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閑話 大人の呑み会3

閑話 大人の呑み会3



「ぬひゃひゃひゃひゃ!! それで先輩、ロマンチックな告白されてフッちゃったんすか!?」


「あたぼうよ! だってソイツ私のクールな姿に惚れただの、煙草は絶対無理だの言ってたんだぞ!? 私に合うわけねぇだろバキャヤロォ!」


 あー、頭フワフワする。


 呑み始めてどれくらいの時間が経っただろうか。飲んだお酒の杯数は五を超え、テーブルの端にはやけに大きいつまみ用の一品皿が積み上がっている。串入れの中にも中々な本数が溜まってきた。


「んもぉ、ほんと先輩は清々しいほどのクズっすねぇ。でもそこが好き!!」


「クズ要素でならお前も負けてねえだろぉ! その歳でタバコに酒、んでもってパチンコまで打ってんだろ? 三大カス要素コンプリート済みとかどんな大学生だっての!」


「うるさいっすよぉ! ただ先輩みたいに依存してる対象が二つから三つに増えただけでしょうが! ほら、あれ……二度あることは三度あるぅ! って言うでしょ!?」


「ぜってぇ使い方違ぇ!!」


 話せば話すほど。酔えば酔うほど。荒野照という人間は根の部分で私に近い存在なのだということがひしひしと伝わってくる。


 側から見ればなんでも器用にこなすし人徳だってある人気者。いわゆる世渡り上手というやつだ。根の部分で、と前置きをしたのはそういう部分は私に似ていないから。


 しかし根の部分で依存癖がある。勉強しか取り柄がなくてなんとなくでここまで来てしまった私が日々の不安を紛らわすために酒とヤニに手を出したように、コイツもどこか不安感からこういったものに手を出し始めたのだ。まさかこの顔と性格で彼氏までいないとは思わなかったが。


「は〜ぁ。でも実際わかってるんすよ? 流石にこのままじゃダメなんだろうな〜って。大学一年生とかならまだしも、もう三年生の夏。就活が本格化し始める時期にダラダラ酒とタバコとパチンコって────あ、そうだ! 私先輩に聞きたい話あったんだった!!」


「んぉ?」


 ゴトンッ。パンパンの氷とレモンサワーの入ったジョッキを力強く机に叩きつけながら。真っ赤な顔で目を輝かせると、荒野はヤニ片手に肘をつく私の左手を引き寄せながら言う。


「先輩の就活話聞かせてくださいよ! 別に教師なろうと思ってるわけじゃないすけど、参考までに!!」


「ふむ……?」


 そう来るとは思ってなくて、思わず少しフリーズしてしまう。


 就活話……しゅーかつばなし? え、私の? 流石に聞く相手間違っちゃいないか? いやまあ、人生の先輩という点においては間違っちゃいないのかもしれないけども。逆に言えばそこ以外全部間違ってるぞ?


「わ、私のなんか聞いてもあんま参考にはなんねーと思うけど?」


「いいんすよ! そんなことわかってます! というか面白半分なんで!!」


「あ゛あ゛ん?」


 そ、そこまで言い切られたらそれはそれでなんかムカつく。


 私だってぇ? 一応高校教師っていうまあまあ頭良くないとなれない資格を手に入れて職についたわけだぁし? いいだろう、そんなに馬鹿にされちゃあ全国の高校教師の代表してギャフンと言わせてやらねぇとなぁ。


「ふん、お前は私をナメすぎたな。いいぜよかろう聞かせてやる! ありがた〜い先輩の武勇伝をな!!」


「ぶゆうでんでんででっでん! れっつごー!!」


「てめ、本当に聞く気あるんだろうな!?」


 コイツ、今話しても酔っ払い過ぎてて記憶に残らないんじゃないか? なんて、そんな一抹の不安を感じつつも。すでに私もどこかかなり酔っているからか勢いで会話しているところがあって。




 私の武勇伝(という名の聞かせる価値もない過去回想)が始まったのである。

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