用心棒が勇者御一行に復讐する話 テルマルテ抗争編
アインと五月雨が勇者に殺された。
「えっ……」
マリアは言った。
「大老の密命でね勇者エルフィンの抹殺命令が下されたの」
ツヴァイはゆっくりとマリアの顔を見上げる
「勇者抹殺命令?」
皆考えたことがあるだろうか?
魔王を討伐した勇者達はその後どうしたのかを故郷に帰って余生を過ごすのか?魔王の残党を狩るのか?
「そんなわけないよね!僕達はこの世界を!新しく作り変える!僕の世界を作る!」
マリアはツヴァイに刀を握らせる
「ツヴァイ…我々の仲間が2人も殺され、1人は謀反を起こした。これは許されないことなの本格的に動くことになるだからもう二度とこの刀を手放さないでいい?」
ツヴァイは刀を弱々しく握る
「この件は私達に任せて、来たるべき時貴方を呼ぶわ…それまで準備しときなさい。行こう茜」
茜はちょっと待て下さいと言った。
「ツヴァイくんを置いて行くんですか!?」
「このザマを見なさいよとても闘えるとは思えないわ。」
「でも!」
「次の犠牲者が出る前にやれることは私たちでやらないと」
そして2人はツヴァイの元を後にする
去り際にマリアが言った。
「それとあの子魔法を使ったあの子…あの子だけは守り抜きなさい。」
雨が降るツヴァイはよろめきながら自宅に戻る
刀を部屋の端に置いてベッドに倒れ込む
「2人が死んだ…」
部屋の入り口を叩く音が聞こえたフィリスの声だった
「ツヴァイいるの?開けるわよ?」
フィリスはずぶ濡れのツヴァイを見て驚いた
「ずぶ濡れじゃない!何してるの!?」
フィリスは部屋からタオルを探してツヴァイを拭こうとする
「やめろ…」
「風邪ひくわよ」
フィリスは優しくツヴァイをタオルで拭く
「何があったの?」
「俺の旧友が殺された…」
「そんな…」
フィリスはツヴァイの話を聞いた
「俺は失うことが怖かった…でもほんとに失っちまったよ」
「どうして…」
ツヴァイは頭を抱え涙をこぼす
フィリスはそんな姿を見たツヴァイを優しく包み込む
「大丈夫…大丈夫だから…今は一緒に悲しみましょ?アリスはフランが見てるから」
「私は貴方に救われた。地獄の底から救ってくれた…
今度は私が貴方を救う番、傷ついた心私が癒してあげる貴方がそうしてくれたように…
そして2人はお互いに寄り添い、傷を舐め合った。
部屋には雨が窓を打ちつける音と互いの吐息だけが聞こえた…
酒場 アライブ
重々しいドアの前にいかつい2人の男が立っていた。
シャルロッテはドアを開ける
「シャルロッテか…」
「やぁボスお呼びかしら?」
ギルドルフは書類を見ながら言った。
「そろそろフェルドのやつからうちの商品を返してもらおうと思ってな」
「例のあの女?」
「そうだ。輸送中に逃げ出しやがって」
「ずいぶん執着するのね」
シャルロッテは椅子に座る
「当たり前だ中々の上玉だからな貴族の連中が喜んで金を出すに決まっている」
「ほんと下衆ね」
ギリドルフは煙草に火をつける
「居場所はわかってるがなフェルドの組織の連中が本気を出せばうちらはやられるだから助っ人を追加しといた入れ」
重々しいドアから二人組が入ってくる
「あらあらこれはこれは」
ツヴァイ自宅
夜が明け雨はすでに止んでいた。
ツヴァイは目を覚ますと、隣にフィリスが寝ていた。
ツヴァイは布団を被せるとフィリスは包まった。
ツヴァイは起き上がり刀を見つめる
「いるのか?」
「イルサ…ヒサシブリダナ」
「ああ」
ツヴァイは顔を洗い刀を手に取る
