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400話記念話12 魅惑のチョコレート3

400話記念話12 魅惑のチョコレート3



 明らかに有美の様子がおかしい。


 目はとろんとしているし、言動もめちゃくちゃ。極め付けには顔が真っ赤ときたら、疑う症状は一つしかなかった。


(うわ、やっぱりか……)


 案の定というか。チョコレートの入っていた箱の裏をよく見てみると、そこには成分表と共にアルコールの表示があった。


 そういえば、海外のチョコレートにはお酒の成分が含まれていることがよくあると聞いたことがある。うちの両親は結構お酒を飲むから、それに合わせてアルコール入りのをお土産に選んだのだろう。


「ね〜ぇ。なんで逃げるの? せっかく二人きりなんだから、ひっつこうよぉ」


「あ、ちょっ……」


 ぴとぉ。一瞬気を抜いた隙に、有美は気に引っ付くコアラのように俺の腕に巻きついた。


 本人も言っていた通り、めちゃくちゃ身体が熱い。


 ただ、同じチョコを食べたはずの俺には酔う感覚はおろか、その身体の発熱すら無かった。


 ロシアンルーレットたこ焼きのようにどれか一つだけアルコール入りというわけでもないだろう。なら、単に有美がお酒に弱かったのか。まあ遺伝を考えれば俺が極端に強かった可能性もあるけれど、チョコで酔っ払うなんて聞いたことがないし。多分前者だろう。


「んん……好き。えへへ、しゅきぃ……」


「っ!? あ、あの、有美? 水、取ってこようか?」


「いらなあ〜い。というか離れちゃヤ」


 ん゛ん゛ッ! なんだこの可愛い生き物!!


 もしかしてお酒のせいで幼児退行してるのか? いつもだって二人きりで甘えんぼモードに入った時は大概だけれど、今の有美は余裕でそれ以上だ。


 腕にはずっと頬ずりしているし、無防備なシャツの胸元からはその……見えそうだし。


 正直まだまだ見ていたいけれど、やっぱりこのままではいけない気がする。今は気持ちよさそうな酔い方で済んでいるからいいけれど、こういうのは後から悪化してしまうこともあるのだ。実際に俺は父さんがそうなってトイレにこもっているのを何度も見たことがある。


 やっぱり、なんとか水だけでも飲ませよう。俺だって有美に甘えられたい気持ちはあるけれど、この後体調を崩されたのでは意味がない。


「じゃあ、一緒に取りに行くよ。有美今酔っちゃってるんだから。せめて水だけは飲んでおこう?」


「酔う……? わらひお酒なんて飲んだことないよお?」


「チョコにお酒が入ってたの。ほら、立って?」


「んぅ……」


 まるで子供をあやしてるみたいだ。


 わがままで、甘えんぼ全開で。お酒は本性を呼び起こすなんて言うけれど、もしかして普段、あれだけ甘えていてもまだ我慢している節があるのだろうか。


 こういう、まだ俺の知らない有美の一面を見られるのは嬉しいけれど。やっぱりどうしても心配が勝ってしまうな。普段の彼女を知っているからこそ、余計に。


「かんじは……わらひとイチャイチャするの、嫌なんら……」


「へ?」


「わらひに、魅力が無いから? もう、嫌いになっちゃった?」


 ゆ、有美さん……? あれ? なんかまた様子がおかしーーーー


「捨てないで……ひっ、ぐ。嫌いになっちゃやぁ……っ!」


「!!? !!!??」


 酔いの段階が増したのか。さっきまでの用事退行に加え、普段の凛々しい彼女の姿は微塵も無くなり、ぼろぼろと大粒の涙を流して泣きじゃくる。



 泣き上戸……だと?

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