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387話 友情の連携5

387話 友情の連携5



「ひなちゃん!」


「はいっ! そこですね!!」


 この攻撃に時間はかけられない。


 勝負はバスケ部の二人が戻ってくるまでにつける。そのためには少しだってモタつけないから。


 薫ちゃんの意志を汲み取ったのか、私に合わせて並走するひなちゃんと、一気に攻め上がる。ドリブルで相手を抜くなんてできない私でも、周りと協力すればーーーー


「由那ちゃん!」


「有美ちゃん……お願いッ!!」


「任せて。次はゴール前で、ね!」


 有美ちゃんにボールを託し、ゴール前へと走る。


 私は何度頑張っても下手くそなままだった。ドリブルはまともにできないし、ディフェンスに付いても一人じゃ数秒と持たずに抜かれる。シュートだって、十本打って一本決まればいいほうだ。


 それでも、この一ヶ月。有美ちゃんに何度も教えてもらって、いっぱい練習した。


 たったの一ヶ月で別格に上手くなれるわけじゃない。まだまだ有美ちゃんのようにはいかないし、マイナスから始まってやっとスタート地点に立てただけかもしれないけど。


(ゆーしに……私の大好きな人に、頑張ったねって。いっぱい褒めてもらいたいんだもん!!)


 みんなで勝ちたい。そんな当たり前の気持ちよりも先に、こんな……自分勝手な気持ちを優先しちゃうなんて、私は悪い子かな。


 私がシュートするのと有美ちゃんがするの、どっちの方がクラスのためになるかは明白だ。勝ためには成功確率が高い方を選ぶのがいいに決まってる。


 そんな至極当たり前の常識を無視して……これが悪いことだと分かっていても、身体は走るのをやめない。


「由那ちゃん!」


「うん……っ!」


 三人、四人。篠崎さんのマークにつく二人とまだ戻って来れてはいない二人を除いた全員が、フィニッシュは有美ちゃんなのだろうと。全霊をかけて決死のディフェンスで飛びかかる。


 有美ちゃんは引き付けてくれたのだ。相手の意識が自分に向くように。パスという選択肢を相手の頭から消し、最後に打つのは自分だと。刷り込むように。


 そうして生まれた隙を突き、最前線に走っていた私の足元から、また抜きで通されたグラウンダーのパスがバウンドする。ボールの軌道が変わった先は、私の胸元ドンピシャだ。


「頑張れ由那! 決めろぉっ!!」


 観客席から、大きな声が轟く。


 一瞬視線をやると、二階席で静かに応援してくれていたはずのゆーしが、立ち上がって叫んでいた。ゆーし、恥ずかしがり屋さんなのに。


(ありがと……大好き)


 その声援は、私が一番力を貰えるものだ。一番……嬉しいものだ。世界一大好きな男の子の頑張れがあれば、私はなんだってできる。


「てえやッ!!」


 ゴール前、周りのディフェンスの届かない位置から放ったシュートは、有美ちゃんのうつ美しいものとは全く別物で。弱々しくブレブレな放物線を描きながらも、ゆっくりと。ゴールへ近づいていく。


 そしてーーーー


 ガコンッ。


 ゴールリングに衝突し、空を舞って。


 サシュッ……。


 


 試合の終わりを告げるホイッスルと共に、ネットを通過したのだった。

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