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閑話 大人の呑み会1

閑話 大人の呑み会1



「お、先輩〜。こっちっすこっち〜」


「るっせぇ。そんな声張らなくてもちゃんと見えてるよ」


 寝起きでグワつく視界の中、その端で若さを振り撒きながらキラキラとした視線を送ってくる女が一人。


 あの日、アイツと再会してからもう一度連絡が来るまでにそう時間はかからなかった。というかなんなら私が二日酔いでダウンしてたから見れなかっただけで次の日には来てた。しかもご丁寧に一緒に行きたい呑み屋のマップ付きで。


「相変わらず元気無さそうっすねぇ。寝起きすか?」


「まあなぁ。昨日うちのクラスの奴ではないんだけど同じ学年の奴が不祥事起こしやがってよ。おかげで私らは駆り出されてもう大騒ぎ。おかげで疲れすぎてぶっ倒れるように寝てたわ」


 不祥事、といっても所詮は学生のすること。どうせ小さなものなのだろうと思って学校に向かってみれば、なんでも他のクラスのバカギャルどもが飲酒で補導されたらしい。


 私のクラスはなにも関係が無いが、まあ学校としては看過できる状況では無いわけで。私たちを呼んでの教師集会を行い、再発防止を徹底しようというわけだ。とばっちりすぎる。


「どっちかと言うと先輩の方が起こしそうっすけどね、不祥事。酔っ払ってて何かのデータ入力ミスったとか」


「……流石に学校では呑んでねぇよ?」


「わー、説得力無いー」


「んだと」


 私は腐っても教師であり、未来ある生徒たちに教える立場。それだというのに学校で飲酒なんて絶対にあってはならないだろう────というのが建前で、実際には飲む寸前までいったことはあるんだけども。なんというかそれは私が教師として生きていく上で″絶対に超えてはいけない最後の壁″な気がして。なんとか思い踏みとどまり、たまに学校を抜け出して近くのコンビニの灰皿がある所で煙草を吸うことにより平静を保っている。


 ま、結果的には学校で酒に手をつけたことは一度もないわけだし。偉いな私。


「んじゃまあ、とりあえずお店行きましょっか。私はできる後輩なんでちゃんと予約もしてるんすよ? 先輩が遅刻してきたんでもうその時間なっちゃってますけど」


「……悪かったよ」


「と、見せかけて実は三十分遅刻してくる予想で集合時間を三十分早くしていたのでした。あー、優秀すぎて怖いっ。こんな後輩に好かれるなんて先輩は幸せだなー。チラッチラッ」


 ウッッッゼぇ……。悪いのが全面的に私だからよりウゼぇ。なんだこのぶん殴りたくなる笑顔は。そういえばコイツは昔からこんなだったけども。


「じゃあ優秀すぎる後輩よ。ここから店まであと十分は歩くよな? それが面倒臭いっていう先輩の心情を察してタクシー呼んでくれてたりは────」


「何言ってんすか。呑み終わった後、駅に着くまでに十分歩かせて酔い覚ましさせられるようにっていう後輩の配慮すよ」


「…………」


 ああ、コイツガチだ。謎に優秀すぎて言葉が出てこねぇ。




 いいのか? そんなに私より優秀な頭で理詰めしたら……大泣きしちゃうぞ?

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