「やっぱり手に馴染む…」
「モウイイノカ?」
「ああ、今回ばかりはこいつのおかげだな」
ツヴァイはフィリスを撫でる
「オマエのソイウトマエムキナトコロにミナヒカレルノダロウ」
「すまなかったな。大蛇」
「シンチュウオサッシスル」
ツヴァイは刀を腰に刺し手を置く
「フィリス…ゆっくりしてろ」
フィリスは目を閉じたまま頷いた。
ツヴァイはルクレールに顔を出しに行く
「フラン?いるか?」
2階から駆け下りてくる音が聞こえる
「ツヴァイ!もう大丈夫なの?」
「ああ、すっかりなアリスは?」
「まだ寝ているわ」
「様子を見ても?」
フランは頷き、ツヴァイを2階に案内させる
アリスは大人しく寝ており、部屋に入ってすぐ美しいと感じた
「とりあえず大丈夫そうだな」
「そうね…あの後すみれ色の人と、花のかんざしを刺した人が見てくれたけど大丈夫みたいよ」
「そうだったのか」
2人は部屋を後にし一階に降りる
フランはツヴァイに朝飯を出し言った。
「そう言えばフィリスは?ツヴァイの様子を見てくるって言ってたけど。」
「ああ、一晩泊まらせたよ」
フランは顔を手で覆って喜んで叫んだ
「ついに!?やだぁー!」
ツヴァイは呆れた様子で言った。
「何もしてないし、何も起きなかったぞ面白くなくて悪かったな」
咄嗟にツヴァイは嘘をついた
そしてフランはつまらなそうにした。
「そうそうボスが呼んでいたわよ。なんか切迫した様子だったけど」
ツヴァイは驚いたフェルドが焦ることが珍しかったからだ
「わかった。すぐ行こう」
刀を手に取り立ち上がろうとしたらフランが刀を見つめた
「その刀…もういいの?」
「ああ、足踏みしていても前には進まないからな」
「そう…フィリスのおかげ?」
ニヤニヤしながらフランは言った。
「だから何もなかったって、でも今回はあいつに救われたよ」
フランはツヴァイを優しく見つめ
「貴方とフィリスお似合いだと思うわよ?お互いの傷を知っているのって2人にしかわからないことだから、だからお互いの悲しみを分かり合えると思うの」
「そうかもな」
ツヴァイはルクレールを後にした。フランは優しく見送った。
エンジェルキス
エンジェルキスの店内は慌しく強面の男達が行き交っていた。
「ツヴァイさん!ボスがお呼びです!」
さっそくフェルドの部屋に案内される
「きたか!ツヴァイ!」
中には裏社会の重鎮達が並んでいた
「どうされました?」
ツヴァイは尋ねる
「ここにいる面子の店の奴らがな次々と襲われていてな、相手がわからない以上手も足も出ないのさ」
「相手の狙いは?」
「それがわからないから困っている無差別に襲っているのさ、客、商品、用心棒皆襲われててなまだうちは被害が出てないそれで皆助けを求めてここに集まってきたって感じだな」
裏社会の重鎮の1人が言った。
「そう言えばギルドルフの連中とフェルドの所だけが今の所無傷だが?フェルドはあり得ないと俺は考えている。ならギルドルフの連中の仕業か?」
「いや聞いたか所向こうも被害は少なからずあるみたいだ」
「なら俺らと同じくここにきてもおかしくはないだろ?」
「まぁ元々うちを抜けたやつだから今更力を借りたくないのかもな」
ツヴァイは言った。
「俺が調べてみましょう」
フェルドは助かると言って報告書を渡す
「被害者の調書だ何かわかるといいが」
「ありがとうございます。」
部屋を後にし目星しい場所に赴く
テルマルテ闇人街武器商工会
ツヴァイは最近の武器の流通状況を聞く
「最近大量に武器が流れたとかはないか?」
