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『破天のディベルバイス』第12話 星の海にて⑤

 ⑤渡海祐二


 エルガストルムを、ディベルバイスへと向かわせてしまった。

 その事が今、何よりも悔やまれた。だが、進んでまたターゲットを取られに行く事は出来ない。その隙を与えない程、ナウトゥの動きは機敏で、執拗だった。

 カエラも、同じくレインに手こずっているらしい。彼らの攻撃は重い為、回避する為にはこちらも隙を作る訳には行かない。だから必然的に、こちらからの攻撃を控えざるを得なくなる。主導権は完全に、敵方に奪われていた。

 ラトリア・ルミレースの船団は、今やバイアクヘーを完全に守りの外に追いやられてフォーメーションも乱され、ただ右往左往する障害物と化していた。射出された戦闘機群とケーゼ隊がその中で激しくぶつかり合っているが、これらも互いに注意を引かれているうちに、ナウトゥやレインに撃墜される可能性がある。僕たちは、味方のケーゼに敵スペルプリマーを近づけないよう、密集する過激派船団からの脱出を図っていた。

『祐二君、もっと高度を上げて! バルトロ級からの対空砲火は気にしなくていい、追ってきたスペルプリマーも狙われるんだから、彼らが防いでくれる』

「了解。開けた場所に出たら、重力場を展開し直そう。反撃に回らないと」

 僕は上昇し、船団から数百メートルの高度まで移動する。目の前にボーアが一機現れたが、超電磁ブラスターを使われる前に刀を振るって切り裂いた。

 ちらりとディベルバイスの方向を確認する。ディベルバイスは、突進するように加速するバイアクヘーを機銃掃射で喰い止めており、その前方ではエルガストルムがニーズヘグを追い越そうとしていた。

 エルガストルムが戦艦を沈める様子を、僕は既に目視していた。あの船の武器は、強力な火炎放射。重レーザー砲には及ばない威力だが、それと原理を同じくするものを断続的に放てるというという点では脅威的だった。

 と、その時敵フリュム船が動いた。ディベルバイスの右舷前方に向かって、火炎放射を行う。はっと息を呑んだ瞬間、ブリッジから二百メートル程離れた位置で爆発が起こった。叫び声を上げる間もなく、更にもう一発。今度はパーティクルフィールドが展開された様子があったが、それは火炎放射を受けると、炙られた蝋の如く溶けて同化し、爆発の勢いを増大させた。

「シオン先輩! 皆!」

 あの辺りは、機銃室だ。生徒たちの特に集まっている区画。今の攻撃で、犠牲者は出なかっただろうか。僕は、居ても立っても居られない気分になった。

『気を取られちゃ駄目!』カエラの、いつになく切迫した声が響いた。『ナウトゥがそっち行ってる! 私の位置からじゃ撃てない!』

「何!?」

 ほぼ同時に警告が表示され、振り返ると、機械龍の一機がまたもや炎の渦をこちらに放っていた。咄嗟に重力バリアを展開したが、防ぎきれない。熱は受け止める事が出来たが衝撃を緩和する事は叶わず、一号機は押されて大きく後傾した。

「うわあっ!」

『祐二君!』

 視界の片隅で、ジウスド級を一隻沈めながらカエラが上昇してきた。追ってきたレインが炎を放つが、割り込んできた小型戦艦の残骸に当たって彼女には届かない。僕は「撃って!」と叫んだ。

「ナウトゥが僕に気を取られている隙に! 今なら倒せる!」

 彼女は、制御を一時的に封じられ落下する僕を助けるか、敵を撃つか一瞬だけ迷ったようだった。だが、歯を食い縛ったかのような押し殺された息が通信機を伝わり、覚悟を決めたらしくコンマ数秒のうちにナウトゥに向かって弓を引き絞る。ナウトゥの方は、船団から離脱してきて間もない二号機に対応しきれない。墜とせる、と僕は確信した。

 だが、次の瞬間。

『えっ……?』

 カエラの、唖然とした声が響いた。

 ナウトゥは、操縦者では絶対に対応出来ないような速度で振り向き、二号機に向かって炎を噴き出したのだ。カエラの反応速度はやはりモデュラスのもので、炎は彼女の機体に直撃こそしなかったものの、その肩部を大きく破壊してサブカメラを吹き飛ばした。……これがモデュラスでなければ、やられていた。

『何で……? さっきまで、私は死角に居たはずなのに……ナウトゥの操縦者からは見えない位置に居たのに、レーダーを見てそんなに一瞬で把握したって事? 幾らモデュラスでも、そんな出鱈目(でたらめ)な速度……』

 カエラは力なく漂いながら、ぶつぶつと呟き続けていた。少し遅れて船団を抜けてきたレインが、二号機の周りを泳ぐように周回し始める。ナウトゥもそれに加わり、彼女を輪の中から脱出させまいとするかのように回り始めた。

