353話 イチャイチャしやがって1
353話 イチャイチャしやがって1
由那ちゃんたちと別れてしばらく。私と寛司は例の雑貨屋さんへと向かっていた。
荷物を置いている場所から徒歩五分程度。さっき昼ごはんを食べた海の家の更に奥へと進んでいくと、それは姿を現す。
「可愛い……。すっごくおしゃれだし」
「気に入ってもらえたなら良かったよ。調べた甲斐があったね」
店の名は「あけぼの堂」。ここでは店主さんである女の人がハンドメイドで用意した雑貨を置いているらしい。その特色ゆえ、毎日置いている物も、同じ商品であっても色や形が全然違うんだそうな。世界に同じ物は二つと無い、というフレーズはどこか心を惹かれてしまう。
付き合った当初から知っていたことだが、相変わらず寛司はこういうお店を見つけるのが上手い。私が連れてこられて「こういう所に行きたかった!」と思える所をチョイスしてくるからやはり流石だ。
「じゃ、早速入ろっか。時間はあるし色々見て回ろう」
「……うん」
握っていた手をもう一度、指を絡めながら握り直して。半透明なのれんをくぐる。
店内にはたくさんの人がいた。やっぱり人気のお店なのだろうか。ラフな格好で来ている地元民の人から、私たちのように水着の上から軽く上着を羽織って来る人まで。商品を手に取っては目を輝かせている女の子でいっぱいだ。
「凄いね、これ。本当に全部ハンドメイドなの? ガラス細工にフェルトのぬいぐるみ……木製の飾り物まであるけど」
「そうらしいよ。どれか一つってだけでも売り物にするレベルの技術を習得するためには時間がかかるはずなのにね」
この精巧さと豊富な種類こそ人気の秘訣なのだろうか。
店の奥でお会計を担当している中年の店主さん感心しつつ、店内をゆっくりと歩いた。
まず一番最初に手に取ったのは、ガラス製の動物ストラップ。聞いていた通り本当に一つ一つ形が違って、例えば今私が手に持っているうさぎさんでも他のと見比べると色は違うし、形だってよく見れば少しだけ変わっている。こういう多種多様な物の中から気に入った一つを吟味するのも楽しみの一つなのだろう。
「相変わらず可愛いものに目がないね、有美は」
「う、うるさいな。仕方ないでしょ? 好きなものは好きなんだもん。まあ最近こういう小物買いすぎてちょっとずつ量がおかしくなってきてるけど……」
「たまに俺におすそ分けがあるくらいだもんね。全部可愛いから気に入ってるけど」
「……」
そう。こういったものは気づけばどんどん数が増えていっているもので、特にストラップ系となると付けるところにも限界がある。
その結果何個かは寛司にプレゼントして付けてもらったり飾ってもらったりしているのだ。コイツの部屋ならいつも行くからそこで見て楽しむこともできるし、付けてきてくれたらもちろん私の視界に入る。それで自分でつけられなかった罪悪感を軽減させてたりさせてなかったり。ま、まあ寛司も喜んでくれてるし? 無駄にはなってないよね。
「きょ、今日は買わないから。他に買わなきゃいけない物が多いし……」
「買いすぎなければ別にいいんじゃない?」
「甘やかすなっ! 寛司がそんなこと言うからつい買いすぎちゃうんだってば」
「う〜ん。でも有美にはガマンさせたくないしなぁ……」
「ぐ、ぐぬっ……」
この甘やかし上手め。