「いやないけどねぇーでもアルドカンパニーって会社が大量に鋼鉄が欲しいって依頼があったぐらいか?」
「アルドカンパニー?」
「先月できた会社みたいだ大通りにあるってあっちから仕入れるより闇人街の方が安いからって」
「利口だな。それで鋼鉄を売ったのか?」
「依頼は依頼だからね金になるならやるさ」
ツヴァイはその場を後にする
闇人街薬屋
「最近違法薬物を売買した形跡はあるか?」
「そんなのしょっちゅうだよ」
「大量に買ったやつはいないか?」
「アルドカンパニーってとこが買ったな」
「何を売った?」
「いや薬本体じゃねーよ原材料を欲しがっててなカタギの人間だったし、原材料は違法にはならねーからな」
その後もツヴァイは目星しいところに言ったがアルドカンパニーの名前しか聞かなかった。
そして闇人街から出て、大通りにあるアルドカンパニーに直接赴いた。
赤レンガ調の四角い建物だった。
ドアをノックししばらく待つと、メガネをかけた青年が出迎える
「こんにちは!アルドカンパニーへようこそ!どのようなご用件で?」
ツヴァイは青年越しに部屋の中を見たが特に怪しいところはなかった
「いくつか聞きたいんだが?」
「ええ!ご遠慮なく!」
「闇人街で鋼鉄と薬の原材料を大量に買ったとか?」
「ええ!買いましたよ!」
青年はニコニコしながら答えた。
「理由を聞いても?」
「鋼鉄に関してはうちで製造している武器の開発に使用しています!薬の原材料も新薬の開発で主に使用してます!」
「ちなみにそれらの輸出先は?」
「貴族街のアルフレッド様の所です」
「アルフレッド様?」
「はい!」
青年は終始笑顔のままだった
この日の収穫はアルフレッドという名前だけだった。
闇人街 夜間
「こっちだ!」
闇人街は慌しく人が蠢く
「こりゃひでぇー」
男達は無惨に殺された仲間を見る
「一体なんだって言うんだよ」
すると男達の真ん中に黒い影が姿を現す
「なっ!」
「しね…」
一瞬にして男達は倒れていく
「やるね〜」
「いつまでこんなこと続ける?決定打がないと沼にハマるぞ?」
「それは私らが決めることじゃないから」
「さぁ次行くよ」
テルマルテ貴族街
貴族街……テルマルテは三層構造になっている最下層が闇人街、下層が俺たちがいる、庶民街、上層が貴族街、貴族街に関しては、入るのに少し手間がいる
ツヴァイは貴族街の関所の前で通行書を見せる
「通行書を…」
兵士が手を差し出しその上に通行書を置く
「何用で?」
「貴族街にいるアルフレッドに会いたい」
「アルフレッド?爵位は?」
「わからん」
「少し待て、」
兵士は詰所に入り、別の兵士がツヴァイの元に現れた
「アルフレッド伯爵に用だって?」
「ああ、流通の件で良い案件があってな」
俺は咄嗟に嘘をついた。
兵士は少し考えた後、言った。
「二番街、3番道路の赤い家だ」
「ありがとう」
ツヴァイは関所を通り抜け貴族街にいく、
ツヴァイは先ほど言われた場所にいき、赤い家を見つけ窓から中を覗く
中には人の影はなかった
ドアをノックするが返事はない
裏に回り込み周囲を探すと庭に地下に続く、扉があった
「これは?」
ツヴァイはゆっくりと地下に降りる階段を下る
「これは!?」
そこは武器の製造工場になっており、数人の男たちが武器を製造していた。
鋼鉄の剣、槍、銃剣、そして薬を生産していた
「貴族街でこの規模を…」
ツヴァイの背中に何かが当たり声が聞こえた。
「だめだろ〜こんなとこに来ちゃ」
