381話 いざ、体育祭へ
381話 いざ、体育祭へ
「「選手宣誓! 僕たち、私たちは、日々の練習の成果を存分に発揮し、正々堂々と戦うことをここに宣言します!!」」
三年生代表の男女二人が全校生徒の前に立ち、声高々に宣誓を誓ったことで、体育祭が幕を開ける。
(一ヶ月、あっという間だったな……)
季節もすっかり移り変わり、十月に入った今、半袖の生徒も随分と減った。一部の暑がりな生徒は半袖半パンの体操着で校庭に並んでいるが、おおよそ全体の九割は上からジャージを羽織っている。
「いやー、いよいよって感じだね! 見て見てゆーし、ハチマキ! 似合ってる?」
「もちろん。カチューシャみたいで可愛いぞ」
「えへへえ。ゆーしもかっこいいよ!」
俺たちは赤組だから、支給された赤色のハチマキを頭に巻かなければならない。
そして、やはりさすがは由那だ。白の髪を掻き分けて若干上の方で巻かれたそれはカチューシャのように完全に装飾品としてマッチしており、とても可愛らしい。
「はいはい。お前らいつまでもイチャイチャしとらんと。午前はクラス対抗競技だろ? とっとと準備しろい」
「あ〜っ! 先生もハチマキ巻いてる! 可愛いっ!!」
「うるせえ。巻きたくて巻いてんじゃねえんだよ」
担任の先生もハチマキ着用なのか。湯原先生以外にもいろんな先生が赤と白のそれを頭に巻いている。
「せんぱ〜い! ねえ先輩は競技出ないんすか!? ほら、教師対抗リレー的なアレとか!!」
「げ……おま、なんでいるんだよ。大学行けよ」
「あっはあ。今日は土曜日っすよ?」
そしてあれは一体……誰なのだろうか。
保護者さんが集まる観客席から先生のことを「先輩」と呼ぶ謎のお姉さん。先生の学生時代の後輩さんなのだろうか。棒付きの飴玉を舐めながらすっごい楽しそうに手を振っている。先生にああいう知り合いがいるというのはちょっと意外だ。
「ゆーしゆーし、早く行こ! 最初は私たちのクラス対抗競技だよー!」
午前中のスケジュールとしては、まず一発目にクラス対抗競技である。試合はトーナメント形式で行われ、全学年の全クラスが一位から最下位まで順位づけされる。どうやらその順位によって所属している各団にポイントが入る仕組みらしい。
「私たちは三試合目だから、それまでは一緒に他のクラスの試合観よ? 有美ちゃんたちとも約束してあるから!」
「そうだな。俺たちの試合はだいぶ後の方だから他にやることもないし。どうせ由那の試合観に遅かれ早かれ体育館には行くしな」
体育祭というのは意外と空き時間が多い。全学年全クラスで予選が十二試合、そこからトーナメント形式で数が減っていっても合計二十試合ほど。コートが二つあるから二試合並行して行えるとはいっても、かなり後半に試合をすることになった俺と寛司はおそらく数十分、下手したら一時間ほどの空きができる。
「うちには有美ちゃんもいるからね。なかなかいいところまでいけるのではと自負しているのです。試合で私も頑張れるよう、それまでゆーしの隣でいっぱい充電しなきゃ!」
「おう、存分にしてくれ。俺も試合前には由那のパワー全部吸い取るからな」
「なら、私のパワーはゆーしので、ゆーしのパワーは私のだね! パワーシェアで活力二倍!!」
「永久機関が完成しちまったなあ」
さて、俺の彼女さんはどんな試合を繰り広げてくれるのか。俺が寛司としたのと同様、随分と中田さんに稽古をつけたもらったみたいだからな。
楽しみだ。




