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383話 友情の連携1

383話 友情の連携1



「ゆ〜し〜! 見〜て〜て〜ね〜!!」


 ぴょんぴょん、と跳ねて大きく手でジェスチャーを付けながら。ピッチの上に立った由那は俺に呼びかける。


(さ、流石に少し恥ずかしいな……)


 それを嬉しいと思う反面。まわりからの視線が凄まじく、顔に熱が篭るのを感じた。


 同級生や先輩方からは嫉妬の視線を。保護者からは見守るような生暖かい視線を向けられ、そのうえ隣に座っている寛司にもクスクスと笑われる始末。


「何笑ってんだよ」


「いやぁ? 可愛い彼女さんからのラブコールで赤くなる勇士は可愛いな、と」


「おま……っ。はぁ」


 由那達の前に立ちはだかるのは一年一組。どこのクラスが強いとかの情報は一切持っていないので強さは分からない。


 しかしまあ、由那曰く中田さんの実力は凄まじいらしいからな。前半の五分間で圧倒してくれることを祈ろう。


「てか、中田さんもさっきからこっち気にしてチラチラしてるぞ。何か言ってやれよ」


「ふふっ。伝えたいことは全部伝え終えてるよ。それよりもバスケは繊細な技術のいるスポーツだからね。有美のプレーが乱れないよう、静かに見守ることにしたんだ」


「あっ、そ」


 ホイッスルが鳴る。


 それと同時に先生から上空に投げられたボールをジャンプして奪取したのは、中田さんだった。


 中田さんは女子の中では身長が高い。当然男子に比べれば小さいが、あのジャンプ力も含めれば最高打点は中々のものだ。


「薫!」


「えっ!? ちょ、いきなり私かよ!! 由那ちゃん!!」


「任せてっ! てい!!」


 不安げなところはあるものの、しっかりとしたパスワークが形成されている。八人の味方同士で何度かパスを回して少しずつ前に進むと、やがてボールは再び中田さんへ。


 位置はスリーポイントのラインを跨ぐか跨がないかといったあたり。まだゴールは遠いうえ、おそらく情報が漏れていたのだろう。中田さんに対するマークは他の誰よりも固く、常に二人以上が立ちはだかる。


「っ……」


「流石に中田さんを警戒しないわけにはいかないよね。悪いけど、一点もあげないから!!」


 ダメだ。ただでさえ出場できる時間が少ないのにあんなことをされては。攻撃を詰まらせている暇は無い。少し手こずっている間に前半が終わってしまう。


 コートの端に置かれたタイマーの示す残り時間はあと三分半。一度もボールをとられてはいないが、逆に言えば前半の三割ほどが一本もシュートを打てずにーーーー


「有美ちゃん、こっち!」


「こっちも出せます!!」


「由那ちゃん……ひなちゃん……っ!」


「みんな、周りもマークして! 全員で攻めに来る!!」


「ありがと。ーーーー作戦通りッッ!!」


「へっ!?」


 それは、中田さんをマークしているディフェンス二人の視線が由那達フリーの選手へ視線が一瞬分散した瞬間。


 刹那、スリーポイントラインから一歩下がった中田さんの伸ばされた腕から、美しい放物線が放たれる。


「一点じゃなくて三点、貰うわよ」




 シュッ。ゴールリングに触れることもなく、まるで吸い込まれるかのように空を切ったボールは、ほんの数秒後……僅かな摩擦音と共に、ネットを揺らしていた。

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