 僕はコントロールを取り戻すと、彼女を解放すべく下降軌道に入る。その間にも、頭は今起こった現象について、絶え間なく思考を巡らせていた。

 数秒後、僕は結論に辿り着いてはっと声を出した。

「シェアリングだ……」

『えっ、それってこの、タブレットに出ている……?』

「ああ。僕は一回、ストリッツヴァグンと戦った時に経験した」

 自分以外の、スペルプリマーに搭乗するモデュラスと五感を共有し、切り替えながら外界を知覚する事が可能になった状況。僕はあの時、ストリッツヴァグンのパイロットの存在をごく身近に感じた。その視点から、彼もしくは彼女が見ている景色をこの目で見た。

「シェアリングの方法はまだ分からない。あの時だって、何でそんな事が起こったのかも分からなかったんだ。でも……もしもさっき、ナウトゥのパイロットがレインの位置から、二号機の動きを見ていたんだとしたら」

『それじゃあ、この二機のスペルプリマーは……!』

「そうだよ、一人が一機ずつ操縦していたんじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」

 一体どうやって、という疑問が渦を巻く。僕たちに使いこなす事が出来なかった謎の機能を、僕たちよりも最近スペルプリマーに乗り始めたはずの彼らが、ごく普通に使用している。連携の域を、遥かに超えた連携。それぞれがスタンドアローンである僕たちでは、どうりで敵わない訳だ。

 僕たちも同様の事を行う必要がある。一度はストリッツヴァグンとも出来たのだから、不可能であるはずはない。あの時僕は、一体何をしたのだったか。思い出せ、と懸命に自分に言い聞かせた。確か、密着して組み合うような状態になったはず。至近距離で攻撃し合い、重力場を広げた。押し切られまいとその出力を上げ、敵機も同様に重力出力を増大させた。そして……

『助けて、祐二君!』

 カエラの悲鳴が、僕の思考を停止させた。はっと我に返り、僕は降下を再開する。

 二機の敵機は、円環龍(ウロボロス)を分割したかの如く互いの尾部を追い、激しく回転しながら二号機を包み込んでいた。次第に火花が生じ、炎の竜巻のようなものが出現して二号機を閉じ込める。中は、凄まじい温度になっているだろう。

 このままではカエラは、蒸し焼きにされてしまう。僕はぞっとして、彼女を包囲から脱出させようと加速した。

「カエラ! 待ってて、今助けるから!」

 彼女はホライゾンとの戦いで、僕を助けてくれた。今度は僕が、彼女を助けねばならない。だがそう思ったタイミングで、あたかも僕のその行動を狙っていたかのようにナウトゥが円環から分離した。龍の頭部、顎の形を模した歯型プレス機をコックピットに向け、僕諸共砕こうとしているようだ。

(マズい……!)

 二号機の周囲に発生していた炎の竜巻が消える。レインが過熱した二号機に巻き付き、損傷した機体を変形させようとしているのが目に入った。このまま僕たちはやられてしまうのか、という、諦めに近い感情が一瞬萌した。

 その時、予想だにしなかった事が起こった。

 下方の戦域から一機のケーゼが上昇してきて、一号機とナウトゥの間に割り込んだのだ。僕があっと声を上げる間もなく、ナウトゥの牙はその機体を上下から貫き、圧し潰した。

『ジュノ君!』

 ニーズヘグとの回線から、アンジュ先輩の悲痛な声が届いた。僕がはっとし、慌てて重力操作をやめ、光通信に切り替えると、割り込んできた彼──ジュノ・ゼンの瀕死の喘鳴が聞こえてきた。

『渡海……ごめんな。皆の事……宜しく頼む……!』

「待っ──」

 僕が言いかけた時、ケーゼは爆散した。頭部をそれに巻き込まれたナウトゥが、弾かれたように大きく身を仰反(のけぞ)らせる。仲間の危機を悟ったのか、レインは締め付けていた二号機を放り出し、こちらに向かって来た。

「……お前たちは!」

 僕は、考える間もなく重力刀を振りかぶった。

「また、僕たちを殺したなあっ!!」

 シェアリングが、今度は仇になったようだった。パイロットが受けた爆発のダメージを共有していたレインはこちらへの到達が遅く、またナウトゥもすぐに体勢を立て直す事が出来ないらしい。僕は、四散する黒煙の中に刀身を突き刺し、接合部の一部を抉った。

