせえ!!」


ぽかんとしたエリスの心に、温かさが流れ込んできた。


なんで? 私、元盗賊なのに。


「関係ないさ。困ってる奴を助けるのに、理由なんてねえよ」

それが、ノア、ローラ、カイルとの出会いだった。




「ありがとう、みんな。そして……これからも、よろしくね」

「ん、なんだ?エリス…」


「いいえ、なんでもない。」

彼女の目には涙が浮かんでいた。


To be continued…

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