3話 裁判
裁判は数十分程度と、自分が想定していたよりも早く終わったが、クソ女に言い渡された罪はどれもこれもあまりに重すぎるものだった。
虐待とか脱税とか、そんな単語ばかりが裁判長の口から飛んでいた。
退廷する際、アイツは泣きじゃくっていたけど、心の中で心底嘲笑ってやった。
ちなみに、執行猶予はなしお実刑判決で、懲役は77年だそう。ななぁ!? あ、いえ、今のは気にしないでちょうだい。とある島国のプロサッカー選手のモノマネをやっただけだから。
裁判所を立ち去ると、近くの広場でティランプと話し合った。
お話の内容はもちろんさっきの告白のことだ。
「私は助けてくれたのは嬉しいわ、ティランプ。でも交際はできない」
「What!? 俺の顔が嫌か? それとも性格か?」
「いや、顔も性格もどちらかといえば好みの部類ではあるけれど……冷静に考えてみてよティランプ」
「俺は至って冷静だぞ!」
いやいや、真逆だろ。まあ面白いからそれは置いておくとして。
「ティランプ、恋人同士になるならもっと関係を深めるべきでしょ?」
「むう、それは確かにそうか……」
少し理解したのか、コクコクと頷く。
「それに私はただの令嬢だけど、そっちは国の指導者――――幼稚園児も分かる程釣り合ってないわ」
「……そんなことはないぞアヴァカン!」
あ、スピーチ始まりそう。
ティランプは身近にあったベンチにどっしりと座ると、手を無意識に動かしながら演説を語る。
「アヴァカン、確かに立場は重要だ。二等兵は軍曹の指示に従わなければいけないし、軍曹は少尉の命令に従わなければならない。だが――――!」
声のトーンを急激に高め、ベンチを勢いよく立ち上がる。
「それはあくまでも組織内での話だ。外ならば話が違う。まずここは資本主義国家のエメリカ――――友達やカップルになるのにそんな階級は必要ない。ホームレスと将軍が付き合うのもアリだ」
彼は誇らしげに即興の演説を続ける。
「もしもそれがいけないというのならば、即ち民主主義の崩壊へと繋がる。そう、それこそ――――お前がいたソリアのようにな」
「……なるほどね」
ソリア神聖王国は色々と厳格な国だった。体制はエメリカと同じく民主主義なのだけれど、大統領のエサドがやや左側に偏ったオークだったから行動や言論が常に監視されていた。
そう考えてみると、ティランプとこれからも関わるかどうかは別にして、ここに来たのは正解かもしれない。
「つまり、資本主義こそが最良の政治だ! 左翼の陰謀を打ち壊そう!」
ガッツポーズで最後の言葉を叫ぶティランプ――――直後、周りから拍手と歓声が鳴り響いた。
「えっ? なに?」
慌てて周囲を見渡すと数百人を超える人々がティランプを称えているではないか。中にはティランプの顔写真が印刷された旗まで持っている者まで。
こんな光景、ソリアでは絶対に見られなかった。いや、あるにはあったが、それは全てエサドを礼賛するためのプロパガンダだ。
まさに、真の自由を体感した瞬間であった。