 一度刀を引き、煙が晴れたタイミングでもう一度振りかぶる。今度はコックピットを直接狙おう、と思った時、ディベルバイス本艦のブリッジから通信が入った。

『ワープ機構、発見! 天の川銀河を中心とする宇宙座標が……』

 マリー先輩の声が、興奮気味に届く。やはりあったか、と僕は思い、それが激化した感情を幾分か冷静な状態に戻してくれた。

『座標設定完了! ディベルバイスはこれから、この戦域を急速離脱するわ。勿論エルガストルムは私たちの居場所を突き止めて、また追って来るかもしれない。だけどここで、ラトリア・ルミレースの主力船団全部を相手にするよりはマシになるはず。一時的にでも、体勢を立て直さなきゃ』

『アイ・コピーよ、マリー』

 アンジュ先輩はまだ、ジュノの壮絶な戦死に感情の整理が追い着いていないようだったが、それを押し殺した声で通信に応じた。

『ニーズヘグはこれからケーゼ隊を回収して、そっちに戻るわ。祐二君たちは大丈夫なの? 戻って来られそう?』

「僕たちは……」

 僕は、それ以上ナウトゥに攻撃する事は選ばなかった。レインがこちらに着く前に脱出せねば、と考え、大きく旋回して敵スペルプリマー二機から離れる。そのまま二号機の方へ行き、カエラに声を掛けた。

「先輩からの通信、聞こえた?」

『ええ。早く、帰投しないと……』

 彼女の声は、機内に籠った熱のせいか苦しそうだった。

「大丈夫? もし(つら)かったら、僕がドッキングして運ぶけど……」

『ありがとう。でも、心配しないで。私よりも、今は伊織君たちが危ない』

 カエラは二号機の頭部を、眼下の船団に向ける。散り散りになりつつある戦艦の間隙に、雲の如く群がった敵戦闘機とケーゼ隊がぶつかり合っていた。あれでは、伊織たちの脱出は確かに困難だろう。

「僕たちで、活路を拓きに行こうか?」

『それは出来ないよ。ターゲットがこっちに向いたら、また時間を食う事になる。そしたら、ナウトゥやレインを振り切る事も出来なくなっちゃう。それはニーズヘグに任せて、私たちはニーズヘグを追っているエルガストルムに……』

 カエラが言っている途中で、ケーゼ隊が船団の中から飛び出してきた。早くもアンジュ先輩たちが、彼らに撤退するよう指示を出したらしい。だが彼らの動きは、ジュノがやられた事で動揺したのか目茶苦茶であり、後方から追撃を掛けてくる過激派を撃退しながら撤退しているのは伊織のみだった。

 伊織の機体が、襲来したバーデをまた一機撃墜した時、無秩序と化した戦場からバリ級がぬっと浮上してきた。伊織は危険を感じたのか、垂直方向に上昇して船の正面から離れる。その瞬間、バリ級の艦砲が放たれて離脱しようとしたケーゼをまた一機背後から爆砕した。

「あんなの……おかしい」

 僕は耐えきれず、目を背けた。また、仲間の命が散った。何故これ程あっさり死んでいくのだ、と思うと、現実が信じられない気がした。

 このままでは離脱する前に、皆が殺されてしまう。やはり、自分が助けに行くべきではないだろうか。もう一度敵スペルプリマーに襲撃の隙を与える事になるのだとしても、自分たちであればまだ、生き延びる確率は高い。もう、自分のせいで、自分が助けられなくて誰かが死ぬはごめんだった。

 誰かが死んで、僕が責められる事は──。

『皆、散開して!』

 アンジュ先輩の声が、突然回線を支配した。ケーゼ隊に向かって叫んだらしいが、その声量はヒッグス通信の無線機にもはっきりと拾われていた。

 機体を、ニーズヘグの方に向ける。攻撃空母は、いつの間にかターゲットを変更していたエルガストルムの火炎放射を避けながら、戦場へと突入しようとしていた。

「先輩、一体何を……」

『皆を安全に撤退させるのが、今の私たちの役目だから!』

『……こっちが危険になるかもしれない。それでも、本当にいいのか?』

 ダークの意味深長な台詞が、微かに聞こえた。アンジュ先輩は彼の台詞に対し、小声で何かを答えている。

 僕が更に何かを言う前に、

『主砲発射!』

 アンジュ先輩の叫び声と同時に、ニーズヘグから光線が一直線に撃ち出された。それは散開したケーゼ隊を避けてラトリア・ルミレースの船団に飛び、先程一機ケーゼを墜としたバリ級を貫く。大型戦艦は爆発し、それに巻き込まれた戦闘機群が、蒸発するように一気に消滅した。

 舞い上がっていた伊織の機体を先頭に、ケーゼ隊が次々にニーズヘグの下方に消えていく。格納庫内に入って行ったのだな、と分かり、僕はひとまず撤退準備が整った事に安堵した。が、直後に先輩から僕とカエラに通信が入った。

『祐二君、カエラちゃん。お願いがあるの。……私たちがディベルバイスにドッキングするまで、あなたたちはここに残って、エルガストルムの注意を引いていてくれるかしら?』

