Episode3「王都へ」
ノアは恩師クラウディオの元を去り、王都への旅を始める。だが途中で盗賊団と謎の少女に遭遇し…
ノアはクラウディオの家を後にし、王都「ミャレーゼ」へ向かう旅を始めた。村から王都へは、街道でつながっている。ノアは街道をつたって王都への移動を開始した。
道中、すれ違った旅人から話しかけられた。
「お前さん、あっちのほうへ行くのか?」
「はい、そうです。どうかしたんですか?」
「いや、この先で盗賊たちが暴れまわっているらしいんだ。気をつけてくれ。」
「なんだって?」
ノアは声を荒げた。
「とにかくあまり行かないほうがいい。」
「俺はどうしても行かなければならないんだ。」
「わかった。十分に気をつけるんだぞ。」
しばらくすると、黒装束の集団と鉢合わせになった。
「誰だ、お前は。ここから先は通さないぞ。」
集団は誰かを取り囲むように立っていた。その中を覗くと、謎の少女が倒れ込んでいた。少女は自分と同じぐらいの年齢に見えた。
「何してるんだ!」
ノアは再び声を荒げた。そこでリーダー格の人物が口を開いた。
「何してるかだって?この小娘をよく見てみろ。左肩から左胸にかけて謎の傷があるだろ?この傷が入っている人間はかなりの希少価値があって、高額で売れるんだよ。」
確かに、その少女には紋様のような傷が広がっていた。
「人身売買は絶対にあってはならないことだ!お前たちは今に天罰が下るだろう!」
ノアはそう叫んだ。
「ぐぬぅ…何を言う!野郎共、かかれぇ!!」
リーダー格の人物がそう叫び、いっせいにノアに飛びかかった。ノアは怯まず、
「インフェルノ・テンペスタス!!」
と呪文を唱えた。
「な、なんだ?!」
ノアの手から強力なビームが発射され、盗賊たちを焼き尽くした。この炎のエネルギーを凝縮させたビームは、クラウディオから教わった魔法で一番得意とするものだった。
「ぎゃああああああ!!」
盗賊たちが倒れ込んでいる間に、ノアは少女の手を握って逃げ出した。
全速力で走り、雑木林の中に隠れこんだ。
「助けてくれてありがとう…」
少女が口を開いた。
「あぁ、無事でよかった… 言うのを忘れていたが、俺の名前はノア。よろしく。」
「私の名前はローラ。なんで私を助けてくれたの?」
「だって、あんな状況でローラをほっとくわけにもいかないだろう。ところで君、なぜそんな傷があるんだい?」
ローラは少し表情を暗くして言った。
「私は、幼い頃に、闇の商人に心臓に呪いをかけられたの。これはそのときにできた傷よ。解呪薬を飲んでいるけど、魔法医者によるといつ心臓が止まってもおかしくないって…」
ローラの目に涙が浮かんだ。
「そうか、それは辛いな… 聞いてごめんな」
「うん…」
「俺は、帝国の連中に殺された両親の敵を討つために、王都に行かなければならない。ローラもついてくるか?」
ノアはそう語りかけた。
「私も、この傷の真相を知りたい…!」
二人の利害が一致し、ともに旅を始めることになった。
草原や険しい山などを超え、ついに王都の城壁が見えてきた。
「ああ、王都だ。やっとたどり着いたぞ!!」
二人は喜び合い、王都の大正門をくぐった。
「こ、これが王都か…大都会じゃないか!」
ノアは、はずれの山間部の村出身で、王都に来たのは初めてだという。
「ノア、王都に来たことないの?私が案内してあげるわ」
ノアは、ローラに案内を任せることにした。
「ここがキングスミャレーゼ駅よ。クロノスフィア鉄道本線の終着駅で、1日で8万人ぐらいが利用してるって言うわ」
「ほへー…、こんなにでかい駅はじめてみた…」
「あはは、こんなの序の口よ」
ノアとローラは王都を楽しく観光していた。後ろから迫る影に気づかずに…
to be continued