ツヴァイは後ろを振り向こうとするが
「動くんじゃねー撃つぞ?」
ツヴァイは横目でその人物を見る
「傭兵、銃剣のアルバートか?」
「よく知ってんねーん?てかツヴァイじゃねーかこんなとこで何してる?」
アルバートは武器を構えたままツヴァイを振り向かせる
「お前こそここで何してる?」
「仕事だよここの護衛さ金払いが良くてね」
「誰に雇われた?」
「なんだ知っててきたんじゃねーのか?」
「どういうことだ?」
「アルドカンパニーのアルフレッドは架空の人物ダミー会社で本体はギルドルフの組織の物だ」
テルマルテ ルクレール
夕刻前、客足が引いていき、落ち着いた頃、ルクレールのドアが開く、
「あらフィリス」
フィリスは軽く手を挙げ、カウンターに座る
「昨日はツヴァイと泊まったんだって?」
フランはニヤニヤしながら言ったが
「そんなんじゃないよ、ツヴァイ、少し疲れてるみたいだったから」
そう、といいフィリスに飲み物を出す
すると2階からアリスが降りてくる
「フランさん、ベッドを使わせてもらってありがとうございます」
「あらもう大丈夫なの?」
「はい…」
アリスはフィリスを見て怯える
「アリス…だったかしら?昨日はごめんなさい」
フィリスは素直に謝り、アリスは驚いた
「いえ!私こそフィリスさんとツヴァイの関係を知らなくて…」
フランは大笑いをする
「そうよ!わかったらわきまえなさい?」
フィリスも笑顔でアリスに言った。
三人は笑顔で包まれたが荒々しく、ルクレールのドアが開く
「フランー久しぶりだな」
「ギルドルフ…なんであんたがここに!?」
三人の顔色が変わる
ギルドルフがルクレールに入りギルドルフの背後に三人人影が見えた。
シャルロッテ、影、隠、
がルクレールに入る
「それにフィリスもいるな〜相変わらず美人だな」
「あんたに言われると虫唾が走るわ」
そしてギルドルフはアリスに目をやる
「ここにうちの商品が逃げ込んでいたとはな!」
「っ!」
アリスは肩を振るわせ怯える
「この子に手を出したら許さないわ!」
フランはそう叫ぶと
シャルロッテがフランに飛びかかり、平手打ちをする
「あんたは黙りな」
「ちょっと何するのよ!」
フィリスもフランの元に寄ろうとするが
「動くな女」
影がフィリスの腹を殴る
「おいおい、影殿、あまり傷をつけるな、フェルドの店の看板娘なんだから」
ギルドルフはアリスの髪を掴み言った。
「捕まえた…。3人共連れて行け、楽しませてもらうぜ」
ギルドルフは不敵な笑みを浮かべ
フラン、アリス、フィリスはギルドルフに連れて行かれる
「また頼むよ!」
「はいよー…….ルクレールまだやってるかな?」
仕事を終えたランドールがルクレールに向かうと、捕えられたフラン達を見かけ、咄嗟に身を潜めた
「フランさん!?それにあいつらは…フェルドさんに報告しないと!」
ランドールは猛スピードでフェルドの店へ駆ける
貴族街アルフレッド邸
アルバートは銃剣のハンマーを引きトリガーに指をかける
「喋り過ぎたな、まぁ惜しいが、ここで死んでもらう…」
そしてアルバートはトリガーを引くとハンマーが引き起こされ、銃剣についている回転式のシリンダー内にある火薬に火がつき剣の下にある銃口から弾が出る
ツヴァイは目には見えない速さでしゃがみ素早く刀を抜き、アルバートの喉元に刀を突き刺す。
アルバートは言葉を発することができなかった。
ツヴァイはゆっくりと刀を鞘に収め、倒れていく、アルバートを見下ろす
「お前の悪い癖は喋り過ぎだ」