「えっ、どういう事ですか?」

 僕は耳を疑う。なるべく早く、皆がディベルバイスに戻る必要があると通信されたばかりだ。僕たちにだけ残れとは、本当にどういう事なのだろう。

 答えたのは、ダークだった。

『突貫工事でドラゴニアを魔改造したニーズヘグには、欠陥がある。船内システムに於けるエナジーの分配が、明確な単位ごとに分けられていない点だ。機銃エナジー、そして推進機構。これらのエナジー分配がそれぞれ孤立していない為、消費の激しい主砲を使えば推進力も大きく消耗する。恐らく、ニーズヘグはディベルバイスに戻るだけで燃料が底を突くだろう』

「そ、それを何で最初に言わないんだよ!」

 つい、大声で叫んでしまった。言ってくれれば、ニーズヘグが主砲を撃つ前に僕たちで船団を喰い止める事が出来たかもしれない。実際僕は先程、カエラには駄目だと言われながらも、伊織たちを脱出させる為に動くつもりだった。

『私たちが出る事で、皆にちゃんと戦って貰う為よ』

 アンジュ先輩は、整然と答えた。

『ニーズヘグは指揮艦。だけど、いざとなったら戦わなくちゃいけない。皆、私たちが戦う事で不安になったり、そのいざという時を恐れて、自分たちから敵に向かう事を躊躇うようになったらいけないと思ったの』

『時間がない、話を急がせて貰う。……故に俺たちには、エルガストルムから逃れる為に直線コースを迂回したり、敵の攻撃を防ぐべく射撃を行ったりする余裕は最早残されていない。ケーゼ隊を含む生徒の安全な帰投の為には、貴様たちスペルプリマーパイロットの力が必要だ』

「……アイ・コピー。そう答えるしかない状況だね」

 僕は、先月から半ば流れで自分が背負い続ける事になった責任に苛立ちを感じながら、こちらに引き返してくるエルガストルムを向いた。どうやらニーズヘグを注視していた敵も、ケーゼ隊が格納されるのを見てディベルバイスの主戦力がこちらに集中していると気付いたらしい。まさか、ディベルバイスがこれからワープで逃走しようとしているとは思ってもみないだろう。

 僕はカエラに声を掛け、正面からエルガストルムに突進した。わざとそのブリッジに向け、それぞれの武器を突き付けて攻撃の意図を示す。真紅の宇宙船が火炎放射を行うと、二人で同時に上昇し、その射角から脱出する。

 上空で、態勢を立て直したナウトゥ、レインが再びこちらに襲い掛かろうと方向転換した。

『このまま過激派が再起したら、私たちには分が悪すぎるね』

 カエラが呟く。僕は肯き、ディベルバイスに戻って行くニーズヘグを見つめた。進路先では、火炎放射攻撃にたじろいだように船体から離れて漂うバイアクヘーの姿がある。ニーズヘグが本艦にドッキングする段階になったら、あちらが攻撃する事も防がねばならないのか、と僕は思った。

 エルガストルムを、可能な限り引き離す事。それに成功しなければ、今生きている命全員の生還は望めない。

『ニーズヘグ、本船から一キロメートル地点まで接近! 誘導信号を点灯!』

『バイアクヘーが再び臨戦態勢に! 右舷、弾幕を急げ!』

 ブリッジで舵取り組が慌ただしく叫ぶ声が、断続的に耳を打つ。僕たちは四方から襲い来る敵に攻撃し、また向こうからの攻撃を躱し、崩壊しかかったラトリア・ルミレースの方へ誘導していく。それは危険で、技術と精神力の限界を試されるような作業だった。

『ドッキング……が』

 ラボニ先輩の声が、急に萎んだ。僕はまたもディベルバイスの方を見、そこで「ああ」と、やりきれない気持ちで飽和した声を漏出させた。

 ニーズヘグは、ドッキング一歩手前というところでエナジー残量が尽きてしまったようだった。バイアクヘーと激しく撃ち合いを行っている船の下で、力なく誘導信号のラインから外れるように漂っていく。

「……カエラ」僕は、過激派船団に突入する一歩手前の場所で彼女に通信した。「このままエルガストルムを、船団に突っ込ませる。そしたら敵のスペルプリマーを振り切って、大急ぎでディベルバイスに戻るよ。僕が下から押して、ニーズヘグを本艦に連結させる。君はバイアクヘーの注意を逸らすんだ」

 船を下から押す、という言葉に、カエラは僕がホライゾン戦で行った行動を思い出したらしい。内なる不安と戦っているのか、数秒間返事はなかった。

 やがて、

『……絶対、二人一緒に帰ろうね』

 決意を湛えた短い言葉が返ってきた。

 僕は強く肯き、役目を果たすべくエルガストルムを睨み直した。

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