358話 肉食彼女さん2
358話 肉食彼女さん2
すすっ、と白く細い指先が俺の胸元を伝う。優しい刺激にピクッ、と身体が無意識に反応したのを見て、由那はニヤりと笑って見せた。
「こ、ここは外だぞ? 何考えてんだ……」
「外だけど、周りに人は誰もいないよね? ここで私たちが濃厚なイチャラブを繰り広げても……誰にも見られることはないはず、だよ?」
はぁ、はぁ、と。俺に馬乗りになっている彼女さんの息遣いが荒くなっていく。ああ、ダメだ。暴走してる。これじゃあ正常な判断もできないだろう。
俺だって濃厚なイチャラブとやらはしてみたい。というか割とする気で来た。だがしかし、それがこんな屋外とは完全に想定外だ。いくら岩陰で人に見られれ可能性が低そうだからとはいえ……こんなの、落ち着いてイチャイチャできるはずがない。
「ごめん、ゆーし……もうガマン、無理かも」
「ゆ、由那? 何し────んぶっ!?」
「ここでイチャイチャ、シよ? 好き好きが溢れて、もう限界だから……」
せめて場所を移動しよう。ちゃんと安心して二人きりでいられる場所なら何をしてもいいから。そう、言おうとした瞬間。俺の口は無理やり塞がれ、柔らかい舌が口内へと侵入する。
ぬちゅ、くちゅっ、と粘着質な唾液の混ざり合う音。それが脳に響くと一瞬反射で突き放そうとした身体の動きが押さえつけられ、快楽で思考が止まる。
世界一幸せな思考停止と共に脳を襲うのは、継続的で官能的な感触と、目の前にいる彼女さんの貪るような気持ちに対して増えていく好き好きホルモンの増殖。数十秒の濃厚なキスを終えて舌同士が唾液の糸を引いた時にはすでに、俺の中でも″スイッチ″が入ってしまったのを感じてしまった。
「────ぷぁっ♡ えへへ、彼氏さんのこと襲っちゃった。お外でこんなに熱々キスしちゃって……でもどうしよ、全然足りないよ」
「お、お前な。襲っちゃった、じゃねえ。いきなりすぎだっての」
「ごめ〜んっ。だってもう限界だったんだもん。これでも結構ガマンしたんだよ? さっきだって周りの人達がゆーしに視線向けてた時、横から思いっきりキスしたらどうなるかなって。想像してずっとドキドキしっぱなしだったもん」
「お、おぉ……」
「ね、もう一回シよ? 恋人繋ぎでいっぱい、ぎゅ〜って指絡めるから。世界一かっこいい彼氏さんに好き好きしていい? ううん、するね? もう一秒だってガマンしたくないよ。大人がするエッチなキスいっぱいしながら、何回でも……お腹いっぱいのいっぱいになるまで私からの好き、注ぎ込んじゃうから♡」
俺からもキスをしたい。そう思いつつも、もう反撃の余地など無いことを悟る。
すすす、と這うように伸びてきて繋いできた両手は砂の上に押し付けるようにして位置を固定し、胸元同士がぶつかり合う。スクイーズみたいに柔らかな双丘が形を変えながら上半身をプレスし、欲望に満ちた甘い目線が唇をロックオンして。いとも簡単に二回目のキスは始まった。
(耳、赤いな……。恥ずかしいと思う反面、それだけ興奮もしてくれてるってことか)
恥ずかしがるとすぐに耳が赤くなる癖。これはずっと昔から変わらず由那が持ち合わせていたものだが、きっとこの状況で意味するこれはもう一つの意味を孕んでいる。
────俺も感じている、″背徳感″という興奮のエキスとなる感情の表れだ。




