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第九話 ハロルド商会

――まえがき――

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします(^o^)


第二章 第九話 ハロルド商会


 高級宿アイコスリアに滞在して四日後の夕刻、ルーカスたちは古着屋クローニャに向かった。予定通りなら仕立てを頼んだコートはすでに出来上がっているはずだ。


「ルーク様、お待ちしておりました」

「仕上がっているか?」

「はい。どうぞこちらに」


 四人が二着ずつ、計八着のコートはどれも満足のいく仕上がりだった。ひとまず試着して全て問題がなかったので、商品を受け取って店を出る。


 それからの四日間は帝都を散策して回った。その間にブラスから用意してもらったブラックスターのエサを受け取る。そして五日目の朝、エリアスがルーカスの許に戻ってきた。


「我が主、お待たせしたでござる」

「エリアスか。馬は?」


「問題ござらん。ホースマンに預けてきたでござる」

「そうか」


 前日、エリアスの配下の密偵からあらかじめ馬の到着を知らされていたので、ブラスに伝えてあった。二頭目のベイシアブラックが来ると聞いて目を丸くしていたが、会頭ウィルフレッドの発注だと知って大喜びした。


 しかしそれも束の間、神のお告げですぐに聖教会のアバスカル支部に寄進されるはずだと知るとガックリと肩を落としていた。ルーカスたちがいなくなってもベイシアブラック種を世話出来ると思っていたのだろう。彼は少々気の毒に感じた。


「本当にありがとうございます。お約束の金貨二千枚です」


「これは提案なんだが」

「何でしょう?」


「馬は寄進するとして、ここで世話をすると伝えてみたらどうだ?」

「と、仰いますと?」


「帝都にはベイシアブラックはいないんだろう?」

「ええ、その通りです」


「ということは聖教会の者が満足に世話を出来るとは考えにくいと思わないか?」

「言われてみれば確かに……」


 トータリス聖教の信者は聖教国に限らず、コートベイシア大陸中にいる。中にはベイシアブラックの世話に長けた者もいるだろう。しかしまさかそのためだけに、人材をアバスカル支部に呼び寄せるなどあり得ない。


 ということはつまり、帝都でベイシアブラックの扱いに慣れているのはブラスただ一人なのである。


「もちろん対価は支払わせることを勧める。エサ代だけでもバカにならないだろうからな」

「ブラスはそれほど優秀ですか?」


「うちのブラックスターの毛並みを見てみるがいい」

「特別扱いするとのことでチップを頂いたようですし、その分の仕事をしたということでしょう」


「違うぞ、ウィルフレッド殿。本当は期待以上の仕事をしたからチップを渡したんだ」

「そこまで見込まれたのですか。でしたらルーク様の提案、司教様に話してみましょう」


 そこでふとルーカスは非常に大切なことを思い出した。


「ウィルフレッド殿、聞きたいんだが」

「私にお答え出来ることでしたら何なりと」


「実は俺は商業組合にも登録していてな」

「なるほど。税のことですね?」

「察しが早くて助かる」


「それでしたらご懸念には及びません。私はトータリス聖教に寄進しただけですので」

「ああ、そういうことか」


 ルーカスとの取り引きは他言無用で、商業組合はわざわざ寄進されたベイシアブラックの入手経路を探るようなこともない。だから彼が二千枚もの金貨を手にしたことも知られないというわけだ。


 脱税は大罪だが、もしバレても今回の件ならいくらでも言い逃れは出来るとウィルフレッドが言う。


「例えばですが、馬の入手を商人ではなく冒険者であるルーク様に個人依頼をしたとすればよろしいのです」

「その手があったか」


「事実、ルーク様が商人だと知ったのはつい今し方ですから」


 確かに商売は帝都ではなくクラウディオ辺境伯領で始めようと考えていたため、ルーカスがこの旅で自身を商人と名乗った相手はウィルフレッドが初めてだった。


 冒険者組合に依頼を出さなかった理由も、継続的にベイシアブラックを扱うのは困難なため個人依頼としたことにすれば辻褄が合う。冒険者としての実績よりも秘匿性の方が重要だったと説明すればいいだけだ。


「ですが口座に入れるのは時期を見られた方がよさそうです」

「それはそうだな」


「もしくは冒険者組合に別口で口座を開くという手も」

「ああ、その手があったか」


 ルーカスは商業組合の受付嬢が、各組合で口座を分けることも出来ると言っていたのを思い出した。ならば冒険者活動をするための資金は、商売とは別口の口座に置くことにすればいいだろう。


「ルーク様はこの後クラウディオ辺境伯領に行かれるんでしたね?」

「ああ、そうだ」


「それではこちらをどうぞ」

「これは?」

「ハロルド商会の会証です」


 ルーカスが手渡されたのは女神に見える神々しい女性が手を差し伸べている姿が刻まれた、親指ほどの大きさのインゴットだった。厚さは二ミリくらいで、ペンダントにも出来るようチェーンを通す穴がある。


「特に私共を贔屓(ひいき)にして頂く必要はございませんが、何か問題が起こってもお力になれることでしょう」

「ハロルド商会のお墨付きってところか」


「そのようなものです。領都ミムーアには私共の支部もございますので、どんなことでも遠慮なくお申し付け下さい」

「恩に着る」


「このご縁に感謝致します」


 その翌日、ルーカスたちは宿を出てクラウディオ辺境伯領へと向かう旅を再開した。


 ウィルフレッドが聖教の司教に働きかけ、ブラスが寄進されたベイシアブラックのホースマンに選ばれたのをルーカスが知るのは、それより少し後のことだった。

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