そしてツヴァイ振り返り生産工場を破壊する
闇人街エンジェルキス
エンジェルキスのドアが勢いよく開かれ、ランドールが叫ぶ
「フェルドさんは!?」
受付の男が驚いた表情で言った。
「ラ、ランドールか…フェルドさんなら上にいるぞ」
「すまね!邪魔させてもらうぜ」
ランドールは2階に駆け上がりフェルドの部屋に入る
「フェルドさん!すんません失礼します!」
フェルドも驚き言った。
「お〜なんだ?どうした!?」
「フランさん達が!ギルドルフの連中に捕まっちまったんですよ!」
「なに!?」
フェルドは椅子から立ち上がり一瞬固まった。
「わかった…知らせてくれてありがとう」
フェルドは落ち着きを取り戻し部下を呼ぶ
「全員に召集をかけろ戦争だ…」
テルマルテ近くの村
村長の老人の男性が男に頭を下げながら言った。
「いやはや、勇者様には助けられてばかりで本当に助かります」
「それはよかったね!ところで約束した褒美は?」
「はい、村一番の美女でございます」
村長は乱暴に若い女性を差し出す
「い、いやだ…おじいちゃん私嫌だよ…」
若い女性は怯え村長に縋るが
「何を言っておるかね、勇者様に失礼だろう!?」
勇者は若い女性に手を差し伸べる
「大丈夫だから、僕に任せて」
若い女性はその手を差し伸べた勇者の顔を見ようと顔を上げるがそこには歪み切った勇者の歪な笑顔があった
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!お願いします!やめてください!」
女騎士ラウラが止めに入る
「エルフィン!いい加減にしないか!」
「なんだラウラ、邪魔すんなよ」
「もうやめようこんなこと」
ラウラは勇者に訴えかける」
「お前今更何言ってんの?散々見過ごしてきたくせに今更」
「もう私は限界だ…世界の為に、平和の為にと思って戦っていたが、もうこればかりは許せない」
「許せないならどうする?」
「エルフィン・ノーザンクロイスお前を斬る」
エルフィンは目を細めラウラを舐めるかのように体を見る
「ああ〜なるほどお前嫉妬してるのか?」
ラウラは一瞬体を震わせる
「ならお前が今晩相手になれ」
「な、なにを!?」
エルフィンはラウラに近づきラウラを抱き寄せる
「悪かったよラウラ、気にしてやれなくて」
エルフィンの表情は優しく穏やかになっていた。
「う、うん、私もごめんね、今晩甘えてもいい?」
ラウラも先ほどの威勢はなくなり、女性の色気を出していた。
「もちろんだよ」
2人のやり取りを見ていたマヤとテンリョウは呆れた様子だった
「見てられないわね、腕は確かなんだけどねあれは私は受け付けないわ、本当歪んでるわ2人とも」
刀を手入れしながらマヤは言った
「まぁ俺には関係ないが、まぁよくあそこまで元気があるな!」
「あんたもまだまだ元気でしょ?」
「俺は強い奴と戦う元気ならあるってこと」
「あっそう〜そんなことよりあっちの方って街かなんかあるの?」
「確かテルマルテって街がある」
「ふーん」
テンリョウは不思議そうにマヤを見る
「なんだ?気になるのか?」
「テンリョウあんた気づかない?」
「何がだ?」
「気づかないならいいよ私先に街に行くわ」
マヤは宿に戻る
「テルマルテ…ここまで気配が感じるとはね…久しぶりに会いたいわツヴァイ君」
マヤは支度をし1人テルマルテに赴く
テルマルテ闇人街 エンジェルキス
「よく集まってくれた!聞いての通りギルドルフの組織が俺の友人を人質に取った。これは宣戦布告とみなす!
