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386話 友情の連携4

386話 友情の連携4



(むぅ……私がシュート打てるチャンス、来ないなぁ……)


 ゆーしに褒めてもらいたい。練習の成果を見せたい。そして私も、有美ちゃんや篠崎さんみたいにかっこいいと拍手されたい。


 けど、とにかく今向こうのチームはこれ以上点を入れさせまいとどんどんディフェンスに力を入れ始めてる。私には有美ちゃんみたいにスリーポイントを決められるほどの技術はないし、そもそも力が足りなくてゴールまでも届かない。


「篠崎さん、こっち!」


「よぉし……お願いっ!」


「あっ……」


 ガコンッ。有美ちゃんの鮮やかなレイアップシュートが決まり、スコアは七対零へ。大歓声の中二人のハイタッチが響く中、残り試合時間がいよいよ一分を切る。


 七点差……これだけあればきっと後半の子達も耐え凌げる。あと数十秒守り切れれば、それでーーーー


「えっ!? な、何!?」


「絶対に点は取る……このまま終わるなんて、できないッッ!!」


 しかし、みんながその僅かな油断をした瞬間。バスケ部の二人が動いた。


 左右から一気に駆け上がると有美ちゃんと篠崎さん、そしてディフェンスをするためにハーフラインまで下がっていたわたしたちをも抜き去り、ボールも持たぬまま走る。


 そしてーーーーそれに合わせ、ゴール下から一閃。とてもパスとは思えない豪速球の上投げが、コートを縦断した。


「う、嘘……」


「ラスト! ここで三点返すよ!!」


 私たちのミスだ。


 前線にいた有美ちゃんと篠崎さんは反応できるわけない。二人が戻るまで時間稼ぎをする役割は私たちなのに。


 ほんの一瞬……気を抜いたその瞬間を突かれ、ものの数秒でチャンスがピンチへと変わる。


(せっかく、有美ちゃんたちが頑張ってくれたのに……私が、こんなことを考えたから……?)


 ダメだ、もう間に合わない。完全にボールも二人も私たちの後ろへ行ってしまった。


 この三点を取られても、私たちが負けることはない。後半の子達も四点のリードで勝てるかもしれない。


 でも……有美ちゃんが取ってくれたそれを私たちのミスで奪われることが、どうしても我慢ならなくて。悔しくて……涙が出そうになった。


 あの二人に追いつくことなどもうできないと分かっているのに。必死で後ろを振り返る。反射的に動いた身体で。無理だと分かっていてもーーーー


「どっっっっせええええいっっっ!!!!」


「あえっ……」


 バチィッッ!! 体育館中に、甲高い音が響き渡る。


 それは、手のひらとボールが衝突する音だった。


「いっってええええええッッッ!!!!!」


「薫、ちゃん……えっ!?」


 全員が抜き去られた。確かにそう思ったのに。


 違った。たった一人だけ。最後列で身を潜め、誰よりも適当に……そして誰よりも爪を研いで。薫ちゃんは一人、備えていた。


「薫、アンタ最高ッ!」


「ぐぬお……に、二度とごめんだこんなの。私は後ろで大人しくしてるつもりだったのによお!!」


 あの威力のボールに無理やり手のひらをぶつけたのだ。きっとその衝撃はすさまじいものだったのだろう。右手を押さえて苦しそうにそう言うと、薫ちゃんは弱々しい左手で私にボールを託す。


「由那ちゃん、あとはお前だけだぞ。神沢君にかっこいいところ、見せたいんだろ?」


「っ……!」


「行ってこい! 最後にかっこいいの決めて、練習の成果見せつけてやんな!!」


「うんっ……ありがと、薫ちゃん。絶対決めてくるから!!」


 ディフェンスの特に上手いバスケ部の二人は今、薫ちゃんに予想外のパスカットをされてまだ最前線に置いて行かれてる。今なら、私でも……


(薫ちゃんが作ってくれたチャンス、絶対無駄にはしない!)


 正真正銘、最後のチャンス。最後の攻撃。



 ここに、全てを乗せる!

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