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368話 感想文はアニメから1

368話 感想文はアニメから1



 それから数分後。一瞬外に出ただけで溶けそうになりながら戻ってきた由那のぶら下げていた手さげからは、見るだけで気が遠くなるような量の宿題が顔を覗かせていた。


「ほいお疲れ。お茶飲むか?」


「ありがとぉ。外暑すぎだよ〜」


 さて、まずはどれからやらせたものかな。


 やはり一番時間がかかるのは読書感想文と漢字の書き取りだろう。はじめに終わらせておくならそのどちらかからだが、一発目に漢字の羅列をひたすら書かせるというのは流石に酷か。


 となると第一候補に上がってくるのは必然的に読書感想文になる。包含用紙二枚程度で一冊の本を読んだ感想を書くこれをトップバッターにするとしよう。


「読書感想文、かあ。読む本って指定とかあったっけ?」


「いや、たしか小説ならなんでもよかったはずだぞ。ダメなのは漫画とか雑誌くらいだな」


「ふぅん。ゆーしは何で書いたの?」


「え、俺か? 俺はだな……」


 由那に尋ねられ、本棚から一冊の本を取り出す。


 俺の部屋の本棚は基本的に漫画ばかりだ。昔から好きで集めているシリーズものが多く、種類は少ないものの一つ一つのシリーズの刊行数が多いためそれなりの量がある。


 そして漫画というのは、刊行数が増えていくとその人気と共に本編とは分岐したいわゆるスピンオフ作品というのが出るのが定石だ。そしてそれは漫画で描かれるものもあるが、このシリーズのスピンオフは小説という形での刊行が為されている。


「それ……いいの?」


「ダメじゃないだろ。これは漫画原作だけどちゃんと小説として書籍化されてるんだからな。まあ若干グレーゾーンかもしれんけど」


 これの何がいいって、既に読み終えているから新しく読み始める必要がないことだ。


 感想文なんてものはその本の内容を知っていればいくらでも書ける。だから俺はこの本を題材に置く事によってものの数十分で感想文を仕上げることに成功していたのである。


「そして由那さんや。実はこの部屋にはもう一つスピンオフ作品が書籍化されてるシリーズがあってだな」


「? ……あっ! あかし様!?」


「そのとーり。んでちゃんとその小説も本棚にあるんだけど、こっちにはもっと良い方法もある」


 あかし様の告白談。全二十巻ほど刊行された、アニメ化も映画化もしている大人気コンテンツだ。


 内容は恋愛もので、学園でのラブコメ模様が存分に描かれている。そんな本作のスピンオフはサブキャラの恋愛模様に焦点を置いた作品となっており、本編ではあまり語られなかったもう一つの恋愛を見ることができる。


 そしてそのスピンオフは小説化されるとともに、実は十七巻の特装版にてアニメ版ブルーレイが収録されているのだ。


「ようは内容さえ知れればいいんだ。なら、わざわざ時間をかけて一冊読み切る必要なんてない。今から三十分、一緒にアニメ見るぞ!」


「ほんと!? えへへへへ、彼氏さんもワルですなぁ。読書感想文をアニメ見るだけで仕上げちゃうなんて天才すぎるよ!!」


「ふっ。もっと褒めてもいいぞ。褒めたら褒めただけたっぷり甘やかしてやるからな」


 え? 本当にトップバッターがこれでいいのかって?


 いやまあ……うん。休憩は必要だと思うんだよな。それにこの三十分は読書感想文を書く上で必ず必要な時間だし? べぇつに由那とイチャイチャしながらアニメ見たって合法だろぉ。あー、読書感想文って大変だなぁ。


「彼氏さん! アニメを見るにあたって私は彼氏さんの膝の上の特等席を要求します! 後ろからぎゅ〜っ! ってされながら見たいです!!」


「もちろん予約可能ですぜ。なんならここは彼女さん専用席ですから、堂々と座って好きなだけハグされててくださいな」


「はぁ〜いっ! 由那、いっきまぁす!!」




 さて、宿題を終わらせるためだ。イチャイチャしながら真剣にアニメ鑑賞するとしよう。

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