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356話 餡蜜屋の密会

356話 餡蜜屋の密会



「お待たせ。お会計、済ませてきたよ」


 それからしばらく。結局私はくまさんが彫られているお箸とアルパカさんのコップ、その他動物さん系のお皿やお椀をいくつかに動物ストラップを二つだけ買い、お会計をした。


 ハンドメイドということで高額なものを想像してしまっていたけれど、実際には諸々全部合わせても一万円でお釣りが返ってきた。一つあたり千円付近でこんなにいいものを買えたのだから本当に来てよかったな。


「持つよ。結構重いでしょ?」


「ん。お願い」


 スッとナチュラルに左手を出してくる寛司の好意に甘えて食器の入った袋を渡し、即座に右手も奪って私の左手と繋ぐ。


 一瞬、二人で袋の取っ手を半分ずつ持つのもいいなと思ったけれど。もし落としたら怖いしやめておいた。


「ここからどうする? みんなのいるところに戻ってもいいし、あれだったらどこか寄っていってもいいけど」


「う〜ん……由那ちゃん達まだ戻ってない気がするし、どこか寄ってこ。薫とひなちゃんも今頃大会の真っ最中でしょ」


 一応先生はいるだろうけど。あの様子だと今頃酔い潰れてそうだしなぁ。あれだけ容姿端麗なのにどうしてああも残念な美人になれるのか。黙っていれば自然と男の人は寄ってきそうなのに。……って、なんか同じようなのもう一人いたな。一番身近なところに昔から。


 由那ちゃんと神沢君はどうしているのだろう。確か二人きりで行きたい場所がある、みたいなこと言ってたけど。カフェかどこかでイチャイチャしてるのかな。こうやって別行動を取ることになると思ってなかったから私は何も調べられてないや。まあ、そこらへんは寛司がまだ良い場所知ってそうだけど。


「提案してきたってことは、アテがあるんでしょ?」


「一応候補はあるかな。ここからすぐのところの餡蜜屋さん。空調は完備されてるし、一つ一つ席が区切られてて個室みたいになってるから休憩もしやすいと思う」


「へぇ〜、流石。じゃあそこにしよ」


 休憩、という言葉に変に反応してしまいそうになるのを堪えそう答えると、寛司の案内で歩き始める。


 二人きりで行動しているとはいえ、そろそろもっとちゃんと二人きりになりたいと思っていた。そのお店なら周りから見られることも無さそうだし、結構のんびりできそう。


 それに、いろんなことも……。


「あまり長居しないよう、気をつけなきゃね」


「どういうこと?」


「……言わせないでよ」


 三十分……ううん、一時間以内には。終わらせて戻らなきゃ。いくらなんでもみんなだってずっと私たちが戻らなかったら思うところがあるだろうし。変に察せられてもそれはそれで、だ。


(せめて由那ちゃんと神沢君よりは、早く戻らなきゃ……)


 そんなことを考えながら。餡蜜屋さんでたっぷりと補充させてもらえるのが楽しみで、ついつい寛司の手を握る力が強くなっていく。


「ごめん、ゆーし……もうガマン、無理かも」


「ゆ、由那? 何し────んぶっ!?」


「ここでイチャイチャ、シよ? 好き好きが溢れて、もう限界だから……」




 まさかその時、全く別の場所で二人がとんでもないことをしているなんて。気づく余地もなく。

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