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375話 種目決め

375話 種目決め



「えっと……ではこれから、体育祭の各種目に出場するメンバーを決めたいと思います……」


「「「「「おおおおーーっ!!!!」」」」」


「「「「「はあ…………」」」」」


 クラス中が歓喜と静寂で二分する中。俺にとっては憂鬱なホームルームが始まった。


 体育祭。それは運動部所属の陽キャを輝かせるために用意された祭りだ。文化祭と対をなす存在でありながら、全員が楽しめるような生ぬるいものではない。


 やっぱり憂鬱だ。どうしてみんな無理やり運動させられるこんなイベントであんなに嬉しそうな顔をすることができるのか。不思議でならなーーーー


「ここで活躍すればか、かかか彼女が、俺にもっっ!!」


「女子の運動着姿を合法的に……へへ、へへへへ……」


「おっぱい……お尻……おへそっ!!」


 ああダメだ煩悩まみれだわコイツら。なんにも不思議じゃなかった。モテたい欲と性欲に取り憑かれた魔物どものエレクトリカルパレードじゃねえか。夢の国もびっくりな汚物大行進だわ。


 え……もしかして高校生の体育祭ってこれが普通なのか? 思ってたよりもずっと汚いんですけど。うちのクラス連中の頭がおかしいだけだよな? そうだって言ってくれ誰か。


 脳内でいもしない誰かに助けを求めていると。やがて気怠そうに立ち上がった先生は蘭原さんの隣に立ち、言う。


「競技は大きく分けて二種類。まず一つ目は全員参加のクラス対抗競技な。男子はサッカーで女子はバスケだ。んで二つ目が個人競技。スウェーデンリレー、部活対抗リレー、百メートル走、男女混合リレー、障害物競走、二人三脚、借り物競走の中から最低でも一人二つな」


 最低でも二つ、か。


 一番楽そうなのは百メートル走だ。あまり周りと差が出なさそうって意味では二人三脚とか障害物競争、借り物競走も。


 とにかく選択肢としてはリレー以外。あんなのに出るのは運動神経抜群陽キャさんの仕事だからな。それこそモテたい欲に取り憑かれたうちのクラス連中はこぞって立候補することだろう。


「な〜な〜、有美は障害物競争がいいんじゃね〜?」


「は? なんでよ」


「ほら、障害物競争には網抜けってのがあるだろ? あれって網の下をうまく潜り抜けるもんだけどさ。胸があったらつっかえて中々上手くいかねえんだよ。けどその点有美なら簡単にーーーー」


「それ以上言ったらもぐから」


「ぎょえっ!?」


 なんて命知らずな。それが中田さんの地雷であることはよく分かっているだろうに。


「ゆなえも〜ん。有美が怖いよう。胸への嫉妬と執着を強く感じるよ〜う」


「よし分かった。由那ちゃんも薫もまとめてもいであげる。大体まだ高校一年生だってのにデカいのぶら下げてる方がおかしいのよッ!!」


「な、なんで私巻き込まれたの!? ちょ、薫ちゃんズルい! 私を盾にしないでよお!!」


 すすす、と在原さんが由那の影に身を潜めると、獲物を追い詰めるが如くハンターの目をした中田さんの魔の手が迫る。


 見事に巻き込まれ盾にされた由那は俺に目線を向け必死に助けを求めてくるが、俺にどうしろを言うのだろう。何というか話題が話題なだけに男は絶妙に口を挟みづらいし。




「なんか……うん。今日も平和だね」


「いやお前は止めろよ。あれお前の彼女だろ」

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