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5話 未知の世界

 辺境の領地へと向かうことが決まり、私とティランプは駅に――――の前に、腹を満たしておこうとエメリカ発祥の人気チェーン店「マクダナルド」に入店していた。

 実は私、この店に入るのは初めてだ。クソ女に「令嬢ともあろう女性が庶民の下品な店に入るな」と禁じられていた。まあ、今頃アイツは塀の中で臭くて冷えた家畜以下の飯を貪ってるんだろうけど。

 カウンターでメニュー表を眺める。見たことはないけれど美味しそうな食事がいっぱいだ。


 よく分からなかったからティランプに全て任せた。

 数分後、店員に食事を提供され、そのトレーを受け取った。

 頼んだ品物は、ダブルチーズサンドイッチだ。サンドイッチは本来ハムが挟まっているが、これには豪快にも厚さ数センチのハンバーグが突っ込まれている。しかも玉ねぎなどは入っておらず、肉だけだ。


 「やはり俺と同じ名前の店の料理は美味いな」


 彼は猛獣の如くパンを齧り、噛み砕き、肉塊を喉に流す。

 自分もどんな味なのか気になって端の部分を噛んだ。


 「えぇ、何なのよこれ……!?」


 口いっぱいに広がるは、沢山の肉汁とそれの心地よい香り。パンも柔らかすぎず固すぎず丁度良い。

 値段はあまり高くなく、庶民向けのもの。味もまた庶民向け。

 けれども、私が今までに食べた中で一番美味かもしれない。

 多分……質がいいやつしか食べてこなかったからかな。だからこういったジャンキーな料理が舌に響くのかも。


 手が暴走し始めた私は恥ずかしいけどおかわりをしてしまい、結果的に4つも味わった。その内、ティランプにはちゃんとお金を返さないとね。

 ある種の高級料理をしっかりと楽しみ腹をサンドイッチで詰めたあと、私達は駅に来た。

 平日なだけあってホームに人の数は少ない。強いて言えば線路を点検している作業員のおっちゃん達が目立つ。


 それにしても、駅か。

 私の祖国ソリアもそこそこの規模を誇る国家だが、ここまで文明は進んでいなかった。一応、知識としては駅や列車の存在を認知しているけれど、こうやって直接赴いたのはこれが初。

 あくまで都市伝説の域にすぎないが、エメリカは他国よりも120年先の技術を有しているらしい。それは盛りすぎでしょうと思うけど、確かに異質な文明であることは確かな事実だ。


 あちこちを見渡していると列車が眼前で停まる。

 って、これ……汽車じゃないわね。私の知る列車はもっとこうゴツゴツしてるんだけど、これは滑らかな形状だ。煙突もない。


 「――――こいつはディーゼル機関車だ」


 聞き慣れない、初めて知った単語だ。

 単語にすら戸惑っているのに、本当に領地経営なんて可能なのかしら……。でも、ここまで来たらやるしかないよね。

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― 新着の感想 ―
ディーゼル機関車ということは、概ねエメリカは1950年代相当といったところと推測しました。 ということは、120年の差があるなら彼女の故国は1830年代前後ということになりますね。 何となく物語全体の…
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