故に友人を助ける為ギルドルフがいる酒場アライブに奇襲をかける!」
エンジェルキスに集まったものたちは武器を持ち、今にも暴れ出しそうな雰囲気だった。
「今こそ我々の力を見せよう!本物のヤクザ者の力を!」
フェルドが演説をしている最中にホールのドアが勢いよく開けられ部下が叫ぶ
「フェルドさん!店の前にヤバい奴らが集まってます!」
「向こうから来たか…数は?」
「50はいるかと」
フェルドは剣を抜き外は出る
「お前らは下がっていろ」
「ボス!俺たちがやります!」
「頭張ってる奴が先頭立ってやらなきゃお前らに示しがつかない、それに可愛い部下を死なせたくないんだよ」
「ボス…」
フェルドは部下達を引き連れ部屋から出ていく、
そして店の前にいるギルドルフの部下達に言った
「お前らでは役不足だ!失せろ!」
「ゔがぁ…」
ギルドルフの部下達は生気のないような声を発する体もフラフラとおぼつかない
「なんだ?」
「うがぁ!」
部下の1人がフェルドに剣で襲いかかるがフェルドは剣で防ぐが
「くっ!なんて力だ」
なんとか弾き返す
「こいつら…一体」
「フェルドさん!大丈夫ですか?」
「下がっていろ!」
フェルドは剣を指でなぞり炎を出す
「まとめて潰す…炎破・滅碎刃」
フェルドが横に剣を薙ぎ払うと50人近くいたギルドルフの部下は倒れていく
「力はあったが…手応えがないな…」
フェルドは倒れたギルドルフの部下達を見ると
月に照らされた人影がフェルドを襲う
「っ!」
フェルドの喉元を短剣が掠る
「良い反応ね」
「ギルド死風の隠だな」
隠は短剣を一度鞘に戻す
「恨みはないけどギルドの為なの…貴方を殺すわ…」
「やれるものならな」
隠は姿勢を低くし構える、それは猫のような構えだった」
「姿隠し・滅」
隠は闇と共に姿を消す
「ほぉ〜闘気で姿を隠すかだが姿は消せても闘気までは隠せんだろ」
フェルドは剣を地面に突き刺す
「炎方刃・灼」
フェルドを中心に炎が広がる
「っ!炎剣アルフェルドの名は伊達じゃないわね」
姿を消していた隠は炎により姿を現す
「実力が違うんだよ。しかしギルド死風はそんなものなのか?もっと手強いと思ったが本気を出すまでもないな」
フェルドは煽るように言った。
「なら死風の実力見せてあげようか?」
隠は短剣を投げつけるが明後日の方向に投げていた。
「おお〜危ない危ない」
フェルドは戯けた様子で言い、部下達も隠を馬鹿にしたような笑いをする
「馬鹿ね…隠殺・影身烈殺翔」
隠が言うとフェルドの肩から血が突如として吹き出す
「なっ!なに!?」
そして短剣をもう一度明後日の方向に投げる
そしてフェルドの腹部が出血する
「これは一体…?」
フェルドは隠が投げた短剣を見ると自分の影の腹部に短剣が刺さっていた。
「なるほどそう言うことか」
「そう言うことよ」
隠は短剣を素早く回収し、闘気を足に集中させ、素早く猫のように飛び跳ね、走る
隠はフェルドの影目掛けて斬りつける
「っ!くっ」
フェルドは次々と切り傷が増えていく
「舐めるな!!」
フェルドが叫ぶと周りが炎に包まれる
「調子に乗るなよ…」
フェルドは周りの炎を一気に自分の中に吸い込む
そしてフェルドは禍々しい鎧を身に纏っていた。
地獄のように暗く、業火のように赤い鎧を
「ヤバいボスが本気だみんな店の中へ!」
部下達は慌てて店に逃げ込む
隠は構える
「すごい闘気…こんなに…くっ!闘気だけで吹き飛ばされそう」
フェルドの闘気は赤くまるで炎のように燃え上がる
そして…
「舐めてんじゃねーぞ!インフェルノ・ヘル!!」
一瞬静けさが戻ってくるが、突如として隠の頭上に地獄からの業火が現れて高速で隠に襲いかかる
「間に合わない!」
轟音と共に闇人街が地獄の炎に覆われた。
「灰になったか?」
フェルドは隠がいた所へ歩いて行く
「灰も残らなかったか」
フェルドは禍々しい鎧の姿から本来の姿に戻る
