400話記念話7 ready to fight3
400話記念話7 ready to fight3
挑戦者は四人。ボクシング界の新星さんとやらと対決する順番は、くじ引きによって決められた。
ちなみに真島さんは最後である。もしかしたら前任者三人のうち誰かが刺客を倒してしまった場合は真島さんの試合は無くなるんじゃないかと思ったが、ここは流石テレビ。
どうやらその場合は勝利したチャレンジャーと残りのチャレンジャーが再びタイマンを行い、そこで見事勝利すれば賞金をもぎ取れるシステムらしい。とりあえずこれで真島さんの試合を見れることは確定したのでほっとした。
『では、早速第一試合をーーーー』
そうして、まずは一人目。
風貌としては腕に刺青の入った明らかにヤバい人だった。挑戦者紹介によると一応ヤクザなどではなく、普通に現場仕事をしている人らしいが。小麦色の肌に圧倒的な筋肉装甲、そして極め付けの丸サングラスまであるものだから、よくもまあ番組スタッフの人はこの人を連れて来れたなと思う。下手をすればボコボコに殴られそうなものなのに。
「ボクシンググローブは付けないんだな……。武器とかは流石にないけど、素手なら何でもありって。これ、めちゃくちゃ怪我人出るんじゃないか?」
「ど、どうしよう。真島さんの試合は見たいけど、ちょっと怖いかも……」
由那は人の血を見るのが苦手だ。
いやまあ、得意な人の方が少ないとは思うのだが。スプラッター映画なんかはもちろん観れないし、前にはゾンビゲームでもグロいのから目を逸らしてたっけ。
それに、もしかしたらあの酔っ払いおじさんの件のせいで、怖い男の人に対する恐怖心のようなものがより底上げされてしまっているのかもしれない。新星さんと大工さんの試合内容いかんでは後でこっそり一人で見ることになるかもしれないな。
「無理して見なくてもいいんだぞ。一応録画もしてあるし、なんならあとで俺が一人で見て結果だけでも伝えられるし」
「むぅ……いや、やっぱり一緒に見る! あの怖い人たちがテレビの中から出てくるわけじゃないもんね。それに、仮に出てきたってゆーしが守ってくれるもん!」
「あはは、無理言うな?」
しかし。このような心配は、一瞬にして無に帰すことになる。
なぜならーーーー
「いやつっっっっよ。バケモンかよ」
「あ、あの人大丈夫? ビクともしないよ……?」
新星さんの名は、伊達ではなかったのだ。
プロボクシング界に殴り込み、新星に相応しい好成績を残したその人は、一回りは自分より体格が大きいであろう大工さんを、簡単にぶちのめして見せた。
きっと純粋なパワーだけで言えば負けていただろう。しかし、彼には″技″があった。
大ぶりのパンチを躱す動体視力に、すかさずカウンターを入れる男気。そして相手をダウンさせることに全神経を集中させた右ストレート。ボクシングで培われたそれらの技を全てふんだんに使った彼は、実に一分も時間をかけるとこなく、試合を終わらせたのだった。
そしてそれは、その後も。
二人目、三人目も同じようにして血を見せることもなく鮮やかにダウンさせられ、担架で運ばれていった。きっとあれでも手加減していたのだろう。おそらく気絶しているだけで、大した怪我は無い。
俺たち目線からすれば、むしろそのことが逆に怖かった。不良映画よろしくボコボコに殴るのではなく、鮮やかに倒してしまうその姿には、尊敬の意もあつまたが、それと同時に恐怖心も宿っていく。
きっとそれは、その場にいた人たちもそうだったのではないだろうか。
だがーーーーたった一人。俺たちの憧れの人は、笑っていた。
『え〜、いよいよ最後の挑戦者となってしまいました。私たちが選りすぐりで集めた彼らでも、ボクシング界の新星には届かないのか!? それともこの漢が最後にジャイアントキリングを見せてくれるのか! では、ラストチャレンジャー……真島穂高さん、入場です!!』




