400話記念話1 心音という名の安眠剤1
400話記念話1 心音という名の安眠剤1
「ねぇゆーし! 私とんでもないことに気づいちゃった!!」
「ん〜? おたまじゃくしがカエルになることはお前以外みんな知ってるぞぉ……」
「ち〜が〜う! そんなことじゃない! あと私でもそれくらい知ってるよ!?」
それは、とある日の朝のこと。
夏休み真っ只中、いつものようにダラダラと過ごし、そのまま寝落ちして。抱き合って眠りについた俺が目を覚したのは、由那の声に起こされたからであった。
普段はコイツだけ先に起きて朝ごはんを作り、終わってからもう一度布団に潜り込んでくるのだが。時間を見る限り、どうやらそれもまだらしい。一体こんな時間にどうしたというのか。
「よしよし。とりあえずあとで聞いてやるから。俺はもう一眠り……」
「わぁあ!? ちょ、待って! せっかく起きたんだからもう少し! あと私の話ちゃんと聞いてよぉ!!」
「えぇ……だってもう前置きからロクなことじゃない予感しかしないぞ? とんでもないことに気づいた、って」
「ふっふっふ。ゆーしさんは私のことをナメすぎだよ。いいのかにゃあ? そんなこと言って。聞かなかったら後悔するかもよ〜?」
「……」
め、面倒臭い。
もう顔が言ってる。「聞いて! 聞いて!!」って。
十中八九くだらないことな自信があるのだが、このままでは引き下がってくれなさそうだ。仕方ない。貴重な朝の睡眠時間を守るためにも、聞いてやるか。
「何に気づいたんだよ」
「それはズバリ! 私の安眠アンド熟睡のメカニズムについてなのです!! ででどんっ!!」
「安眠の、メカニズム……?」
「うむっ。なんとねぇ、私が安眠、ないしに熟睡するにあたって、ある条件を発見したのです。これを用いれば全国の睡眠不足に悩む子羊ちゃんたちを救い出すことが可能ッッ!!」
「……ふぅん」
なんなんだ、それは。
コイツまさかまだ寝ぼけてて支離滅裂な言動を無意識に……いや、違うな。目はキラキラしてるしぱっちりと開いてる。これでまだ意識が夢の中だってんなら夢遊病もいいところすぎる。
なら、シラフで言っているわけだ。この自称日本全国から睡眠不足を無くす女神さんは。
「本当ならノーベル賞ものだな。今年の平和賞は由那で決まりかぁ」
「えへへ、でへへへへっ。やっぱりゆーしもそう思う? これ、完全に天才の発明だもんね!!」
「で、一体なんなんだよ。その条件とやらは」
「ふふ〜んっ。お教えしよう! それはズバリ!!」
むふんっ、と鼻息を荒くしながら。目一杯溜めて、溜めて溜めて溜め続けて。その大きなたわわを思いっきり張ると、言った。
「人は、大好きな人の心音を聞きながら眠ると無条件で熟睡できてしまうのです! 私はこれを使い、ここ最近は毎日朝起きれなくなりそうなほどに深い眠りを経験しています!!」
「…………なるほど?」
大好きな人の心音を聞きながら眠る。
それって、結局大好きな人と添い寝すると安心してよく眠ることができる……ってことか?
ーーーー由那さん。多分それは、全国各地のカップルさんたちみんなが周知の事実だと思いますよ。