その時囁く声で何かが聞こえた
「因果応報…」
地面から突如としてフェルドの背後から隠が現れ手のひらをフェルドに向ける
「なっ!?」
そして隠の手のひらから地獄の炎が放出された。
「蛇王・螺旋翔」
2人の間に剣士風な人物が現れ、地獄の炎を相殺する
「大丈夫ですか?フェルドさん」
ツヴァイがフェルドの肩を持つ
「助かった…」
「ずるいわね…助っ人なんて…流石にもう戦えないわまたね」
隠は影の中に消えていく
ツヴァイは追おうとするが
「ツヴァイ!追わなくていい」
フェルドに制止される店の中から部下達が飛び出してフェルドを店の中に入れるのをツヴァイは見送ると、
パチパチと拍手の音が聞こえた
「いやいや!刀また握ってくれたんだね!私は嬉しいよ!」
「っ!マヤ・エミルスティン…」
マヤは刀に手を置き言った。
「ツヴァイ君!ツヴァイ君ツヴァイ君!君の気配遠くまで感じてたよ!いや嬉しいな!師範までとはいかないけど中々強くなったみたいね!それと妹は元気?」
「しばらく会ってないからなわからない」
ツヴァイは構える
「この街に何か用か?裏切り者」
「嫌だなー裏切り者扱いはお仕置きが必要かな!」
マヤは刀を素早く抜き、ツヴァイに襲いかかる
「冥斬翔!」
マヤの刀からどす黒い斬撃が衝撃波と共に放たれる
「くっ!蛇円刃」
ツヴァイは蛇の幻影を体に纏わせる
マヤの斬撃は蛇の幻影によって消えていく
「へぇー!取り戻したのね」
マヤは素早くツヴァイに近づき一振りまた一振りと刀を振る
ツヴァイは刀で受け流す互いの刀が触れ合い、火花が散る
「アインと五月雨を殺したのか!?」
「あ〜それは私じゃないわよ」
お互いが離れる
「じゃあ勇者だとでも言うのか!?俺には信じられないあの勇者が人を殺すなんて」
「まぁ理想と現実は違うからね見ればわかるよてか私みればわかるでしょ!」
狂気ような笑い顔にツヴァイは鳥肌がたった
「しかしよくまぁ力を取り戻したねー![彼女]を失った心の傷は癒えたのかい…?」
ツヴァイは怒りが込み上げてきた
「っ![彼女]のことを口にするな!!」
「怒っちゃった、それ悪い癖……魔の型・魔刃殲滅翔!」
マヤの周りに黒い闘気が放たれる斬撃に変化し
ツヴァイに襲いかかる
「ぐっ!」
ツヴァイはマヤの斬撃て吹き飛ばされる
「まだまだ!!お仕置きは終わらないよ!」
「マヤ…もうやめてくれる?」
「なっ!」
マヤの足元に斬撃が放たれる
「これは!?」
「修羅烈爆衝」
足元の斬撃が爆発する
マヤは間一髪のところで避ける
「さすがはマリア・マグリアス師範」
「引きなさい」
マリアは刀をマヤに向けて言った
「久しぶりに会ったのにひどいですね〜」
「いいから…引け…」
マリアから凄まじい闘気が放たれる
「はいはい…もうちょっと遊びたかったけど」
マヤはその場を後にする
マリアはツヴァイの様子を見て無事を確認すると声をかけずその場を後にした。
「くそ…」
テルマルテ領主邸
テルマルテを見下ろすローブを着た、男が独り言で言った。
「何か騒がしいな…俺の街で好き勝手やってるわけじゃねーだろうな?」
慌ただしい足音が聞こえ男の元に初老の執事が男に言った
「や、闇人街で大規模な抗争が!」
「フェルドとギルドルフの連中か?」
「いえ、他にも怪しい連中が出入りしていると情報が」
男は腕を組み、執事に言った。
「きな臭くなってきたな。皇帝陛下の手前、この街を好き勝手にさせて置くわけにはいかない」
執事の男は息を呑む
「久しぶりに暴れたい気分なのでな、執務ばかりでは飽きてしまった。少し俺の我儘に付き合ってくれ爺」
「なりません!閣下!治安維持なら騎士団にお任せを!」
「なら騎士団も引き連れよう彼奴等も飢えているだろ」
執事は険しい顔になる
そして閣下と呼ばれた男は狂気が体から滲み出ていた。
「わかりました。5大英雄が1人狂乱王ハンニバル・ヴィルマール様」
「さぁ…狂乱の始まりだ…」